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トライアローグ(Trialogue- 鼎談)、横浜美術館にて。
一対一のダイアログは対談、三者が集えばトライアローグ、鼎談。
横浜美術館、愛知県美術館、富山県美術館の3館がコレクションを持ち寄っての合同企画展、思えば、日本と海外など2館共同企画は比較的多いけれど、3館合同の企画は案外珍しいのではないか。うまく説明できないが、一対一の二項対立とは違う、三つ巴によるバランスが明らかにいい効果を生み出している。
例えば、導入のピカソ。「青い肩かけの女」(1902年、愛知)、「肘掛椅子の女」(1923年、富山)、肘掛椅子で眠る女(1927年、横浜)、と、その生涯の間に作風を大きく、何度も変えた画家の全く異なる作品が一つの壁に並ぶ様子はまるで3人でゲームテーブルを囲んで、とびきりのカードを一斉に切ったかのよう。新年の幕開けにふさわしい、華やかで楽しい演出に思わずニヤリとする。
(画像は、「座る女」(1960年、富山))
2枚目のカードは、フェルナン・レジェ。そしてクレーにハンス・アルプ。あるいは、同じ画家ではないけれどテーマを決めては、それぞれの館がどうだ!とばかりに次々とカードを切っているようでワクワクする。
そしてだんだんと、それぞれの館が個性を主張し始める。ドイツ表現主義のコレクションでは日本で他に類を見ないという愛知、意外にもアメリカンポップアートを多く所有する富山に横浜のシュルレアリスムと、新しい発見も続々で、機会があったらぜひ、それぞれの館にも足を運んでみたいと思う。
40年ほど前、つまり日本が「バブル経済」に湧いていた頃に建てられた、地方の公立美術館たち。その後の日本経済の行方を思えば決して楽な道のりではなかったと察するが、ここまで丁寧にいいコレクションをしてきてくれたと思うと嬉しい。海外からの作品借用もままならない今、これまでの一つ一つの仕事とアイディアがこうしてすばらしい企画展に繋がった。
年末に見た「琳派と印象派」と「ルドン、ロートレック」のあとの、この「トライアローグ」は、年代からしても、また、2から3へと一歩前進する意味においても、ピタリとハマった。
いい展覧会で、新年の幕を開けた。
トライアローグ
2020年11月14日〜2021年02月28日
横浜美術館
https://yokohama.art.museum/special/2020/trialogue/
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Fumie M. 01.07.2021