ローマの色
さて、突然ですがクイズです。ここにいくつか、ローマ市内及び近郊から発掘されたモザイクがあります。これらのモザイクはいったいいつ頃作られたものでしょうか?
①正方形の入子模様
②正方形の格子の中にシンプルな花など
③蔓模様の中に人や顔
④蔓模様の中に鳥
⑤リアルなお魚
⑥孔雀の家族
⑦男性の肖像
⑧ライオンとキューピッドたち
⑨貝殻の張り付いた破片
答え :
①紀元後2世紀
②紀元前1世紀中頃
③紀元後2世紀
④, ⑤紀元前1世紀
⑥紀元後2世紀
⑦紀元後1世紀末〜紀元後2世紀初め
⑧紀元前1世紀
⑨紀元後1世紀中盤
ローマのチェントラーレ・モンテマルティーニ博物館で開催中の「ローマ人たちの色 カピトリーニ博物館コレクションのモザイク」展は、モザイク・マニアにとって、ローマのモザイクを堪能する至福の場だった。
粒の揃った小石を一種のセメントに並べて埋め、模様や絵を描く手法は、古くは紀元前何千年も前から見られたが、大理石などの色石を四角くカットしたものを使用して床を飾る「モザイク」は、古代ギリシャが起源とされ、それが古代ローマでも大きく普及した。
初めはシンプルな模様だったのが、数百年のうちにみるみる進化を遂げ、その構図といい色使いといい、近代の油彩画かと見紛うばかりの表現力を持つようになる。こうした総天然色・超写実的なモザイクは、ローマ共和国時代終盤、すなわち紀元前1世紀ごろに集中している。
紀元後に入り、カエサルの甥、アウグストゥスが皇帝となり帝国時代に入ると、白と黒のみのシンプルな床が流行するようになる。これは好みの変化と同時に、経済的な理由もある、とキュレーターの一人、ナディア・アニョーリは説明する。
だが、100年も経つうちに、モノクロながらもあっと驚く表現力を身につけるようになる。野生の動物やアスリート、神話の神々は逞しく、唐草模様は優美で華やかに。
そしてさらに100年も経たぬうちに、今一度、ローマ人たちは「色」を取り戻す。
これらは床モザイクだから、芸術作品というよりは当時の彼らにとってはインテリアの一部なわけだが、流行の変遷が決して一直線ではなく、行きつ戻りつ大きなサイクルを繰り返しているのがおもしろい。
⑧のライオンとキューピッドたちの描かれたモザイクは「エンブレマ」と言われるもので、その場で一から床モザイクとして制作したのではなく、この部分だけ額絵のように予め工房で制作し、完成したものをそのまま床に固定している。エンブレマは、特に細かいテッセラ、つまり石片やガラス片を使っていて、2-3mmかそれ以下のものもある。主に紀元前に流行したもので、その周囲は比較的シンプルな幾何学模様などで部屋が埋められていることが多い。
そして、ギリシャでは主に床だけに使われていたモザイクを、ローマでは縦に、つまり壁にも適用していくことで独自の発展を遂げる。紀元前1世紀後半ごろから、初めは邸宅の庭のグロッタ(洞窟)や噴水などの水回りの装飾として、⑨のように貝殻などもパーツの一部として直接貼り付けていた。
さらに、色ガラスを使うことで、ローマ人たちは、透明感のある洗練された表現力を手に入れる。一番上の画像、灯台と船のある風景は、紀元後2世紀末〜3世紀ごろの壁モザイクで、19世紀になってローマ市内ナツィオナーレ通り沿いで発見された。
地上への展開とガラスの使用がやがて、モザイクはキリスト教という新しい宗教のための建築とと結びつき、次々と大輪の花を咲かせることになる。
ローマ人たちの色 カピトリーニ博物館コレクションのモザイク」展
チェントラーレ・モンテマルティーニ博物館、ローマ
2021年9月15日まで
Colori dei Romani
I mosaici dalle Collezioni Capitoline
Roma, Musei Capitolini - Centrale Montemartini
fino al 15 settembre 2021
http://www.centralemontemartini.org/it/mostra-evento/colori-dei-romani-i-mosaici-dalle-collezioni-capitoline
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05.25.2021