イタリアの熱い夜、その後
7月11日、ロンドンでサッカー欧州選手権優勝と、ウィンブルドン・テニスで初の四大大会決勝進出、とイタリア・スポーツ界にとって夢のような一夜を過ごし、明け方まで騒がしい外の様子が気になり、何より自分自身も目が冴えて寝不足のまま月曜の朝を迎えた。7時すぎにテレビを点けると、既にアッズーリ(イタリア代表チーム)はローマの空港に到着していた。・・・タフ・・・最も、本人たちがフライトを決めたわけではないだろうけれど。ほとんど寝てないであろう彼らはニュース画面の中でヨタつくこともなく、笑顔にあふれパワーに満ち満ちていた。
夜、帰宅してテレビを点けると、もちろんその日一日の彼らの行動が繰り返し報道されていた。大統領謁見に首相謁見、そしてローマ市内での凱旋パレード。おもしろかったのは、テニスのベッレッティーニ選手も、その全てに一緒に加わっていたこと。彼は決勝で敗戦したのだから、ダブル優勝ではないのだけど、初決勝進出という歴史的快挙、しかもあの鉄壁ジョコビッチになかなかいい試合をしたというので、サッカーの欧州優勝と文句なしに同じ扱いになっていたのだった。
一方、サッカーのイタリア優勝が決まった直後から、嫌なニュースもちらほら流れてきていた。PK戦で惜しくも負けて準優勝に止まったイングランド・チームの選手らが、銀メダルを喜んで受け取らず、拒否するような反応を見せたこと。もっと酷いのは、PKを決められなかった選手がたまたま黒人であったことから、英国内で激しい人種差別による非難が湧き上がったこと。それはもう、ほんとうにただただ呆れて言葉も出ない・・・。試合後、サポーターの一部が暴徒化し、イタリア人サポーターが暴力を振るわれたこと。そしてイタリア側では、SNSなどを中心に、荒れるイングランドの様子と、準優勝の盾を手に満面笑顔のベッレッティーニ選手の写真を並べ、敗者の態度として比較して見せたのだった。
だが、いやいや、イタリアだって、もしサッカーで負けてたらきっと、今回のイングランドと大差なかっただろう、と思う。エラソウなことは言えない。むしろ、見習うべきは国籍を問わず、テニス・プレイヤーのような精神と態度ということだろう。
「祭りは終わった」。コロナ復興の問題山積みのイタリアで、その翌日にはそんな見出しが新聞を飾った。そしてびっくりするくらいさっぱりと、日常生活に戻った。
一週間後の18日、ベッレッティーニ選手は、怪我のため東京オリンピックを辞退したと発表された。筋肉の痛みの後遺症で回復に2週間かかる見込み、とのこと。
同じ日、サッカー代表監督のマンチーニは、休暇中の地元イェージで、代表ユニフォームでこそないものの青いTシャツにカジュアルな短パン姿で、ハムサラミ屋さんに入るために一般の人に混じって並んでいる様子がスクープされていた。
そして・・・また今、ウィルスがヒタヒタと近寄ってきた。ロンドンのスタジアムでも、イタリア中の広場やバールでお祭り騒ぎとなったあの熱い夜を境に、残念ながらまた、感染者数も、感染者率も増加に転じてしまった。イタリアは今日20日の時点で、ワクチン完了者が対象者の45%、1回のみ終了者が61%を超えているというから、爆発的感染拡大といった事態にはならないことを祈るばかりだ。それでも、自分と人を守るために、油断はまだまだ禁物と肝に銘じて。
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07.20.2021
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