![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/80733291/rectangle_large_type_2_c1fd87a649ddb42a2ace3a8740c27173.jpg?width=1200)
「ライオンを殺せ」 ホルヘ・イバルグエンゴイティア
寺尾隆吉 訳 フィクションのエル・ドラード 水声社
アレパ食べたい…
昨日一気に読み終え。
アレパ(島の名前、ベネズエラやコロンビア辺りで食べられているトウモロコシパンの名前…っていうより、近場でアルバ島を思い出すけど、確かオランダ領)
という架空のカリブの島国で起こる独裁者とその暗殺者の物語。元々「襲撃」というメキシコ革命に取材した戯曲の映画化シナリオ作成中に、それが下のシナリオ離れて独立した小説になった。だから(なのか)現在形で語られる文体始め、それからタイトルも戯曲っぽい味わいがする。ただ、この作品が映画化された時、作者は「微妙だ…」と言ったという。
「族長の秋」他、中南米伝統?の独裁者テーマだけど、それらがどちらかと言えば独裁者側を主に取り扱ったのに対し、この作品は対立する穏健党の暗殺者側を主に描く。といっても、穏健党のブルジョワ達が、独裁大統領に丸め込まれたり、暗殺に三回失敗した若きリーダーがなんとか外国に亡命したり(このリーダー、クシラットに残るアンヘラが送った本がディケンズの「二都物語」。これには痛切な皮肉が込められている、と解説にある…「二都物語」内容チェック…)、クシラットから拳銃を譲り受けたペレイラが、大統領の暗殺に成功したあと、こっそり「残った副大統領の方が御し易いと富裕層が気づくまで十二時間かかった」とか書いてある、とか。作者言う通り「権威者と富裕層はいつかは結びつく」…
著者ホルヘ・イバルグエンゴイティアは55歳の時、マドリードの空港で飛行機着陸失敗で事故死してしまった。一方、イバルグエンゴイティア夫人で画家のジョイ・ラヴィルはこの本出版した年(2018、昨年)亡くなった。メキシコでの彼の本の表紙の絵を全て描いていた。一方この年はイバルグエンゴイティア生誕90年でもある。ちなみにフェンテスも同い年。
(2019 05/05)