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「種の起源(下)」 チャールズ・ダーウィン

渡辺政隆 訳  光文社古典新訳文庫  光文社

雑種形成

今日から下巻。まずは雑種の不妊性について。別種間では交配できないか、子ができても不妊性である…でも、これも移行的なものである…というのがダーウィンの立場、なのかな?まだわからないけど。
(2013 07/29)

「種の起源」は雑種形成の続き。ダーウィンのこれまでの議論の流れで、種とは決して固定的なものではなく、連続的で流動的なものであるという話の極みがこの雑種形成。これもまたもや複雑怪奇で、歌でお馴染みのアマリリスなどは自分の種より近縁種の方が種子ができやすい、とか、一年草と多年草でも交配する例もある、とか、え?と思う事例もたくさん。同じ個体が作った種子でも差があるのでケースバイケースな面が大きいらしいが、逆に身体の構造とかとは全く関係なく生殖器官の相似が左右するとかいう説もあるらしい。最後の説はなかなか興味深いけど。
(2013 08/03)

古生物学


「種の起源」の第8~9章、交配のところを読み終えて、古生物学の章に入った。
ダーウィンの説に従えば中間的な移行中の種の化石が見つかるはずなのにそうはなっていない、という批判に応えたもの。化石として残る為には、その海域が沈降してなければならず(隆起すると砕かれてしまう)、そして腐敗するより早く土砂が堆積する必要があり、それが同時に起こることはまずない。そしてせっかく化石化しても隆起してしまえば砕かれる…ということだから。そうした危うい土台の上に立つ古生物学は結論も慎重に出さなければならない…と、いったところかな。
(2013 08/05)

一点から拡散する生物


「種の起源」は地味に少しずつ進んでいるが、今日は10章の地理的分布。生物は同時にあらゆる場所で発生したのか、ある場所で発生したのが拡散したのか…ダーウィンは後者をとる。でも、今の複雑ないろんな生物に関してはそうだと思うけど、原初期の液滴とかプランクトンあたりについてはどうかなあ、保留しておきたい気も。
(2013 08/13)

「種の起源」で、植物の種が海洋を渡れるか調べる為に、ダーウィン他が種を海水に浸けて発芽実験したり、鳥の糞や死骸から種を取り出して発芽実験したり…なんか進化論の祖として理論家の印象が強かったのだが、やはり地道な実験家であったんだなあ、というのが今回一番感じているところ。
(2013 08/15)

北極南極からの大移動?


北半球と南半球のそれぞれ高地、それから極地に何故類縁種が多いのかという疑問。それは氷河期に両方の極地から赤道に向かっていった生物大移動の名残なのだ、高地のそれは取り残されてしまった極地からの種の子孫である、時に大移動は赤道を越えていくこともあったがだいたいは北からの生物が南からの生物より生存率が高かった…というのが、ダーウィンの見解。本には見てきたのかと思うくらいイキイキと書かれていますが(笑)あくまでも理論上、それから想像の域。
(2013 08/19)

言語の系統樹?


今は分類学に関わるいろいろな話。
ダーウィン自身は少なくともこの本において、自身の進化論・自然淘汰の考えを人間社会に応用(あるいは誤用)するのを(意識的に)避けているのですが、ちょっと例外なのがこの箇所。想像が広がったのか、少しだけ種の系統樹を言語の系統樹に置き換えたら?ということを言っています。もちろん重なり合うところとそうでないところがあってダーウィンもこの話は全面展開してないが…でも、古い(消滅した)言語の類推には使えるか?
あと、進化論の社会学的応用を全面展開したスペンサー(なので自分の中では評価微妙)…は、この自然科学側の進化論の進展にも功があったと解説に有り、ちょっと見る目が変わりました。自然科学と社会科学の境界ってこの頃から少しずつデリケートになっていくから。その辺もほじくり返すと面白いかも。
(2013 08/22)

相同形質の形態学


「種の起源」もいよいよ大詰め…と言いたいところだけど、まだまだ結構残っている。今はまとめの前の第13章。
昨日読んだところにあったなかなか興味深い話。ヒトの手とかイルカの胸鰭とかコウモリの翼とかはほとんど同じ骨格でできており、これは哺乳類共通祖先からそれぞれ発展してきたから、だそう。一方で一個体の中にも違う器官なのに相同な骨格を持つものがあるという(頭骨と稚骨など)。
古代あるいは発生初期段階では生物のパーツのバリエーションは驚くほど少なかったかもしれない。そしてここで登場するのが「多数反復する器官ほどよく変異する」というダーウィンの理論。脊椎動物では初期は多数の稚骨が反復していた(他の生物も似たような構造を持っていた)。それがまあいろいろ変異して今に至る。こちらも初期パーツは驚くほど少なかったのか。
(2013 08/24)

何もわかっていないことへの疑問

 しかし、何もわかっていないような問題、あるいはどれほどわかっていないかさえ知られていないような問題に対してほど、重大な異論が提起されるものなのだ。
(p367)


これは(ちょっと誤読めくかもしれないけれど)自分の行動、思考の根本に入れておくべき命題なのかもしれない。全くどこから挑んでよいのか見当のつかない空気をつかむような事象、疑問。そこから始めないといけない、と思う。150年以上前の先達のアドバイス(と思うことにする)。
解説にはダーウィン以降の進化学の流れを簡潔にまとめてあって貴重。
偶然が重なり合っての歴史か・・・
(2013 08/25)

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