「楽園の犬」 アベル・ポッセ
鬼塚哲郎 訳 ラテンアメリカ文学選集 現代企画室
ポッセ「楽園の犬」は主人公がコロンブス。解説先読みしてみたら、コロンブスを中世の終わりの人とみるか近代の始まりの人とみるかがいろいろある、と。(長野県)追分宿古本屋コロニーで買ったトドロフの「他者の記号学」(さきのポッセの解説にあったので買ってきたのだ)やポッセ「楽園の犬」は、コロンブスを中世とみる。実際にコロンブス時代と同じ船で航海をし書いた伝記作品(名前不明…)やカルペンティェール「ハープと影」は近代とみる、と解説にありました。面白そう。
ただ、「ハープと影」持ってないんだよなあ…手に入るのであろうか。
ちなみばなしその1。ポッセ(アルゼンチン)はあのヘルツォークの映画でおなじみアギーレを主人公とした作品もあって、「楽園の犬」ともう一作品と三部作をなしているそう。
ちなみばなしその2。古本屋コロニーの「コロニー」は追分ゆかりの詩人の一人、立原道造の「追分芸術家1000人コロニー計画」からとった、とホームページにあった。
(2008 10/14)
中世末期に多国籍企業が…
昨日から、ポッセの「楽園の犬」を読んでいます。前も述べた通り、コロンブスの「新大陸発見」をベースに様々な要素をてんこもりにした小説。当時の有力商人は多国籍企業と呼ばれているし、インカ帝国は気球でイスパーニャ上空まで来たことになってるし、ヒトラーはイザベル女王の熱烈なファン(これは本当?)…
歴史をいろいろぶちこんで複合化しようとする作品といえば、そのヒトラーが主人公の「黒い時計の旅」などが自分には思い出されるのだが、こっちはそれよりもっと野放図(笑)。楽しくなりそう。
一方、コロンブス少年がアルファベットの活字を盗んで読み書きを勉強していく姿には、印象深いものがある。
著者であるポッセはアルゼンチン作家で、外交官の仕事をしつつ作品を書いているという。そういう人ラテンアメリカには結構多い。
(2008 11/07)
今、読んでいる「楽園の犬」にコロン(コロンブスのこと)の説として、「否定力」(重力のことらしい…)に抵抗するために蟻の足の裏には粘着力がある、ので丸みを帯びた果実の表面を彼は歩いていける。人間は時代と共に退化していきこれら動物の能力も失いつつあるが、もっとも色濃くその能力が残存しているのが、臭いの残る足の裏である…
という記述がある。だから地球が丸くても大丈夫…ってなことらしい。
ということは、コロンブスから500年。退化のスピードもアップして、動物能力をますますなくしてきている人類。この当時、足の裏の臭いが気になり出したとするならば、続いての時代、即ち近代はその足の裏の臭いを遠ざけ、消していく…ってのは「狂気」を取り扱ったフーコーや、「衛生学」の台頭のテーマに繋がっていく。そして、その臭いを背負っていった(いかされた)のがユダヤ人とかロマの人々だったとすれば…
今日も二本の足で歩こうっと…
(2008 11/12)
「楽園の犬」もまもなく読み終わり。今度はニーチェが登場、やっぱり「神は死んだ」とのたまわっていた。一方、われらが?コロンブスはハンモックですっかり楽園気分。様々な人々が海を渡っていった全体がラテンアメリカの歴史そのものであるならば、その中でもコロンブスはラテンアメリカの象徴なのであろう。
(2008 11/15)
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