「巨匠とマルガリータ(上)」 ミハイル・ブルガーコフ
水野忠夫 訳 岩波文庫 岩波書店
五月のモスクワとベルリオーズ
モスクワの5月で暑い?物語の最初から異様な雰囲気。
ベルリオーズという名前のモスクワ20世紀の作家・編集長。ブルガーコフは当然作曲家ベルリオーズを意識していて…という話は(たぶん)追い追い…心臓っていうアイテムもブルガーコフの重要品目。ここで会う幻覚の悪魔みたいなのと次に(最後に)会う時、彼は…
…と、話はこのベルリオーズと若い詩人イワンの前に変な外国人教授が現れたところから始まる。ベルリオーズはイワンに「イエスは存在していなかった」と話しているのだが、この外国人教授は「いやいや、イエスは存在していました、私が証明してみせます」と話し始めるのが、もう一つのこの小説の流れ。紀元前後のエルサレム。イエスろローマ総督ポンティウス・ピラトゥスとの流れ。
イエスの存在証明といい、これといい、よくスターリン政権下のこの時に書いたなあ、と思う。
この外国人教授の話が終わり、危険だと察したベルリオーズが電話ボックスに駆け込もうとしていた時、誤って滑ってしまい、市電に轢かれて首が飛んだ。この時に会ったのが先の悪魔風の男。
ここまで第3章。
ここまでのところのそのほか。
閣下とあなた
イエスと面会したピラトゥス。最初は「善人」と呼ばれたピラトゥスが「閣下」と言え、と言われる。鞭打ちまでされて、面会の続きなのだが、途中から「あなた」と呼びかけが変わる。その時は背景にいる家臣や木々、エルサレムの街とかが、なんらかの新しい背景を前に退いていく。
ローマ総督ピラトゥスと最高法院議長ユダヤ大祭司ヨゼフ・カヤファ(派遣政権と地元政権・宗教責任者)
ここは小説というか、それ以前の歴史的興味。ローマ総督はローマ皇帝直属の名目的政権。実務はユダヤ側が取り仕切る。そこで対立関係にもなっていく。
(2020 01/01)
イワンとブルガーコフ
物語は結構進んで、モスクワパートのみ、ヴォランド(「ファウスト」から取った名前らしい)の悪企みはエスカレートし…ベルリオーズのお供をしてたイワンは最終的には精神病院に収容されてしまう。そこで会ったストラヴィンスキー(また作曲家の名前だ)医師と面会しているうちに…
このイワンという人物は、のちに「巨匠」と対比され「普通の芸術家」の代表みたいになってしまう人物。ただブルガーコフとしても、「自分は巨匠だ」とずっと思っていたわけでもないだろうし、幾分かは自分とこのイワンを重ねて見ているところもあるのだろう。
さて、その「巨匠」はいつ出てくるのか。もう第1部(上巻)も半分を過ぎた。水野氏の解説によれば、この小説に巨匠という人物を加えたのは結構後になってから、というから、そういう事情なのだろう。
(2020 01/04)
巨匠の登場
というわけで?巨匠が出てきた。名前はもう無くなってしまった…という。
p297とp301にある旧版と新版の違いは、旧版の叙述を省略して一部見せなくさせた。この本文では旧版を使用。
「抽斗」は「ひきだし」と読む。イワンその他悪魔に魅入られる人達は、面白くない方に含まれているのかな。ブルガーコフの分類だと。
原稿を燃やす巨匠は、実に殺気だっているのだが、その割に燃える原稿の様子がまた実にリアル。たぶん、ブルガーコフ自身の実体験を含んでいるのだろう。
(2020 01/05)
「巨匠とマルガリータ」上巻読み終わり。とりあえず巨匠は出てきたけど、マルガリータは出てきてない…
(2020 01/06)
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