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「シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン」 岡田明子 小林登志子

中公新書  中央公論新社

働く神


今日から中公新書のシュメル神話についての本を読んでいる。シュメルはメソポタミアの下流辺り。泥と葦の文明。前に本屋で見た20世紀のこの辺りの生活史(みすず書房)とあんまり変わりがないかも。

でも彼らが最古の文明を築き上げ、最古の神話を残した。その北隣はアッカドで、同じく都市文明を築き、周囲の狩猟民族を野蛮とみなしていたシュメルもアッカドだけは別だったらしい。シュメル語は膠着語(日本語みたいに「てにをは」がつく)でこの辺りでは親類みつからない孤立語。それをアッカド(アッカド語は英語みたいな屈折語(動詞自体が変化する))が漢文の読み下し文みたいにして訳し、それが各地に広まって各地の神話の元ネタとなっている(聖書の洪水の話とか)。

さて、第一の神話は人間創造の話。なんでも生活する為にいろいろ働いていた神々が、それを嫌がって身代わりを作ったのだそうだ。シュメルには王の身代わりみたいな人も(後期には)いて身代わり文明?みたいな感じなのだが、それはともかくなんだか人間と機械の関係みたいで妙に生々しい。
(2012 12/25)

神話の祖型


たいそうなタイトルつけたわりにたいしたことない内容だが(笑)、昨夜から今朝にかけて「シュメル神話」の洪水の話と楽園追放の話のところを読んだ。もちろんこれは旧約聖書の元になっている(変形はだいぶされていますが)もの。西洋人の考え方の祖型となっているもの。

一方、エデン(エディン)という言葉はシュメル語で原っぱという意味、パラダイスという言葉は(これはシュメル語ではなくて)ペルシャの前の人々の言葉で煉瓦で囲った庭園のようなものを指す言葉だという。
また、祖型といえば、ユダヤ人のバビロン捕囚の影響からか、「エデンの東」には高度な(そして快楽に流れた??)都市文明があるという認知地図が、ユダヤ人そしてキリスト教徒の中でできあがってくる。それが憧れとしてのオリエンタリズム、冒険・新規開拓(そして植民地としての)オクシデンリズム(って言葉ある?)の元になっているのかもしれない。
(2012 12/26)

イナンナ神の多彩な顔


というわけで、シュメル神話の本も半ば過ぎ…

 真っ直ぐな糸をこんがらかせ、こんがらかった糸を真っ直ぐにするのだ。滅亡させずともよいものを滅亡させ、創造せずともよいものを創造させ…
(p94)


ここではシュメル神話に最もよく出てくるイナンナ神の割り振られた?仕事が述べられている。なんかヒンドゥーのヴィシュヌとシヴァを合体させたような感じだが、神でありながらいろんなことをする(戦争とか冥界下りとか)トリックスター的な要素も持ってます。余計なことをするおかげで?変化が生まれる。
他には牧畜の神のこれまた多面性(姉でもある葡萄の木の神と交互に冥界に行くとか)とか、この時代にバハレーンやオマーンやインダス川河口のことが出てきたり、シュメルの律法?である「メ」のこと…など。
(2012 12/27)

ビルガメッシュ


今日のシュメル神話はいよいよビルガメッシュの話。ビルガメッシュはシュメル語で、アッカド語ではギルガメッシュ。今標準版とされているのは前1200年くらいにまとめられたもの。いろんなバリエーションのある書板からどれが入ってどれが入っていないのか見ていくのも楽しそう。
ビルガメッシュは昨夜ザクロス山脈越えた遠征話を読んだ王の子みたい。だけど神と人間が入り交じっているみたい。この辺の人間観はまだ正直いってわからない。けど、重要なのはビルガメッシュが死すべき存在であること。それがビルガメッシュの行動の全ての根底にある。
(2012 12/28)

王の為の神話


今日のシュメル神話はルガル神話と言われるもの。ルガルとは王のことだから、王の為の神話といったところらしい。ビルガメッシュが自分の名を上げる為に行動したのならば、ここでのルガルは灌漑・治水とか君主の行動をしている。まあたぶん、後の王様の教科書的な役割もはたしたものであろう。

あと、石の戦士の裁判のところなどはじめ、シュメル神話では物の名前を列挙していく手法がよくみられる、と書いてあったけど、こういう「もの尽くし」方式は、日本でもフランスのラブレーでも昔はよく用いられた手法なのではないか、と思った。暗唱して覚えましょう、みたいな。

繁栄し続ける王朝はない…


「シュメル神話の世界」をついさっき読み終えた。

 悠久の昔、国土が誕生して以来、人々は繁栄し続けたが、永遠に続く一王朝などというものを見たことがあるだろうか。
(p302)


「シュメルとウルの滅亡哀歌」より。
都市が衰退して王が連行される(前2004年)時、都市神が父神になんとかできないかと尋ねられた際に父神が返した言葉。シュメル文明は世界最古の文明なのに、その当時からもうこのようなことを言われていたのか…ちなみに、この際侵入してきたのが西北のアモリ人(セム系)で、あのバビロニア帝国、ハンムラビ法典(シュメル語の法律用語やシュメル法そのままの部分も多い)のハンムラビ王もアモリ人。ちなみにシュメル人はセム系ではなくまだ系統が不明なのだという。言語も違うし。

そのアモリ人とシュメル人との平和時の祭りの神話も、彼らの暮らしが4000年という時を越えて生き生きと伝わってきて楽しい。
シュメル人自体はセム系諸民族に吸収されていくけど、彼らの「文明」は多くの各地の文明の祖型となっていく…
(2012 12/29)

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