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「レ・コスミコミケ」 イタロ・カルヴィーノ

米川良夫 訳  ハヤカワepi文庫  早川書房

賭けはお好き?


今日は、カルヴィーノの「レ・コスミコミケ」から2編を。この「レ・コスミコミケ」という短編集はなんらかの最新(ではないかも?)科学理論に思いをはせて、その場に居合わせたというQFWFQというなんていうか生き物なのかなんなのかが語る…という奇想天外な短編集。
タイトルに挙げたのは科学理論はよくわからないのだが(汗)、語り手ともう一人がビックバンから現在に至るまで、出来事が起こるか起こらないか賭け続ける…というもの。何せ、意味を軽々と飛びこえていくカルヴィーノのことだから、直接的に何かを言っているわけではないのだが、何かしらペンミスティックな空気が漂う短編。「むずかしい愛」の「ある詩人の冒険」にラストが似ているかも。
ちなみに、もう1つは魚が陸へ上がっていくことについての短編。こっちもはぐらされながら何か淋しいものを感じさせる。
(2010 08/02)

恐龍族


久しぶりに「レ・コスミコミケ」から「恐龍族」を。今、これ入力して始めて気づいたのだけど、普通は「恐龍」じゃなくて「恐竜」。訳者米川氏はどのような意図でそうしたのか。それはこの作品の核心部分にまでつながるかも。

で、作品は恐龍(こっちにしておく)最後の生き残りである語り手Qfwfq氏が「新生物」人類?の村で共同生活をする話。
幾通りの読み方ができて様々な読みが様々に入っては出て行く風通しのよい「軽い」作品なのだが、それもこれも全て語り手Qfwfq氏という設定のおかげ。この何にでも入り込める左右対称の名前を持つ語り手の恩恵を受けて、読者は「もし恐龍が生き残っていてもこんなことは思わないのではないか」などという野暮あるいは当然の思いを棚に上げて、軽さの中で漂うことができる。そして最後に駅から列車に乗る語り手を、語りの巧みさに唖然としながらも軽やかに見送るのだった。
次はどの世界?
(2013 12/15)

昨夜はまたカルヴィーノも少し服用。また浮遊する、または落下するモティーフの楽しみ。
(「空間の形」)
(2013 12/17)

「レ・コスミコミケ」読了報告


そして今日、「渦を巻く」読んでなんか途中中断してたこの本を読み終えた。「渦を巻く」の最後のところはなんだか「パロマー」に通じているような。

 そしてわしはあの無数の目の奥底に住んでいたのだ、いやつまり、もう一人のわしがそこに住んでいた、わしの無数の視像の一つが
(p276)


「見る」ことを発明したらしい今回は貝になった語り手Qfwfq氏・・・というシチュエーションを取り去っても、カルヴィーノ自身の言葉としても通用しそうな文。
作者は後にこの「レ・コスミコミケ」と続編たる「柔らかい月」、それからその後の数編を合わせ、また選び直し、新たな短編集を編んだという。

カルヴィーノは大好きなんだけど、どこがよいとかなかなか自分で言うことができないのが心苦しい。
(2013 12/23)

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