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「1冊でわかる古代哲学」 ジュリア・アナス

瀬口昌久 訳  1冊でわかるシリーズ  岩波書店

読みかけの棚から
読みかけポイント:第2章のみ

解説は内山勝利氏。

第2章、プラトン『国家』を巡る解釈史
古代ギリシアではどちらかというと『ティオマイオス』の方が重要視され、ルネサンス期に少し隆盛を見せたが、その後の2世紀は無関心なままだった。少しずつ『国家』はじめプラトンの評価がなされたのは功利主義の時代から。この本の著者アナス氏は「これは驚くべきこと」と言っている。功利主義者とプラトンの倫理学や形而上学は正反対なものであるから。ジョージ・グロートは『プラトン』という解説書を書き、同意はしないけど好意的に描いているという。
ただし、プラトンの全著作を読みやすい翻訳で訳し(1871)、『国家』を現在まで続く政治哲学、理想国家としてプラトン哲学の中心においたのはベンジャミン・ジョウエットであった。

 実は一九世紀の半ばには、政治思想の側が『国家』に関連のありそうな諸問題に関心を寄せるようになっていたのである。民主制と普通選挙は無規律な大衆による支配として長く軽蔑されてきたが、この時代には現実の政治的な選択となっており、英米の政治家や政治思想家が自分たちの国家を考える際に、古代ローマ共和国に代わって古代ギリシアの民主制都市国家がモデルとされるようになったのである。古代ギリシア史学でも、古代の民主制がはじめて肯定的な立場から叙述されはじめた。
(p45)

 たしかにこの著作の内容は、さまざまな読者がそれぞれの関心のもとに論じることが可能なものであるように思われる。だが、それはまさにこの書が哲学の書として現れているということであり、真理に達する方法として合理的な議論や討論を活用することをわれわれに奨励しているのである。
(p53)


(2019 03/03)

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