「神話・寓意・徴候」 カルロ・ギンズブルグ
竹山博英 訳 せりか書房
読みかけの棚から
読みかけポイント:解説読んで小まとめしたのみ。
序文
1.悪魔崇拝と民衆の信仰心ー一五一九年のモーデナの裁判についての覚え書き
2.ヴァールブルクからゴンブリッチへー方法論の問題に関する覚え書き
3.高きものと低きものー十六世紀、十七世紀の禁じられた知について
4.ティツィアーノ、オウィディウス、そして十六世紀のエロティック絵画の規範
5.徴候ー推論的範例の根源
6.ゲルマン神話とナチズムージョルジュ・デュメジルのかつての本について
7.フロイト、狼男、狼憑き
原注
訳者あとがき
形態論(レヴィ=ストロースの「構造人類学」など)と歴史研究(因果関係・時間系列を前提とする)の克服を研究時系列にまとまたのが本書の論文集ということらしい。原著には「形態学と歴史」という副題がついていた(訳書では省略)。
鷲田清一「哲学の使い方」第3章「哲学の臨床」から
セレンディピティ・・・ギンズブルグは「神話・寓意・徴候」で提唱したこういう知のあり方が、19世紀の末くらいから各方面に並行的に現れたという。絵画鑑定、フロイトの症候分析、ホームズの探偵術などなど、そして哲学もまた思想や文学におけるアフォリズム的な表現ーニーチェ、アドルノらのエセーの系譜を通してこの流れに入って行く。
(2018 09/30)
「神話・寓意・徴候」訳者あとがきから簡易版まとめ
最初の「覚え書き」はギンズブルグの処女論文。
二つ目のは、ギンズブルグの歴史学方法論への系譜。この「ヴァールブルク学派」にはこの二人の間にザクルスやパノフスキーがいる。後者は聞いたことあるなあ。
三つ目のはその応用編みたい。ここではゴンブリッチよりパノフスキーに近くなっている、と訳者竹山氏。
四つ目ので竹山氏が指摘しているのは、ティツィアーノが当時の俗語訳を参照して制作している、ということ。古典そのものではなく。
五つ目のはこの本借りたきっかけとなった鷲田氏が引用していたもの。
最後の二つは、「形態学と歴史」という副題に一番沿うもの。形態学の系譜が「母型」というところから考察するのに対し、ギンズブルグらは「歴史」(微視的)から考察する。この二つの方法は相補的なものであって対立するものではないとは素人的には思うのだけど…
そういうギンズブルグが両者の融合を試みたのが「サバト論」らしい。
さて、ここでの二つの論文で具体的に批判されているのは、へフラー、デュメジル、ユング、エリアーデら。デュメジルは先に挙げたレヴィ=ストロースの構造人類史神話学の祖形の一つ。デュメジルはこのギンズブルグに対し反論の論文を書いている。
となると、今度はデュメジルが気になるではないか(ちくま学芸文庫のコレクションシリーズがある…)
(2018 10/21)
「デュメジル・コレクション2」より
(「ゲルマン人の神話と神々」「セルウィウスとフォルトゥナ」)
松村一男・高橋秀雄・伊藤忠夫訳
丸山静・前田耕作編 ちくま学芸文庫
この本まで手を出す余裕はなかった。インド・ヨーロッパ語族に共通する神話要素を探すために、そこから二つ、そうでないものから一つ、社会を選び出し比較する、という方法かな。
これ借りたきっかけは、ギンズブルグの批判からで、その元となった論文がこの本の「ゲルマン人の神話と神々」ということなのだが…
この本の訳者松村一男氏は、ギンズブルグの批判が「客観的ではない」としている。どっちの論文も全然読んでないので何も言えないのけど、論点の一つがカイヨワの「社会学研究会」との関連、らしい。訳者松村氏は、ナチズム形成期にこの論文が作られた事実をもって関連や協力関係を云々するのは慎重であるべきとする。
ただし、それ以降の1970年代のフランス新右翼の一派がデュメジルのこの理論を自身の主張に取り入れたことはあったらしい。それはもちろんデュメジルの管轄外。
で、デュメジルももう少し知っておいた方が…
(2018 11/03)