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HOW TO TOTONOU 〜サウナでととのえない女子に贈りたい3つのととのい仮説〜

私はだいたい月2〜3回のペースでサウナに行く。

半日だらだら過ごしたり、風呂代わりに1時間1本勝負でサクッと入ったりと過ごし方はさまざまだが、最近ハマったのは夜友達と飲みに行く直前にサウナに行くこと。

しっかり温まって血液がマッハで駆け巡る体に乾杯のビールを流し込むことで、1杯目からかなり楽しい感じに酔える。少ない酒量で酔うから翌日残らない。なおかつ、風呂にも入っているので飲み会の後はそのままベッドにダイブでOK。いいことづくめだ。

そんないいことづくめをもたらしてくれるサウナ。愛しのサウナ。

そう、私は昔から結構サウナが好きである。
はっきり思い出せないが、小さい頃祖母の家を訪れる度に、近所の大きめなスーパー銭湯に行っていた。最寄り駅から30分以上歩いた丘の上にある祖母の家のそばには、徒歩で行ける範囲に飲食店がなく、スーパー銭湯に併設されているお寿司屋さんを目当てによく連れて行ってもらったのだ。(そのお寿司屋さんを調べてみたら今はもう閉業してしまっているらしい。)

そのスーパー銭湯で親の目を盗んでサウナ室に潜入したのが、初めてのサウナ体験だったと思う。20年前、サウナなんか全然流行っていなかったこともあってか、にわかっぽい若者はおらず、長年熱気と向き合ってきたような玄人おばあちゃん集団が、暖色のぼやっとした湯気の中で佇んでいた記憶がある。

私はたいてい高温に耐えかねて2,3分で退出してしまっていたが、あの夢の中にいるような視界と室内の木の香りに惹かれて、それから先も温泉や銭湯にサウナが併設されていれば、とりあえず数分だけ入ってみるという見物客ムーブをかまし続けて成長し、大人になった。



大人になっても、私はととのうということを知らずに、地道な見物客であり続けた。プロのサウナ見物客である。
この国にもサウナブームがやってきて、ととのうことが市民権を得てからも、私はととのえていなかった。

ととのえなかった理由はシンプルで、水風呂に入れなかったのである。体質的にとか宗教的にとかそういう問題があったわけではなく、ただただ冷たすぎて耐え難くて入れなかった。ととのうことに憧れはあり、そのためには水風呂が必要っぽいということも知ってはいたが、無理だった。

「ととのう」というのは、サウナ→水風呂→休憩を3回ほどくりかえすことで訪れる快感、トランス状態のことを指します。

サウナ用語「ととのう」ってどんな状態?最強に快感な「ととのう」への道 | マ ガ ジ ン ど
https://dododododo.jp/328/

改めてととのうの意味を調べてみても、水風呂に入ったうえで至ることのできる状態をととのうと言うらしい。なので、水風呂に入らないでととのった!と言ってもそれは嘘なのである。たぶん。水風呂に入らずんばととのうを得ずである。

しかし、ある時からそんな私も晴れてプロ見物客を卒業し、ちゃんと水風呂に入り、ととのえるようになったのである。かなり最近のことだ。

当時まだ恋人だった夫と、お互い温浴施設が好きだったので何度か近所のサウナ付き銭湯に行く機会があった。夫は、既にととのうというのがどんなことか知っていたし、たいがいととのえているようだった。
男女分かれて入浴するので、当然どのように夫がととのうのかを目視で確認できていたわけではなかったが、夫いわくやっぱり水風呂に入らないと、ととのうことはできないだろうということだった。
当時の私はなんとか水風呂をスキップしてととのえないかということを夢見ていたが、相変わらずサウナの内装を見物することに加えて、外気浴にしては短すぎる時間屋外の椅子から露天風呂を見物していただけ(寒くてすぐ内風呂に戻っていた)なので、ととのいは夢のままだった。



転機が訪れたのは、ある特別なサウナに行ったときだった。

そう、かの有名な日ハムの本拠地であるエスコンフィールド北海道内にあるサウナである。ちなみにこの「かの有名な」は「日ハム」でも「エスコンフィールド北海道」でもなく「サウナ」にかかっている。というのも、このサウナは"今行くべき全国のサウナ施設"として大変権威のあるサウナシュラン2023に選出されているのだ。

SAUNACHELIN(サウナシュラン)とは:
“今行くべき全国のサウナ施設”として毎年 11月11日「ととのえの日」に発表・表彰。「SAUNACHELIN」は2018年に誕生し、で今年で7年目を迎える。
既存の枠に捉われず新しい 試みにより、従来のイメージより新たなサウナの価値を導き出し、サウナ愛を通じてより多くのサウナーをととのえた革新的なサウナ施設を、‘日本各地のサウナ’を巡る様々な業界の「プロサウナー」が審査委員 となり、11施設をノミネート。全国12,000施設以上ともいわれるサウナ施設の中から、水風呂・外気浴スペース・ホスピタリティ・男女の有無・料金設定・清潔性・エンタテイメント性・革新性などの観点で評価。

SAUNACHELIN(サウナシュラン)公式HPより

サウナシュラン選出がいかにすごいことなのかということは非サウナーの方々には伝わりにくいと思うので、具体的にこのエスコンフィールドのサウナがすごいと思ってもらえるポイントを紹介したい。

ここがすごいよエスコンサウナ①
本当にがっつり球場内

“フィールドを一望できる球場内天然温泉とサウナ”という謳い文句はまったく盛っておらず、本当に球場内(試合も)が一望できる。

球場内の最上部にあるため、本当に全部見える
わかりにくいが、サウナ室の中からも球場と試合のモニターが見える

ここがすごいよエスコンサウナ②
試合日は完全予約制

試合日限定だが、試合時間と試合前の入場枠を予約しないとそもそも入場することができない。そのため、入ってしまえばかなりゆとりを持って楽しむことができる。

私が予約しようとしたときにはもう試合時間の枠は埋まってしまっていたので試合前の時間の枠を取ったのだが、むしろサウナに入りながらアップしている選手を見ることができ、レアな体験ができ満足した。

ここがすごいよエスコンサウナ③
着替えずに浴場内でお酒が飲める

記載した通りで、なんと浴場と隣り合ったスペースにバーが併設されており、サウナに入って水風呂に入って、バーでお酒を買ってととのいながら飲むことができる。(そもそもサウナ自体が男女混浴のため、水着着用。)

水着で入れるバー。クラブにも行ったことがない私史上最もパリピな場所だ。


と、色々と魅力に思ってもらえそうなポイントをまとめてみたが、その日の私が一番感動したのは今挙げたようなポイントではなく、

「水風呂がちょっとぬるい」ことだった。

これは私にとってとてつもなく重大なことだった。
なぜなら、ちょっと水風呂がぬるかったおかげで、
私は初めてちゃんと水風呂に浸かって、外気浴まで楽しむことができたからだ。

エスコンサウナの名誉ために、本当にぬるかったのかという点を補足しておく。
サウナの水風呂は14〜17度くらいの温度が一般的で、エスコンサウナは15度と表記されている。
つまり、水風呂としてはごく一般的な温度のはずなのだが、私が入ったその日は表記よりも温度が高かったような気がする。いや、高かった。ぬるかった。なぜなら私が入れたから。
なんなら、夫も少しぬるいと言っていた気がする。いや、言っていた。まちがいなく。(私の記憶の改竄に日々巻き込まれる夫である。)

もしかしたら、水風呂と温泉が隣接(二色火鍋のような構造)しているため、誰かが温泉の中でスイングした弾みで、水風呂にお湯が入ってしまったのかもしれない。そうでしょう。

手前が水風呂で、奥が温泉。

なにはともあれ、私はこのエスコンフィールドのサウナで、初めて水風呂にしっかり浸かることができたのだ。1分以上は肩まで浸かれていたし、水風呂に入っているうちに水風呂がまったく冷たくなくなるのを実感したし、なによりそのあとの外気浴は最高にリラックスできた。

ただ、これがととのうという感覚なのか?というと、
温泉にゆっくり浸かって、服を着た後にお休み処的なスペースでゴロゴロする時とあまり大差ないような気がした。

なにはともあれ、プロサウナ見学者を極めすぎてサウナ内のおばあちゃん評論家になりそうだったところから、
相変わらずととのいはわからないながらも水風呂には入れる初心者サウナーにランクアップできたのだ。



エスコンフィールドでのサウナ体験ののち、私はさらに素晴らしいサウナに出会うことになる。

こちらもサウナーの中では知らない人がいないレベルのメジャーサウナ、スパメッツァおおたかである。

スパメッツァの魅力はもう既にサウナーの先輩方が語り尽くしてくれているだろうと思って探してみたら、とてもわかりやすくまとめていただいている良記事があったので貼っておきます。


結論、ついにこのスパメッツァにて、私は初ととのうを体験した。
サウナ見学者という長い下積み時代を経て苦節20年、ついにととのうことができたのである。

私にとってのととのう状態とは、まず喉の奥を冷たい水が逆流する感覚(気持ちいい)があったのちに、体がゆっくり浮いて、おへそを軸にくるくる回転するような感覚である。

ととのうという感覚は人それぞれだというのが定説だったので、「それじゃいざととのったとしても、自分がととのってるかどうかわかんなくね?」と思っていたのだが、実際ははっきりわかった。なぜなら、それは他のどんな体験でも得たことのない感覚だったからだ。

私の中のととのい判定員は、その瞬間が訪れた時、まったく迷いなくととのいフラッグをまっすぐに掲げた。なるほど、これはまったく素晴らしい体験だと感動した。

初ととのいを経験した私は、かなり興奮していた。その感動を食事処で合流した夫に伝え、喜びを分かち合った。にわかもいいところだが、そのままの勢いで帰りがけに7500円のサウナハットと4000円のサウナTシャツを購入した。



スパメッツァ再訪の機会は、間を空けずに到来した。
私はドヤ顔で7500円のサウナハットを被って、まずは数セットこなしてみせた。前回はビビってしまって体験できなかった、ドラゴンロウリュ(※複数台のストーブに同時にロウリュする定期イベント。とんでもない熱気のため半分以上の人がロウリュ終了前に退散する。)にも入ってみた。水風呂ももう慣れたもの。ちょっと長めに入ってみたり、水深深めの水風呂にもチャレンジした。そしてゆったり外気浴。

でも、この日は、なにかがおかしかった。

そう、ぜんぜんととのえないのである。

私の本当の苦節はここからはじまった。20年なんてプロローグに過ぎなかった。



ここから、何度かスパメッツァおおたかだけでなくいくつかのサウナを試しながら、仮説検証がはじまった。
サウナごとにことなる温度や湿度も考慮に入れながら、様々な条件を変数として検証してみたところ、以下3つの仮説が概ね立証できそうだとわかった。

ととのえない仮説①
サウナ前に十分温まっていないと、ととのえない

ととのうために必要なのが「サウナでしっかり発汗するまで温まること」というのは割と有名な話で、知恵袋で「ととのえないんですけど…」という質問者へはたいていちゃんと温まってくださいね的な回答がBAになっている。

ところが、見学者卒業したての当時の私は短時間でサウナを出ることがクセづいてしまっており、なかなかしっかり発汗するまでサウナに滞在することができなかった。温まりにくいのはおそらく体質的なもので、いわばあたたまりにくく冷えにくい魔法瓶体質といえる。冬は指先がやたらあたたかいので末端あったか症を自称してドヤっている。

そんな温まりにくい(もしくは冷えやすい)人は、サウナに入る前にそもそもサウナ以外の手段で体を温めておくのが有効だなと考えている。スパメッツァには高温温泉という常時43〜44度くらいのお風呂があり、ここでしっかり体を温めると面白いようにととのえた。高温な上に、温泉である。ここで温まらないという方が無理な話。もしサウナに高温温泉がなくても、その浴場内で一番温度の高いお風呂にしっかり浸かることをおすすめしたい。


ととのえない仮説②
汗をかけないと、ととのえない

仮説①の内容と近いのだが、ととのうためには温まったうえで発汗することも必要になる。
私はとにかく代謝が悪く、夏場に炎天下にいても汗をあまりかかないので、これは大層便利な体質だと思っていたが、サウナでは汗をかくことができず、おなかたぷんたぷんになるまで水を飲んだ状態で10分弱サウナ室に入って、ようやく汗ばんでくるレベル。

基本的にはしっかり水分補給することが大切、という結論になるが、ととのい経験を早く得たい場合はロウリュがあったりで湿度の高いサウナを選ぶといいかもしれない。(サウナー御用達サウナ検索サービス「サウナイキタイ」の検索機能で「ロウリュあり」を選択するとロウリュのあるサウナの情報にアクセスできる)


ととのえない仮説③
水風呂に入りすぎてしまうと、ととのえない

ととのうには基本的に水風呂に入るというステップが重要だというのは何回も説明してきたが、水風呂に入れるようになるとついつい長い時間入りすぎてしまう、というのが陥りがちな罠である。
目安としては温度によるが1分以内で切り上げるのがいいのではないかと思う。冷たい→ぬるい→気持ち良いを通り越して、→やっぱり冷えてきたかもまで入っていては入りすぎ。

これまでの仮説と同じように体質に拠る部分も大きいと思うが、一般的に女性は水風呂で冷えてしまいがちなはずだ。



現時点で仮説としているのは、検証対象が私ひとりなため、厳密には立証されていないというどうでもいい理由からだ。いや、本当にどうでもよすぎる気がするな。


でも、ととのえてない人はぜひ試してみてほしいです。

おわり。


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