私を変えたソクラティスメソッドとの意外な出会い
教員時代、私は「問題解決学習」に没頭していました。その中心にあったのは、子どもたちが自ら考え、学び、成長する姿を目の当たりにする喜びでした。授業で出したテーマについて夢中で議論し、発言する子どもたちのキラキラした瞳は、今でも鮮明に思い出せます。
この学習方法を通じて、子どもたちは自分を取り巻く環境や人々について深く洞察する力を育みました。同時に、自分自身の本質にも気づき、視野を広げていきました。しかし、このような成果を生むには、下準備が欠かせませんでした。クラスの人間関係を構築し、一人ひとりの生徒を深く理解し、学習に前向きに取り組む姿勢を育むこと。それに加え、アウトプットを日常化させる仕組み作りが必要でした。
もちろん、私の未熟さゆえに、すべての生徒にとって完璧な体験を提供できたとは言い切れません。それでも、教室の中で確実に変化が起きていることを実感していました。小さな成功が積み重なり、子どもたちは着実に成長していったのです。教員としての年月を経て、私はある日、思いがけない発見をしました。それは、英会話スクールでカナダ人の先生と「私の過去と未来」というテーマで話していた時のことです。教員時代に取り組んでいた「問題解決学習」について話し、さらにこれからの夢として、同世代の女性たちを支援する仕事がしたいと語りました。その時、先生がふと口にしたのです。
「それって、ソクラテスメソッドではありませんか?」
その一言は、私の中に驚きとともに新たな視点をもたらしました。帰宅後、ソクラテスメソッドについて調べてみると、確かに私が教員時代に取り組んでいた「問題解決学習」との共通点が多くあることに気づいたのです。ソクラテスメソッドは、対話を通じて問いを深め、自ら答えを見つけ出す学びの方法です。それは、日本の教育システムや子どもたちの特性に合わせて形を変えた形態として、私の授業の中に息づいていたのではないかと思いました。
さらに、この発見は私の未来ともつながっていきました。ソクラテスメソッドは、私がこれから取り組みたいと考えていた、人生に迷いや壁を感じている同世代の女性を支える活動にも応用できるのではないか、と気づいたのです。過去と未来が一本の線で結びついたような感覚でした。今、振り返って思うのは、「問いを立てる力」が人を育てるということです。そして、対話の中で新たな視点を得る経験は、どの世代にも必要とされるものでしょう。私とソクラテスメソッドとの出逢いは、単なる過去の出来事ではなく、未来への羅針盤となっています。この発見を通じて、これからも人と人をつなぎ、成長を支える活動を続けていきたいと思います。