アルザス地方料理 その3
ベッコフの作り方
それでは前回の続きで、ベッコフの作り方から。まず下処理(毛をバーナーで焼く)した豚足を、香味野菜と共に柔らかくなるまで煮て熱いうちに骨を取り除き小さく切りそろえます。仔羊の肩肉を一口大に切ります。牛バラ肉は余分な脂を取り除き、これも一口大に切ります。これをアルザスワインのリースリング、杜松の実、コリアンダー、ロリエと共に一晩マリネします。ここまでが前日の下準備。そして翌日。ポロネギと人参を薄切りに、ポテトは皮をむいて3ミリぐらいの厚さに切りそろえます。そして塩コショウした肉類と野菜を交互に重ねていきます。野菜を敷き詰めた時には塩を軽く振ります。目張りして長時間煮るので、煮あがった時の塩加減が難しくここは慎重に。最後(一番上)はポテトになるようにしてきれいに円を描くように並べます。そしてマリネ液を一度沸かして灰汁を取り除き、ここに加えて蓋をします。最後に、水と小麦粉を練ったパートを作り蓋に目張りをして蒸気を逃がさないようにしてオーブンへ。大体4~5時間ぐらい火入れして完成です。
出来上がりは最初の写真(フランス大使館での国境なき医師団のチャリティーパーティー時)のようになります。見た目は ”アルザス版肉じゃが” という感じで、むしろスフレンハイムの器のほうが目を引くぐらい地味ですが(笑)。。。これだけ手がかかっているので、素朴ながら深い味わいがあります。勿論アルザスワインにはぴったりの味わいで、地方料理にその地方のワインを合わせるという、まさに地方料理の醍醐味を味わうことが出来ます。
アルザスの食材
地方料理を知る時には、当然、その地方の産物を知らなければなりません。アルザスの主な産物は野菜は主にキャベツ、ポテト、ビーツなど。豚肉の加工品であるシャルキュトリづくりも盛んです。ヴォ―ジュ山脈で獲れる豊富なジビエ類(雉、鴨、ペルドロー、山鳩などの野鳥類、猪、鹿、兎など)、マンステールに代表されるチーズ、そしてライン川で獲れる川魚(川カマス、川スズキ、鯉、ウナギなど)。そして果樹園も多くチェリー、洋梨、木苺、そしてこの地方独特のミラベルやクエッチといったプラムの仲間のフルーツ作りも盛んで、これらのフルーツからできたジャムやシュナップスと呼ばれるフルーツの香り豊かな蒸留酒も有名です。
川魚というけれど・・・
アルザスは内陸部で当然海から遠く、地方料理で登場する海の幸といえば塩漬けニシンの燻製ぐらいしか見当たりません。古くからライン川を遡ってやってきた食材ですが、この話は長くなるのでまた別の機会に。なので、主に川魚ということになりますが、日本で川魚というと鮎や、山女、鱒、鯉や鮒というイメージで、イトウや鮭を除き小型なものが多いかと思います。ですがそこはさすが大陸の大河、川カマスや川スズキは鮭サイズですし、ウナギの太さといったらちょっと驚きます。
写真は川かます、仏名はブロシェといいます。結構小骨が多いですが、すり身にすると、身にすごくいい粘り気があり重宝されます。有名な料理としては、ブロシェのクネルのいうリヨン地方の料理(これはローヌ川で獲れるもの)がありますがこの魚はライン川でもたくさん獲れます。ストラスブールにはライン川から引き込んだ運河が貼り巡らされていますが、当時働いていた店のスタッフが、昼の休憩時間にこれをルアーで釣ってきて店に持ち込んだことがあります。勿論生きたままで。肉食魚で獰猛な歯がついているので結構危険です。みんなでキャーキャー子供みたいにはしゃいで、確か賄いで食べたと思うんですが何故かそこはよく覚えてません。兎に角、その大きさに驚いたことだけはよく覚えています。
こちらは川スズキを使った料理。結構立派なサイズでしょ!!これ実はアルザスで行われたコンクールの作品でたっぷりアルザスの地方性が込められた作品です。次回は、このコンクールの紹介をはじめ、他の地方料理やデザートを見ていきます。