美しく的確な点前ができるよう、日々精進していこう
先月、8月最後の茶道お稽古日のこと。
私が濃茶点前をし、お客様にはお二人、入られていた。
お客様の内、お一人は私が現在の稽古場に入って約2年後に入られた方。もう一人は、その方の中学生の息子であるTさん。Tさんは、何度かの単発での稽古参加を経て(通常はそのような通い方は受け付けていないと思われるが、ご家族ということで)、春頃から、月に2回、本格的に稽古に通い始めたのだった。
濃茶をお客様に出し、道具を仕舞いつけて、拝見の求めに応じて、茶入れを清めるために袱紗(ふくさ)さばきをしようとしたとき。
おもむろに、先生がおっしゃる。
「袱紗さばきの仕方がね、3年前くらいからなんですけど、soufuさんのやり方が、変わったところがあるんですよね」
「!?」
袱紗さばきのやり方を、意識的に変えようと思って変えた部分は、特になかった。3年前くらいから気付かれていたのならば、なぜ先生は今、この場で、指摘されたのだろう??
「soufuさんのそのやり方は、格好よいのです。ですから私がそのやり方を習得して、宗匠(先生の先生)の前で実際にやってみようと以前から思っているのですけど、なかなかできなくて…」
無意識のうちに(または、きっかけを忘れているのか)、我流になっていた部分が、あったらしい。
先生が3年も前から口に出すことをせずに、宗匠に確認する機会を待っていた、という告白(?)と、そこまでのご配慮にも驚いたし、
それをなぜ今、突然口にしようと思われたのだろう?
諸々、「?」が残ったままで、気持ちの整理はすぐにはつかなかったけれど、とりあえず「本来のやり方」をその場で確認し、点前を終えた。
次の方の薄茶稽古が終わり、茶室に先生と私の二人きりになった瞬間。
先生が近くにいらっしゃった。いつになく小さな声でお話をされる。マスクをつけているので、よく聞こえなかった。
これまで約10年、先生に教わってきて、先生が「内緒話」のように話されたことはないので、どうしたのだろう?と思いつつ、耳を傾ける。
「・・・先ほどの袱紗さばきなのですけどね。Tさん(新たに入られた中学生のお弟子さん)がね、前回のお稽古のときに、soufuさんのやり方で袱紗さばきをしたのです。点前がきれいだと思う人をよく見て真似するように、と言ってありますから」
と小さな声で、おっしゃる。
「!!?」
それで、先程のタイミングで、あえてTさんの目の前で、「そのやり方はーーー」とご指摘をされたということだったのか。
私に指摘することなく、Tさんだけに指摘をされたとしたら、Tさんは「なぜsoufuさんには指摘しないのか?」と思われることだろう。
タイミングについては腑に落ちる一方で、
点前の動作を真似しようとよく見てくださるのはある意味、光栄なことだけれども。
袱紗さばきの一部の動き、そのような細部まで、じっくりTさんは見ていた、ということ!?
そして実際に点前でやってみた、ということ!?
と、心の底から驚いたのだった。
「新しく入られた方には、自分がきれいだと思う人の点前をよく見て真似してください、と皆さんに言っていますから」
改めて先生がおっしゃる。
一連のことに戸惑いつつ、「精進します」とお答えしたのだった。
*
これまで、お稽古で点前に臨むにあたっては、
「美しい点前で、おいしいお茶を点てられますように」
というおもいをもって、臨んできた。
一番大事なことは、おいしいお茶を召し上がっていただくこと、と考えている。
そしておいしく召し上がっていただくためにも、美しい所作で点前をすること、を大事に考えてきた。
この一件を経て、点前にあたっては、要素をもう一つ意識するようにしよう、と考えるに至った。
「美しく”的確な”点前で、おいしいお茶を点てられますように」
新しく入られた方が細部の動きを真似するくらい、そのくらいよくみてくださっているということも忘れずに。
美しく的確な点前ができるよう、日々精進していこう
そのように思わせてくれた、エピソードであった。
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