寒さが堪える日
はじめに。
暗い内容なので、文章を読んで影響を受けやすい方はこのまま読まずに閉じていただくか、読んでる途中で少しでも不安を感じたら読むのを止めてください。
この文章はフィクションです。
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身体がひたすらに重い
住んでいるところは北なのだが、季節なりの寒さがここ数日続いている
昨日の夜は知人と会った
話し出せばお互いに止まらないタイプの相性で、それなりに近況を話し合った
以前、もうすぐ車の車検が切れると話したら、知人のさらに知り合いが売りに出す前だという軽のある車を借りてきてくれて、今朝試乗させてもらった
3ドアの四人乗りのその車はは車検も自分の必要な期間までついている 乗り心地も悪くない オプションも今までの車以上に付いていて、普段の使用頻度から言えば必要十分だ
ただ先月と違うのは気持ちの問題
試乗している最中でも、私はこの車に乗る未来の自分を想像できなかった
私は今の車で、遠い所へ行こうとしている
それを決めてしまった今となっては、先に必要な車のことは、正直他人事だった 知人には申し訳ないが
私はあの日から身体の中身が入れ替わったような感覚がしている
体は相変わらず重い 体重の問題ではなく、操作に慣れないロボットをなんとか動かしている感じ
心はもっと違和感がある 部屋に居ても、家にある好きで集めたものすべてが他人の物のように感じるし、正直私はなんでここに居るんだろう、という戸惑いが大きい
食べたいものもしたいことも特にない 本は脳を通り過ぎていく 耳鳴りが止まらない 空が色褪せて見える 呼吸の仕方がわからない
世界は私を除けばいつも通りに回っている
どうしていままでやってこれたんだろう
昔の自分が知らない人に思える
口角を上げようとしてもすぐ元に戻る
タバコが煙臭くて美味しくない
なぜここにいるのかわからない
感覚的なことを言えば
いままで細く長く続くレールを何度も切り替えてなんとかやってきたけれど
それが決定的に外れてしまった感じ
まだレールはあるけれど、先は見えない
見えないけどどうなるかはおおよそわかっている
そこが自分が決めたゴールだから
だれも悪くない
だれも悪くない
なのにこうなってしまうのは、仕方がないことなんだ