マンチェスター・ユナイテッドに見た、フリーキック守備戦術
フリーキック守備戦術
~マンチェスター・ユナイテッドより~
今回は、セットプレーの局面であるフリーキック守備(サイドのエリアからのフリーキック)において、23-24FAカップ決勝より、マンチェスター・ユナイテッドを分析します。また比較も含めて22-23シーズンの試合からも抜粋しました。
まず、ユナイテッドのフリーキック守備時のベースとなる守り方は「ゾーンディフェンス」です。ただし、ゾーンと言っても1列に並ぶかたちとなります。これを分析し、メリットやデメリット、それに対する有効な対抗策を考察していきます。
マンチェスター・ユナイテッドの
フリーキック守備
① ベースとなる配置
ユナイテッドはフリーキック守備時、下図のような配置となる。
説明すると、ボール周辺のエリアでは2~3人が立ち、ゴール前のエリアでは、残りの7~8人が入る。基本的にユナイテッドは11人全員を守備に戻すため、前方のエリアには人は配置しない。
ここで、全体の配置を「ボール周辺 - ゴール前 - 前方のエリア」の順で「3-7-0」または「2-8-0」と表すことができる。
② ボール周辺
ここから、それぞれのエリアにおいて分析する。
まずボール周辺のエリアでは、前述の通り、2~3人が立つ。ここでは、1人がフリーキックの壁として立ち、残りの1~2人がショートパスで再開された場合にボールホルダーへすばやくアプローチできる位置に立つ。
③ ゴール前
次に、ゴール前のエリアでは、ベースとしてゾーンディフェンスを行い、1列に並んでラインを設定するかたちとなる。そして、可能な限りそのラインを高い位置に敷く。
具体的には、このエリアには7~8人が入り、列を作る。このとき、1人余った場合は、ターゲットになり得る敵(身体的に優位であり、かつヘディングの技術の高い選手)をマンマークする。
④ 前方のエリア
最後に、前方のエリアについては、ユナイテッドは基本的に11人全員を守備に戻すため、ここのエリアには配置しない。
※しかし、試合の状況によっては、カウンターで決定的な仕事ができる選手(または、守備ではあまり戦力として期待できない選手)を前方のエリアに配置することもあるはずである。
今回は、ユナイテッドのフリーキック守備時の1列に並んだゾーンディフェンスについて分析しました。
私の考えでは、この狙いはあらかじめゴールから敵を遠ざけておくことだと思います。ラインを設定した上で、ボールが蹴られる直前に全員が一気にゴール前に下がれば守備側が有利な状況になる可能性が高いです。また、ホイッスルが鳴ってからボールが蹴られるまでの間、守備側がラインを下げるタイミングをコントロールすることができ、能動的な対応ができます。さらに、GKは目の前にスペースが与えられているため対応しやすいといったメリットがあります。
一方、デメリットとしては、何らかの影響で各々のラインを下げるタイミングがずれてしまう(ずらされてしまう)と、ゴール前で数敵不利となり、フリーでヘディングされてしまう可能性があります。また、ラインを下げるのをブロックされてしまうとゴール前ががら空きになってしまいます。これらは、攻撃側の対抗策のヒントになるかと思います。
画像参考)
以下試合映像より引用
・23-24 FAカップ決勝
マンチェスターC vs マンチェスターU
・22-23 プレミアリーグ第28節
ブライトン vs マンチェスターU