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日本のビルドアップ時の3MF

2022 FIFAワールドカップ・アジア最終予選
オーストラリア vs 日本

~日本代表に見た、ビルドアップ時の
3CMFの相関性~

 2022ワールドカップ・カタール大会出場おめでとうございます。
 今回は、日本が本大会出場を決めたオーストラリア戦にて、自陣からのビルドアップ時の局面における、3CMFの遠藤航・田中碧・守田英正の相関性やそれぞれのプレーの特徴を深掘りしていきたいと思います。
 本編では分かりやすいよう、「①チーム全体」→「②グループ(3MF)」→「③個人」と紹介していきます。


スタメン(away : 日本)

結果 : オーストラリア 0 - 2 日本
( 前半 0 - 0、後半 0 - 2 )


日本の攻撃
(自陣からのビルドアップ)

① チーム全体
 まずは、チーム全体の自陣ビルドアップ時の振る舞いについて紹介する。

 自陣からのビルドアップ時の陣形は、下図のようにSBの山根・長友が幅をとり「2-3-2-3」または、同選手が高い位置を取り「2-1-4-3」のようになる。

「2-3-2-3」

「2-1-4-3」

 プレー展開としては、幅を広く使ったポジショニングをし、ショートパスでポゼッションによるビルドアップとロングボールを用いたダイレクトなビルドアップを両用していた。
 具体的には、敵の2FWの背後に立つ遠藤・守田・田中が後方でのポゼッションのサポートを行い、DFとMFの2ライン間へ侵入した南野・伊東や田中・守田などへのパスを積極的に狙っていた。
 さらに、前にプレスへ出てきた敵の背後や前線の空いたスペースを狙い、スピードのある浅野・伊東をターゲットとしてロングボールを送るダイレクトなビルドアップも同時に行っていた。


② グループ(遠藤・田中・守田)
 次に、自陣からのビルドアップ時の3MFの遠藤・田中・守田の相関性について紹介する。

● 必ず1枚がアンカーの位置へサポート
 アンカーの位置に立つ選手は固定されておらず、遠藤・田中・守田のうち1人が、アンカーの位置(2CBの前のスペース)または2CBの間に立ち、ビルドアップの方向づけを行っていた。このとき、残りの2人はポジションが重ならないかつ斜めの位置関係となるようポジショニングしていた。(残り2人は、4-3-3のインサイドMFの位置に立ち3人で逆三角形のようになる)

シーン1 : アンカーの位置に遠藤

シーン2 : アンカーの位置に田中

シーン3 : アンカーの位置に守田

※赤エリアはアンカーのポジション


● 流動的なポジションチェンジ
 さらに、ポゼッションを行う中で、3人が頻繁にポジションチェンジを行い、相手のマークを混乱させていた。これにより、クリーンな形でボールを受けたり、前線へボールを運ぶことが出来ていた。

シーン1

※アンカーの位置に立つ守田とその斜め前方に立つ田中がポジションチェンジすることで、敵のマークがずれ、アンカーの位置で田中がフリーでボールを受けたシーン。

シーン2

※アンカーの位置でボールを受けた遠藤に対して、その斜めの前方に立つ田中がアンカーの位置に下りるような動きをすることで、遠藤の前方のスペースが空き、ドリブルで運ぶことでクリーンな形で南野へボールを送ったシーン。


③ 個人
 ここから、自陣ビルドアップの局面において、遠藤・田中・守田それぞれの個人の特徴や役割について考察する。

●  遠藤 航
 この試合で見られた自陣からのビルドアップ時の遠藤の特徴としては、アンカーの位置や2CBの間へ下り、少ないタッチ数でCBとパス交換をすることで敵の第1プレッシャーライン(2枚のFW)を動かす。そして、より状態の良い選手へボールを送ることで、その選手が良い形で前を向いて敵のプレッシャーラインの背後へボールを送る、あるいは自らが前へボールを運ぶ状況を作り出す。といった特徴が見られた。

・状態の良い選手へボールを送り、その選手がフリーで前を向いてプレーできる状況を作り出す

・自らが前へボールを運ぶ状況を作り出す

 さらに、前線へ正確なタイミングで高い精度のロングボールを送ることができるというのも特徴の1つであり、下図のようにスピードのある浅野・伊東をターゲットとして敵最終ラインの背後へロングボールを送り、チャンスを作り出すというプレーも多くみられた。


●  田中 碧
 自陣からのビルドアップ時の田中の特徴としては、高いテクニックとボールコントロールを活かしシンプルなショートパスをワンタッチ、ツータッチでリズムよく展開してポゼッションを安定させ、敵の守備にずれを生じさせる。そして、敵を背負った状態であっても難なくボールを捌いたり、前を向いたりすることができる。といった特徴が見られた。
 また、この試合では、田中のもう1つの特徴でもあるポジション取りの上手さが多く見られた。具体的には、下図のように敵のマークに捕まらないよう、敵DFとMFの2ライン間へ出入りを繰り返し、さらに常に敵との中間的なポジショニングをすることで優位な位置でボールを受けようとしていた。また、この敵との中間的な位置でのボールの受け方が非常に上手かった。

●  敵DFとMFの2ライン間への出入り

●  中間的なポジショニング


●  守田英正
 自陣からのビルドアップ時の守田の特徴としては、敵味方の位置を瞬時に読み取り、効果的にビルドアップを行うための位置取りを的確に行うことができる。
 具体的にこの試合では、インサイドMFの位置で敵のライン間に潜り込み、前線の味方と重ならないかつ敵との中間的なポジションを取ることで、敵のプレッシャーラインを越えるパスを引き出そうとしていた。さらに、よりプレッシャーが少なくスペースと時間を得やすい2CBの間に下り数的優位を作り出したり、大外のSBの位置に下りてボールを受け敵のマークを混乱させることで、ポゼッションを安定させるといったプレーが多く見られた。

●  CBの間に下り数的優位を作る

●  SBの位置に下り敵のマークを外す


【まとめ】
 今回は、日本の3CMFを担う遠藤航、田中碧、守田英正の、自陣からのビルドアップ時のグループでの相関性や、個人の特徴について考察した。
 3人は、特徴や強みは異なるものの3人ともアンカーの役割をこなすことのできる選手である。故に日本代表はアンカーの位置に立つ選手を固定することなく、この3人が入れ替わりでアンカーの役割をこなすといったプレー原則を採用しているように見えた。さらに、それぞれが特徴が異なることで、ビルドアップ時の攻撃のバリエーションや選択肢が増え、結果的にオーストラリアに対して、ビルドアップの局面で優位に立つことができていた。
 また、今回紹介した、遠藤航、田中碧、守田英正は、攻守両局面でバランスよくプレーをこなすことのできる万能的なMFであると思う。 これは、現代サッカーのMFに求められている能力でもあるため、ワールドカップでどのようなプレーを見せるのか大いに期待ができる。

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