ロックダウン緩和が進むイギリス。またローカルロックダウンに逆戻りした街で起こったこと。(2020年7月)
(写真はEidのお祭りで人で溢れたGreat Horton Road。マスクをつけない人やソーシャルディスタンスを気にしていない人が多いのも問題。)
7月4日からイギリスでは徐々にではあるがレストランやバー、その他の商業施設が営業を始めた。テイクアウトのみや短縮営業、いろいろな制限がありながらもなんとか少しづつ日常を取り戻りつつある喜びを実感していた。
7月30日の夕方に流れたニュースで、ブラッドフォードでは緩和されていた規制を一部取り消し、他の人の家を訪ねることが禁止(罰金を伴う)となった。これにはパブやレストランで同じ家に住んでいる人以外と一緒に食事することも含む。
私が住むブラッドフォードはパキスタン系の移民の街である。街を見渡せば、教会よりもイスラム教のモスクが多く、水たばこのシーシャや中東料理、南アジア料理を振る舞うレストランが連なっている。待ちゆく人を見渡せば、ここがイギリスか信じられなくなる。英語よりもアラビア語やウルドゥー語が聞こえてくる。
規制が発せられたのは、ムスリムの人たちにとって日本人のお盆のような国民的祝日Eidイードの当日。自分の世帯以外への訪問を禁止するものだった。
多文化とは何なのか。
実家に帰省するその前夜真夜中12時に、実家に帰省するのは違法だと言われるのは、どんな気持ちだろうか。
ロックダウン中長らく会えていなかった親戚の家にあいさつに行くのが違法だと言われたら、どんな気持ちになるだろうか。
みんなそれぞれに準備して、予定を立ててその当日を迎える。その前日にいきなり、実家に帰ったり親戚の家にお邪魔するのは違法だと言われる。
イギリス政府のコロナに対する政策はゆらいでいる。マスク着用が義務付けられたのは、7月24日。その呼びかけには10日間をかけた。
それにも関わらず、移民が住む街だから軽視されたのか?と思わざるを得ないこの対応。そりゃあ、もうここまで準備したんだから、と、予定をそのまま実行することについて、私は個人的に否定できないと思う。
もちろん感染予防は必要なことに異議は唱えない。ただし、その記念すべき日にあまりにも失礼な方法で告知し、それを無視している人を「やっぱり移民は軽率だ。法律を守らない。」というのはあまりにも酷くないだろうか。
日本にいたら、わざわざ法律で規制しなくても移動は自粛するでしょ!と思うのかしら。イギリスは、誰も「自粛」なんて言葉知らないのよ。そもそもの努力義務は、ないに等しい。
もちろんゴールデンウィーク、お盆に外出しなかった日本人はまさにあっぱれだと思う。移動を禁止する法律があるわけでもないのに、「移動は控えましょう」という呼びかけと社会からの流れが人の行動を大きく変える日本。それがコロナには功を奏したのかもしれない。とはいえ、日本国民の「自粛」という努力に対して政府は何の手助けをしてくただろう…。