【肩の投球障害】競技復帰&再発予防を加速させる「5つの視点」|治療家、セラピスト、トレーナー向け|
“肩の治療はむずかしい”
“肩は治りにくい”
“投球障害は複雑”
このように肩の投球障害に対する治療に苦手意識をもっていませんか?
私も理学療法士として働きはじめたころはそうでした。患者・選手の訴える精緻な症状をとらえきれない、評価をしても症状とのつながりがわからない、対処療法にとどまってしまうー。
症状や病態の理解と評価、アプローチの流れがバラバラなので、当然かんばしい結果も得られていませんでした。
そこで投球障害を徹底的に勉強し、ある「切り口」にたどりつきました。
選手の訴える症状は、いくつかの切り口に分けられます。その切り口にそって順をおってみたり、行き来してみたりすることで選手の状態を把握。的確なアプローチをできるようになりました。
野球やバレーボール、バドミントンなど、投球(オーバヘッドスポーツ)による肩の痛み・障害へ対処する際には、次の「5つの視点」をおさえておくことが解決のカギになります。
1.【病態鑑別】患部(肩関節)に何が起こったのか?
まず患部である肩の構造に何かしらの「破綻・損傷」がおきていないかどうかをチェックします。
投球障害で傷めやすい肩の構造には上腕骨頭、関節唇、回旋筋腱板、上腕二頭筋長頭腱などがあげられます。
整形外科的テストによって病態を把握。さらに精査するためには超音波検査(エコー)やMRIなどが用いられます。
2.【機能評価】肩にどんな不具合(機能障害)が起きているのか?
投球障害をおこした選手の肩甲上腕関節には、特徴的な機能変化がおきている場合が多いです。投球障害に特徴的な肩甲上腕関節の機能変化として次の3つがあります。
・上肢挙上位(第2肢位、第3肢位)での肩関節内旋可動域の制限
・肩関節外旋可動域の拡大
・腱板の相対的な筋力低下
これらの肩甲上腕関節の機能変化により、動作時に肩甲骨関節窩と上腕骨頭との求心位が不整に。メカニカルストレスが増し、そのストレスを受容体が感知することで痛みが生じます。
3.【発生機序】どうして肩が壊れるまでの負担がかかったのか?
痛みや違和感といった症状を出している損傷部位は、“それがあるから”という「原因」ではありません。むしろパフォーマンスを発揮するうえでその部位にツケがまわってきた、「結果」といえます。
患部に無理をかけ続けてきた「なまけ者」や全身の使い方に着目。病態発生の「ストーリー」をみつけましょう。
例えば、肩甲骨周囲筋の筋力低下、体幹や股関節の可動域制限、足関節捻挫の既往などは理想的な投球動作から外れ、結果的に肩甲上腕関節への負担を集中させてしまいます。
4.【治療法の選定(キュア)】症状にどう対処するか?
投球障害への対処ではまず、「患部を守る」ことが第一。何らかの構造破綻をおこした急性期には、安静や服薬による炎症の鎮静が優先されます。
スムーズな治癒の促進、疼痛緩和、組織緊張の調整などを目的として「物理療法(電気刺激、超音波)」や「徒手療法」が行われます。
自然治癒が困難なほどの重症や、保存療法による改善効果がとぼしい場合には、「手術療法」による組織の再建や損傷部位の切除が選択されます。
5.【予防の戦略(ケア)】再発を防ぐにはどうするか?
投球障害の再発を防ぐためには、病態発生にいたった「ストーリー」を作り直すのが肝心。ストーリーを再構築するには、次の3点から身体機能やコンディショニングを見直していきましょう。
・なまけていた筋の再教育
・骨運動連鎖、力の伝達の改善
・環境要因やトレーニング要因の見直し
運動機能にくわえて、プレッシャーや不安による精神的ストレス、生活習慣の乱れによる自律神経のバランスなどにも考慮。カラダとココロの両面から選手をみることで、問題解決の早道になります。
まとめ
肩の投球障害に対するアプローチでおさえておくべき「5つの視点」をご紹介しました。
5つの視点にわけたり、行き来しながらみることで、モレなくムダなく選手のカラダの状態を把握できます。そして安全で的確な対処をおこない、スムーズな競技復帰を実現。
さらに身体機能や動作を効率化することで、今後の再発予防やパフォーマンスアップへもつなげることができます。
ぜひふだんの臨床現場でご活用いただければ幸いです!
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