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おかえり

ムスメが3日間の合宿から帰ってきた。大きなバッグを転がしながら体を引きずるようにエレベーターから降りる姿を見て、ただ無事でよかったと安堵する。

ムスメがいない間、オットと二人の食卓で過去の合宿体験を語り合った。強豪校のラグビー部に所属していたオットはけがが絶えず、頭からの流血で練習は見学、試合のみ参加といったことが多かったらしい。今と違い先輩後輩の区別がはっきりとしていた運動部の部活。先輩のユニフォームを洗濯するのも1年生の役目だったと聞く。合同合宿の何とかラン?で5位以内に3人入っていないと連帯責任でさらに何周か走らされたという話を聞くと、理不尽な中でも努力する力を備えていたんだな。今なら笑い話になるって豪快に笑って話してた。私は合唱団の野外レッスンと称された合宿。●●ちゃんと名前で呼ばれ、そんなに連帯責任を問われることもない。確か卒団前の中3で参加した時は雷がひどく、小学生の小さな子たちが恐がるのをなだめながら夜を過ごした。(本当は私も雷や雨の音が恐いけど、家に帰りたいと不安がる小さな子たちを放ってはおけなかった)

体がバラバラになりそうなほど力を振り絞ったのは産後の子育て中だけかもしれない。人生で一番苦労したのは体力のない中での子育てだったかも。

***

けがをしないようにと何度も念を押して送り出したムスメはくたくたになりながらも無事帰ってきた。甘いものを食べたいとスーパーでケーキを2つ買ってきていた。「お母さんも食べる?」と聞かれたけれど、とにかく甘いものを欲している彼女が食べた方がいい。体中が痛いと言って軽くチョコレートケーキを平らげると、ソファに寝そべり「眠いよ」とだけ言ってしばし仮眠を取り始めた。その直後塾の先生から電話がかかってくる。

合宿があるからと英語のクラスだけ受講をあきらめたが、先生の好意で補講をしてくれるという。でも今日は寝かせてあげたかった。先生への電話は改めて本人からすることにした。

お風呂に入り、やっとご飯を食べる元気が出たところで、合宿の話を口にし始めた。普段からそんなにおしゃべりではない彼女は話し方も冷静だ。

「Yがね、1日目に捻挫してずっと松葉づえをついてた」
部活の仲良し4人組のひとりが捻挫したという。移動も練習中も慣れない場所で松葉づえは大変だったろうに。

合宿所までは1時間ほどかかる場所だったため、そこからターミナル駅までは一緒に帰ってきたという。車で迎えに来てくれたそうだがお母さんも心配しただろう。いつも一緒に過ごしている友人のけが、部屋も一緒の3日間、楽しみつつもショックだったようだ。さらなる口数の少なさがそれを物語っている。私も最近なぜだかけがをしないようにと口を酸っぱくして言い聞かせていたけれど、何とも言い難い思いがある。

マッサージをしながら、足や腿のコリを確かめ、ハードな練習に耐えてきたことを実感する。全身をもみほぐしながら、また心身ともに強く成長しているムスメを思う。Yちゃんの捻挫も早く良くなりますようにと祈りながら。

苦労を避けて生きてきた甘ちゃんの母との距離はまた広がっていく。


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