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【後半】翻訳品質チェックが辛すぎて財団活動全般へのリソースが食われる現状に喝を入れるべく、お金に励まされる人になった

前半:

どうしてなのか

まず最初に共有しておきたい前提が、ここ1年ほどの翻訳数の急増です。当たり前ですが、誰にも訳されていない記事の翻訳品質が低くて頭を痛めることはありませんからね。

オワコン論はどんなジャンルにもつきものですが、本家ENの記事はコンスタントに増え続けており、低評価削除・評判が芳しくないことによる自己削除を含めても、全体としては未だに単調増加の傾向にあります。その点において、翻訳の手が多いこと自体は原則として明るいニュースと受け止めるべきです。

第1に浮上する理由が、コメント投稿にかかる時間です。1件で最低4時間はかかっている気がします。しかも記事を読みながら怪しい箇所をメモして、対応する原文を抜き出すのにかかる時間は含まれていません。

そもそも、テキストサイト文化華やかなりし時代から掲示板やフォーラムのコメント投稿は苦手でした。さらに今はAjaxなフォームが主流で、10年以上前の時点で展示処分品だったPCでは一挙一動がフリーズやクラッシュのリスクと隣り合わせです。テキストファイルの下書き付きでも、投稿準備は毎回冷や汗ものです。

第2に、自分1人でやるなら適当に始末して終わりな1文でも、他人が間違えた箇所を拾うとなると相当に気を遣います。ほとんどすべてのケースでは、相手の英語能力がどれだけ低いのかも分かりません。どう説明すれば納得してもらえるのか、代替案をどう・どこまで出すべきか、必然的にあらゆる点が毎回ほぼ完全な手探りです。もちろん、無駄に相手を傷つけない言いまわしにも気を遣うことになります。

この2点があるために、最終的に「あれっ、これ俺が0から訳した方がはるかに速くてストレスフリーじゃね……?」としか思えない状況が多々ありました。ちなみに、オリジナル作品と異なり、本投稿された翻訳がサイトルールにより削除されるのは極めてレアケースなので、大体はいかに低品質であれ本投稿されてしまった時点で不可能です。

当然、翻訳チェックに時間を取られていると自分の翻訳作業ができません。オリジナルなど、とてもじゃないが落ち着いて作っている余裕はありません。

そして心理学

現在、JPではオリジナル記事3つ、または翻訳記事5つを投稿することにより、著者ページなるものを作る権利を得ることができます。

著者ページはマイナス評価を入れられることがなく(※過去には可能だった)、品質に関係なく最低限サイトルールを満たした様々なコンテンツを置くことができ、そして大体財団世界内の職員データの体裁をとります。ENではそういった著者ページの自己投影的キャラクターの扱いは、基本小粋なジョークか、お洒落なデコレーション程度の扱いです。少なくとも、近年アクティブな著者の大半はそうです。一方、JPではこれを著者のアバター的なオリジナルキャラクターを財団世界に導入する機会とみなす傾向が見られます。

私が公式にSCP財団に参加した頃にはなかったルールなので、個人的心情としては別に著者ページが欲しくて翻訳してきた訳ではありません。その一方、例のエゴサじゃないエゴサをやっていると、他の翻訳メインのメンバーが著者ページを渇望している様子がどうしても目に入ります。そうすると、畢竟「自分にとっては別段重要でもないが、世間的には価値あるものとして規定されている」という認識から逃れ難くなってくるんですね。

するとどうなるでしょう?

特に、同一の活動歴が浅いメンバーが活発に投稿しているが、それが誤りや文章の不自然さを多数抱えた典型的な低品質翻訳だったようなときに

「本当にしたいことを後回しにしながら1円も儲からない辛い仕事をやる羽目になっているが、それは他の人が楽して得することを選んだためである」

というアンフェア極まりない因果関係が見えてしまい、ものすごく辛くなってしまうんですね。

このへんを参照のこと: https://scholar.google.co.jp/scholar?q=distributive+justice+psychological+distress

(えっ、用語の正確な言いまわしを知りたくて何気なく検索してみたら身体面における健康リスクとか一杯出てきて怖い怖い……滅茶苦茶心当たりがあるのだが)

でもそこで翻訳チェックを完全に投げ出してしまうと……

「SCPの翻訳は質が低い!!」

見事な八方ふさがりです。

さらに、これは本当に読者目線ではどうでもいいことですが、オリジナル作品を批評する際に、引き合いに出したい作品が不正確な訳文を含んでいると何もかもが格段に面倒になります(しかも恐ろしいことに、TaleやGoIフォーマットの核心部分でよくある)。

儲かればいいのでは?

そう、簡単な話ですね。

「1円も儲からない」のが苦痛なら、儲かる可能性を作ってやればいいのです。

現実的な見込みはありとあらゆる面でネガティブです。まず、翻訳の質が低いことをもっと恐れてほしい層はnoteをあまり読みに来ないし、もし幸運にもこの記事を読んで投げ銭する気になったとして、新規メンバーのボリューム層は常に中高生であるため、保護者の同意を得るというステップが立ちはだかります。そしてnoteの利用者層の大半はSCPの作る側の事情に興味がありません。ちょっと先行事例をリサーチしてみたら見覚えある名前がちらほらありましたが、大半19年で止まっていて、これはSCP者におけるnoteブームのピークを明らかに逃した感……。それと本当にどうしようもないんですが、その手の専門教育を受けていない実務経験なしの人間が書く翻訳アドバイス、金を出したくないコンテンツ最上位としてなかなかのポテンシャルです。とても同じ理由でアメリアに入会するのを思いとどまった人間の所業とは思えませんね。そしてとどめに、TwitterでSCPの翻訳品質をdisってる層は、問題の記事の訳が見直されても2度と読みに来ないでしょう。

しかし、ここで1つの考え方があります。最近西洋占星術の手法について調べていたのですが、未来予知と運について言及する際、面白いことに大半の占い師がほぼ同じことを言うのですね。

「宝くじを当てる運というものが仮にあったとして、くじを買わなければ当選率はゼロである」

そうか~? あり得ないぐらい運のいいケースを想定すれば、例えば宝くじで高額当選したらいいなと思いながらただ待っていると、思いもよらぬ方面からくじを譲られて、それが当たってしまう事例なんか理論上はあるじゃない? ……と思うんですが、その一方で、認識した可能性をいかに行動に反映させるべきかという論点においては説得力十分です。

そしてもうひとつ、コメントを書くのに苦労する最大の理由が極力読者に無駄な不快感を与えない文章を書くことの困難だとしたら、おそらく解決策は練習だと思うんですよね。それが実際の上達であれ、単なる自分の文章への馴れであれ、もっと幅広く、時には非建設的な話でも発信する機会を増やしていく必要がずっとあったのかもしれません。

おまけの目標として、最近agressive communicationについての文章を読んでなんとなく思うことがあったので、脱agressive communicationも加えていこうと思っています。

あと、単に新しく発信型ウェブサービスにアカウントを作るのは健康にいいので……

大体週1以上を目標に更新していこうと思っています。読書記録、SCPのフォーラムで作品の疑問点や欠陥として投げようと思っていたけどよく考えたら必要ないなと思った没コメント、SCP感の出ない・あるいは単純に面倒すぎる没ネタなどがメインになると思います。何もなかったら専門教育を受けてないアマチュア翻訳者によるtips・ノウハウaka最高に金を払いたくないコンテンツだとか、しゃらくせえコミュニティ論・創作論などを書く羽目になるので、頑張って回避したいところです。

見出し画像はpopo.uw23によるBored

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