見出し画像

エアライン受験はビジネスだ② 〜大学/専門学校問題〜

よくCA受験界隈で目にするのが、高校生やそれ以下の学生による「大学に進学すべきか、航空系の専門学校を選ぶべきか」という質問。

これ、即答します。大学に行け。

※選べる環境にあるという前提で話します。

1. CAになるのに技術は必要ない

そもそも、航空系専門学校では何をするのか?
学校の紹介ページを見ると、立派な施設(機内を模したモックアップや空港カウンター)や本物さながらの制服が目につく。そして、スクールと同じく元CAなどが講師として教え、機内サービス、アナウンス、保安訓練の実習などがあるという。専門学校だから当たり前なのだが、要は実技を身につけようというわけだ。

これ、本気で必要ない。

ホテルなんかは専門卒枠があったりして即戦力として雇うところがあったりするので、むしろ本気でホテリエを極めたいなら是非進学すべきだと思うのだが、CAに関してはこれが通用しない。

新卒は特に、何にも染まっていない人を求めている。マニュアルはもちろん、会社の雰囲気などに染まってくれる人が欲しいのだ。そして、それらが全て初期訓練でみっちり教えられる。専門学校でやっていた人が有利になることはないし、癖みたいなのができてしまうと直さなければならない。例えば、カップを乗せるような小さなトレイの持ち方ひとつでも会社によってマニュアルが違う。(何も載せていないとき、JALは体側に持ち、ANAは両手で保持する。間違えると結構怒られる)某テーマパークでバリバリやっていた同期は、求めらるものの違いに苦労していたので意外だった。保安訓練に至っては、用語も手順も何もかもマニュアル通りに覚えないといけないし、それも会社によってだいぶ違う。(有名なのはドアモード/セレクターレバーか?)まあ一度齧っていることで訓練が少し楽になるかもしれないが、入社してたった数か月の話である。

既卒についても、たとえ経験者採用であっても次の日から飛べるような即戦力を求めているわけではない。入社すれば誰しもが等しく同じ期間訓練を受ける。なぜなら、やはり会社によって何もかもが違うからだ。これは特に保安業務に関しては厳しく、私が経験した2社目では今までのことは全部忘れると決めて取り組んでいる同期もいたくらいである。

まとめると、専門学校での「即戦力になる」ための教育は、必ずしもCAになるためには必要ない。本当に厳しいこと言うけれど、こんなの志望学生をカモにした正真正銘の搾取ビジネスだと思う。専門学校の方が有利ですか?というような質問も見受けられるが、実際に蓋を開けてみれば大手になればなるほど大卒ばかり。前回でも述べた通り特別な採用試験があるわけではないので、学歴が良いほど目に留まりやすくなるのは他の企業と変わらないだろう。さらに、現在についていえば、航空業界は大打撃を受けていていつ採用が通常通りになるかわからない。今もしこれを読んでいる学生がいたら、絶対に大学に行ってほしい。

2. じゃあどこの大学に行けばいいのか

若くして自分はCAに絶対なるんだ!という強い志を持った方は、じゃあどんな大学に行けばいいのか?となるかもしれない。どの学部に行けばいいですか?という質問も目にする。これは簡単で、はっきり言ってどこでもいい。英文科だろうが医学部医学科だろうが、有利な学部など存在しない。(さしがに医学科からの受験だと突っ込まれそうだが…)私みたいに理工学部から入る人もいる。もちろん大学で航空系の勉強は1ミリもしていない。面接でなんで理系なのに?と聞かれることもなかった。だからこそ、自分の人生が豊かになるような、興味が持てることを勉強できる学部を選んでほしい。その中で接客業を経験したり、海外に行ってみたり、自分の得意を見つけて伸ばしてほしい。
今はいろんな学部学科があって、それこそ航空系の学科があるところも珍しくない。大学でもCA受験対策講座やサポートがあるところもあるようだ。専門学校に行くよりは、こういった学科を受験することをお勧めする。

3. あえて専門学校をすすめるならば

ここまで専門学校に対してかなり当たりのきついことを書いてきてしまったが、あえて専門学校に行くことをおすすめするとしたら、以下のような人である。
①大学卒業の4年後を待てず働きたい人
専門学校によっては在学中に合格すれば卒業を待たずに就職できるところもある。その場合、CAとして働きながらレポートなどの提出で卒業ができるとのこと。早く働きたい人にとっては、最短で受験資格を得ることができる。
②CAになるために学びたいこと、身につけたいことが明確であり、それが専門学校で実現できると思える人
要はCA対策以外に時間を使いたくない人にとっては、英語やその他の資格等自分が目指すものを効率的に身につけることができるので、あえて大学に行かなくてもいいのではないかもしれない。

4. まとめ

そもそも、昨今の状況を差し引けばCAという職業は目指す側からするとかなり恵まれていて、全く経験がなくても既卒入社がしやすい。急に業種や業界を変えて転職しようとすると実務経験のなさが弊害になったりしやすいのだが、経験者採用でない限り少なくとも誰にでも門戸が開かれている。だから、仮に新卒で入社できなくても他の職種に比べたら十分チャンスがある。後から気が変わっても受けられると思えば、将来の選択肢は多い方がいい。
逆にCAを辞めたくなった時、次のキャリアを考えたくなった時。大卒でないとそもそもスタートラインに立てないという企業もある。
煌びやかなイメージのあるCAだが、実際にはしんどいことも多く、またこの働き方から人生の節目で辞めざるをえないといった場合もある職業だ。是非、CAになった先のことも考えてみることをお勧めして終わりたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?