(ネタバレ無し)四畳半タイムマシンブルース感想
これは一言で例えるならカツカレーみたいな本です。
カレーもカツもそれぞれでとても美味なんだけれど、足すことでさらに美味しいみたいな。本当、1+1が100にも1000にもなっている。
幸いにも、カレーであるところのサマータイムマシン・ブルースも、カツであるところの四畳半神話体系も既に読んで(或いは視聴して)いたので、本当にこの二つが喧嘩することなく同居してて凄いと思った。どっちも死ぬほど味濃いんだけどな。
登場人物は、四畳半でおなじみの面々。
語り部の私、京大男子の永遠のイデアこと明石さん、妖怪小津、幽水荘の番人樋口さん、イケてる歯科衛生士の羽貫さん、明石さんの映研の先輩城ヶ崎さん。
そしてプロットはサマータイムマシン・ブルースそのもの。
なのだが、それが森見節で本当に面白おかしく脚色されていて、頁を捲る手が止まらなかった。本当に森見先生の引き出しの広さには感服する。その森見節が、サマータイムマシン・ブルース内のギャグとも合わさってとんでもない破壊力。沼にまつわる某シーンは抱腹絶倒してしまった。
しかしながら、本当によく出来たお話である。綿密に敷かれた伏線。サマータイムマシン・ブルースを観たり読んだりしたことない人は、ぜひこの森見版で楽しんで欲しいと思う。
オリジナルを観てから読んでも、こちらを読んでから観ても、おそらく楽しい。
あーー。ネタバレせずに語るの難しい。
あと、本書は我々のイデアたる明石さんの魅力がたくさん詰まっている。卒業しても未だ明石さんの幻影を追い続けてやまない諸兄は必読すべし。ほら、そこの君だよ。君。
四畳半神話体系を読んだのは8年くらい前。大学の門を叩く直前のこと。あれから人生の夏休み(モラトリアム)を過ごした「私」は果たして社会的有為な人間になれたのであろうか。
嗚呼、夢破れて、四畳半あり。