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UXデザイナーに必要なデータと付き合う力

「キャンペーンLPのCVRが悪い。」

こんな課題があったとき、どのようにCVRを改善したら良いでしょうか?

デザイナーであれば、
「LPのデザインが悪いのが原因だと思うからどうにかして」
などと言われることも少なくないのではないでしょうか。

関係者の直感や、ユーザビリティテストで得られた声は大きな判断材料になりますが、残念ながら、(私の経験上は)単なるビジュアルのデザイン改善でCVRが格段に上がるというようなことは、ほとんどありません。

たしかに、優れたデザインのものであればあるほど多くの人に好まれることは間違いありません。しかし、プロダクトデザインなどに比べてECサイトの設計においては、ビジュアルが最大の敗因ではない場合も少なくないのです。。。

2018年に経済産業省が「デザイン経営宣言」を発表するなど、ビジネスにデザインの必要性が認められるようになった今、組織においていかにデザイナーが機能するかということがますます重要になってきています。

プロダクトのサービス化や、コネクテッド化が進み、消費者にとって選択肢が非常に多くなった今、見た目のかっこよさやサービスが機能しているだけでは、もはや消費者に選ばれる時代ではなくなりました。
いかに、消費者の行動を理解し、消費のインサイトを捉え、適切な消費者層にアプローチできるかということが求められるようになったのです。

言い換えれば、総合的な体験への変化の中で、適切なユーザー体験を提供すること、つまり、サービスの価値を創り出すことが企業の利益に直結するようになったということです。

このような役割を果たすのがUXデザイナーです。

UXデザイナーは、マーケティング、営業、ブランディング、プロダクト、サポートなど、異なるタッチポイントにおいて一貫した体験をユーザーに提供しなければならないため、その業務は多岐に渡ります。

ビジネス戦略の立案・競合調査・ユーザーリサーチ・データ分析・ユーザビリティテストの実施・カスタマージャーニーマップの作成・プロトタイピングなどです。

しかし、特に、データを扱えるUXデザイナーは多くありません。いかにデータを上手く使いこなし、数値が意味することを読み解けるか、また一方で、こうしたデータの結果に縛られることなく、柔軟に新たな価値を生み出せるか、という力は、組織を成功に導く要因の1つであるように思います。

UXデザイナーがデータを扱えることの利点は、大きく以下の2つだと思います。

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① サービスの課題とその改善アプローチが見える。
こちらは、「より多くのユーザーによりサービスを使ってもらうためにはどうしたらいいか」というクエスチョンに対して答えを与えてくれる、一番わかりやすい利点だと思います。

「現在ユーザーはどのようにサービスを利用しているのか」
「どのような使い方をしている人は利用金額が多くて、どのような機能を便利に感じているのか」

など、売上や利用者数のような業績以外の観点に関する数値がUXにおいては重要ですが、こういった数値が何を意味しているのか、あるいは、ユーザーがサービスに感じている魅力は何か、ということをデザイナー自身で数値を理解することで、より良いUX設計に向けた具体的なアクションに繋がるからです。

デザイナーには、数字に対して拒否反応が出てしまう人が多く笑、抑もデータは見ない / 諦めてしまっている場合も少なくありません。
生のデータを扱えるようになるべきだ!とまでは言い切りませんが、データとの最小限の関わりを持っていると良いのではないかなと思います。

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実際の業務においては、平均値やメディアン、割合を示したグラフのような、極めて容易な手法が通常よく用いられるので、(なんなら、ざっくり規模感や割合などがわかれば良いので)あまり構えずにデータと仲良くしてみてほしいなと思います。

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余談:自分でデータを触り始めようとしている人へ

分析のアプローチには、一般に次の2つがあります。

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何も手がかりがないときは前者、何か課題があるときは後者、という感じです。

多くの場合、分析の目的は、「単にユーザーを知る、実績を確認する」だけでなくて、「課題の改善に向けて、次のアクションを決める」ことだと思いますので、後者の方法がオススメです(ただ、仮説が適切でないと大きく誤った答えを導きうるので注意です)。

ただ、大量のデータを上手に色々な切り口から分析してみると、自分の直感では気づけないファクトに出会い、意外なインサイトに気づくこともあります。"ユーザーごとに適切なコンテンツを出し分けたいがそのセグメントの切り方が上手くいっていない"というような場合など、状況に応じて使い分けることが必要です。***********************************************************************


② デザイン改善の重要性やビジネス的な貢献度合いを示せる。
UXデザイナーは、一緒に仕事をするディレクター、エンジニア、そして経営陣を含む組織全体のコミュニケーションを意識して、皆んなの納得がいくように、質の高いデザインを考え、それを実現するためのファシリテーターとしての役割も求められます。

感覚的には間違いなく良いと思える改善案であっても、なかなか企画が通りにくいというような経験を一度はしたことがあるのではないでしょうか?

ユーザーリサーチやデータの分析結果をほんの少しでも根拠に入れるだけで、(不思議なもので)驚くほどその改善案に説得力が生まれます。ディレクター陣は売上や工数を、エンジニア陣はロジックや実現可能性を、といったように関係者の立場によって気にする観点が異なりますから、客観的な数値を出すことでフラットな観点が付与され、論理と共感のバランスをつく提案とすることができるのです。

また、企画提案時やプロジェクト進行前に限らず、プロジェクト終了後にもデータを扱えることのメリットがあります。デザイン改善による効果を概算でも数値として示すことで、デザイナーとしての評価が上がるということが往々にしてあるので、ぜひ積極的に活用してほしいなと思います。


さてさて、長々と書いてしまいましたが、

・ データをデザインの根拠にする力
・ データの意味することを解釈し、課題を解決する力
・ 一方で、論理的になりすぎず、新しいアプローチをする力

を私自身は身につけて、UXデザインに生かしていきたいと思っています。


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