思考の途中
下り坂の終点は見えない。この坂を、自転車に乗って一気に駆け降りる時はいつも怖い。スリルを楽しんでいるかといえば、そんなことはなく、ただ一息に駆け下りた方が早いからそうしているだけだ。
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全長2km ほどのこの坂を私は毎日、自転車で登り降りしている。学校が山の上にあるから仕方ないと思いつつも、正直いうとあんまり好きではない。直線の坂ではなく、先の見えない曲がりくねったこの坂を、一番最初に登った時は果てしなく続く辛さに心が折れそうになってしまった。夏の日は、汗びっしょりになりながら、カンカン照りの中をひたすら登る。なんの苦行かわからない。
でも、好きなところがないわけじゃない。春のうららかな日差しの中で、桜に囲まれながら坂を登り切った時は晴れやかな気持ちになれるし、秋には楓と銀杏に囲まれて香りを楽しみながら坂を下ったりもできる。冬の日は、登るだけで体があったかくなる。
坂を登る時は先の見えない辛い時間をどうにか楽しもうとしているのかもしれない。景色を見たり、誰かと一緒に登ったり。逆に、下る時は怖さに耐えながら、一人で一気に坂を下る。下る時は体力を使わないが、精神力を使う。ハラハラするし、怪我への恐怖もある。
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登る時と下る時、どちらが結局辛いのだろうか。そんなことを考えているとよくわからなくなってきた。違うタイプの辛さがあるように思えてくる。私はどっちなら受け入れられるのだろうか。どちらも受け入れられないのだろうか。
ついついそんなことを考えてしまう。
「キィー」とブレーキが鳴った。
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