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福住廉 fukuzumi ren 1975年東京都生まれ。美術評論家。 和光大学人文学部卒業。九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程単位取得退学。2003年、美術出版社主催第12回芸術評論で佳作受賞。「美術手帖」(2004-2005)や「artscape」(2006-2017)で展評を連載した後、現在は「共同通信」(2007- )で毎月展評を連載中。そのほかに美術雑誌、ウェブマガジン、新聞、展覧会図録、作品集などにも寄稿している。著書に『今日の限界芸術』(BankART

    • TRANS_02 Editor’s Note

      先日、八戸市にお住まいの中村タケさんを訪ねました。タケさんは御年92歳、最後の全盲イタコです。死者の霊を招き、そのことばを語る「口寄せ」を、今もご自宅でなさっています。もちろん、私にとっては初体験。やや緊張しながら対面しました。 驚いたのは、口寄せがきわめて音楽的な経験だったこと。一定のリズムで滔々と語るタケさんは、死者からのメッセージを伝達しているというより、むしろ詩を詠み上げているようでした。しかも同じことばが何度も繰り返し唄われるので、それらに耳を傾けていると、次第に

      • 創刊のことば

        𝘊𝘰𝘮𝘱𝘰𝘴𝘪𝘵𝘦ではなく𝘛𝘳𝘢𝘯𝘴𝘥𝘪𝘴𝘤𝘪𝘱𝘭𝘪𝘯𝘢𝘳𝘺──。複合芸術の複合とは、たんなる表現や理論、素材や方法の「合成」ではありません。外部に「越境」し、他者に学び、自己を変容させながら育んだ思想を未来へ再配置すること。大学院複合芸術研究科は、これらの創造的な道のりを歩むことを複合芸術の研究活動として考えています。 2017年の開設以来、本研究科を足がかりに、さまざまな研究者や大学院生が複合芸術という未知の道程を切り開き、かつ歩んできました。本誌「TRANS」は、それ

        • [記録]グラフィティ・リサーチ・プロジェクト

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        • 「図書新聞」現代美術回顧
          5本
        • 淺井裕介in 武隆ランバ国際大地芸術祭2019
          11本
        • 検閲と表現規制
          6本
        • 芸術民俗学
          8本
        • 超絶技巧
          13本
        • 絵画の様式論
          6本

        記事

          グラフィティ・リサーチ・プロジェクト*2

          複合芸術基礎演習Aとは、本学大学院複合芸術研究科がおもに学部1年生に向けて開講している少人数制のゼミです。そのねらいは、学生同士の協働作業により領域横断や複合芸術を体験的に学ぶことにあります。 グラフィティ・リサーチ・プロジェクトは、そのための第一歩。わたしたちが暮らす街にはどんなルールが働いているのか、それらをかいくぐりながらどんな表現が生きているのか。いつもとは少しちがった視線で街を観察することで、ふだんはあまり気にとめない落書きをそこかしこに発見することができます。そ

          グラフィティ・リサーチ・プロジェクト*2

          グラフィティ・リサーチ・プロジェクト*1

          美術であろうとなかろうと、多種多様な表現の痕跡を発見するために、街の隅々に視線を走らせること──。 わたしが「複合芸術論基礎演習A」という授業で学生たちに求めているのは、スキャニングのような眼の使い方です。 ただ漫然と街を歩くだけでは、街角にあふれている商品や広告を再確認することにしかなりません。電信柱や駐車場、ビルとビルの隙間、はたまた交通標識の裏まで。ありとありゆる街の端々を細かく点検すれば、そこかしこに残された何者かによる表現の数々に驚くはずです。 誰が、何のため

          グラフィティ・リサーチ・プロジェクト*1

          加速するアナクロニズム──2021年日本現代美術回顧

          「警察じゃけぇ、なにをしてもええんじゃ」。映画「孤狼の血」(白石和彌監督、2018年)で役所広司が演じた大上の名台詞である。その続編「孤狼の血level.2」(同監督、2021年)で大上の跡を継いだ、松坂桃李による日岡も「全員ブタ箱叩き込んじゃる!」と啖呵を切るが、大上の恐るべき脅し文句に比べると、いかにも弱い。この迫力の差は、役者の演技や体格というより、物語の時代設定に由来していたように思われる。前者の物語が昭和63年だったのにたいし、後者のそれはそれから3年後。つまり、前

          加速するアナクロニズム──2021年日本現代美術回顧

          撃たれる覚悟を!──2022年現代美術回顧[部分]

          コンセプチュアル・アートの政治利用──。「国際芸術祭あいち2022」でもっとも印象深かったのは、会場のひとつ、愛知県美術館の展示が河原温からはじめられていたことだった。言わずと知れた世界的なコンセプチュアル・アーティストである。同芸術祭の芸術監督・片岡真実は、おそらく河原温から展示をはじめることにかなり自覚的だったように思う。いや、戦略的だったといってもいい。同芸術祭のテーマ「STILL ALIVE 今、を生きるアートのちから」が、同県で生まれた河原温の代表作《I Am St

          撃たれる覚悟を!──2022年現代美術回顧[部分]

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          武隆ランバ国際芸術祭2022

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          動画《空から大地が降ってくるぞ》2022

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          生誕80周年 恋かいこの人生HARDCORE論

          学生のレポートを採点していて不思議なのは、わたしが講義で口にした言葉を引用している学生がひじょうに多いという事実です。こうした現象は、対面で講義をしていたプレ・コロナの時代にはあまり見受けられませんでした。オンライン講義が常態化したコロナ禍以後、おそらく学生にとって講義とはラジオのようにイヤホンで声を聴くコンテンツのひとつとなり、たとえ同じ内容だったとしても、教室で直接的に語りかけてくる言葉より、イヤホンを通して間接的に耳に届けられる声のほうが、より深く受け止めることができる

          生誕80周年 恋かいこの人生HARDCORE論

          加速するアナクロニズム 2021年日本現代美術回顧[部分]

          「警察じゃけぇ、なにをしてもええんじゃ」。映画「孤狼の血」(白石和彌監督、2018年)で役所広司が演じた大上の名台詞である。その続編「孤狼の血level.2」(同監督、2021年)で大上の跡を継いだ、松坂桃李による日岡も「全員ブタ箱に叩き込んじゃる!」と啖呵を切るが、大上の恐るべき脅し文句に比べると、いかにも弱い。この迫力の差は、役者の演技や体格というより、物語の時代設定に由来していたように思われる。前者の物語が昭和63年だったのにたいし、後者のそれはそれから3年後。つまり、

          加速するアナクロニズム 2021年日本現代美術回顧[部分]

          動物と人間、生物と自然 「宮崎学 自然の鉛筆」展

          世界を切り分けて見るのか、それともつなぎ合わせて見るのか。美術にしろ写真にしろ批評にしろ、芸術をめぐるあらゆる営みには分節と節合という二面性がある。それらは基本的な身ぶりとして分ちがたく結び付けられているが、宮崎学はおそらく後者に重心を置いているのではないか。 事実、宮崎の動物写真を見ると、動物と人間の境界がそれほど明確なものとは思えない。羽を大きく広げたフクロウは大見得を切る歌舞伎役者のようだし、両脚で立ってカメラに悪戯するクマはまるで大柄なカメラマンのようだ。クマの眼が

          動物と人間、生物と自然 「宮崎学 自然の鉛筆」展

          野口哲哉 展─野口哲哉の武者分類図鑑─

          鎧武者を造形する野口哲哉の個展。古美術や参考資料もあわせて100点あまりの作品が展示された。博物館が所蔵する古来の甲冑と野口の作品を並置することで、虚実がない混ぜになった世界観を巧みに演出していた。 見どころが鎧武者を精巧に造形する超絶技巧にあることは言うまでもない。だが、それ以上に印象づけられたのは、野口の鎧武者がある種のドワーフに見えたことだ。いずれも実寸より小さく、場合によっては手に乗るほど小さなサイズだからだろう。漏れなくおじさんであることも7人の小人と重なりあうし

          野口哲哉 展─野口哲哉の武者分類図鑑─

          動画《空から大地が降ってくるぞ》

          #淺井裕介 #重慶 #美術 #絵画 #アート #福住廉

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          熊本市現代美術館による外山恒一検閲事件について(前)

          また、検閲事件が発生しました。ほとほとうんざりしますが、誰かが書いておかないと闇から闇に葬られかねないので、書いておきましょう。 舞台は熊本市現代美術館。2021年3月27日に企画展「段々降りてゆく 九州の地に根を張る7組の表現者」(6月13日まで。現在、臨時休館中)が開幕しましたが、出展者の中に革命家の外山恒一さんの名前はありませんでした。外山さんは同展に参加を請われていましたが、開幕前に美術館から一方的に参加を拒否されたからです。 現在のところ、同館から公式の説明が発

          熊本市現代美術館による外山恒一検閲事件について(前)