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読書めも『人類はどこで間違えたのか』中村桂子著

※私の読書メモをまとめてみました。実際に書かれている内容とは異なる部分があります。本に何が書かれているかを知るためには、やっぱり、自分でちゃんと読むことをお勧めします。

 まず、最初に言っておきます。「〇〇はどこで間違えたのか」というタイトルの本は数多くあります。このような安直で扇動的なタイトルの本は、あまり信用してはいけません。内容を疑って読み進むべきです。この本も、たぶん一般向けということで、かなり雑に書かれています。面白い本ですが、この本だけで結論を急がないようにした方がいいでしょう。

 著者の中村桂子なかむらけいこさんは、1936年1月1日生まれで、今年88歳です。東京大学では大学院で生物化学を専攻した理学博士です。

 88歳で更に新しい知識を取り込み、これだけ丁寧な作品を書き上げる力は、並大抵ではありません。トイビトというWebサイトに2020年9月9日から2023年5月5日まで連載された「生きものであること 人間であること」がこの本のベースとなっています。

 この本のテーマは、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」への反論です。その中で語られる「農業は最大の詐欺だった」という命題に対し、どこかで間違った我々人類が地球で生き続けるためにはどうしたらいいのか、「別の道」「本来歩むはずの道」を考えます。

 私の「読書めも」の中に、「サピエンス全史」の第1~第3部までの記事がありますので、よろしければ。第4部は、まだ書けていませんが。

 ハラリが描いた人類のゆがんだ側面を見た後では、中村さんの考え方は懐古的な色合いが強く、素直に受け入れがたいものがあります。「かつて人類は自然と共存していた」という説は、童話であり子守唄にすぎない。

 人類は、言葉を手に入れ、噂話や神話、宗教などの手段をつかって多くの人とのつながりを生み、多重構造の社会を作り上げました。そこには様々な「力」が存在しており、より大きな「力」を手にいれるために、異質なものの排除や、更にはオーバーキルの仕組みがDNAに組み込まれています。

 従って、我々は間違った道に入ってしまったのではなく、これまでの道は必然であり、人類の原罪を認識したうえで、新しい道を作り出すフェーズにあるのです。

 1993年にJT生命誌研究館の設立に携わり、名誉館長に就任されています。JTは、このような地球規模でプラスとなるような活動を各種行っていますが、その原資となっているのは人間にも環境にも多大なダメージを与えている「たばこ」の販売です。M&Aを繰り返し、130以上の国で販売し、販売数量で世界第三位。ロシア、台湾ではトップシェアを誇っています。

 本のタイトルは、「生きものであること 人間であること」では売れないと出版社がつけたのでしょう。名誉館長の件も、丁寧に依頼されたので引き受けたのではないかと思います。中村さんは、どこかで間違えているのではないか。もう少し、検討された方がよかったのではないかと、残念に思ってしまいます。

 世田谷区の富士山が見える高台で、600平方メートルの庭を手入れして過ごされている中村さんは、夏に来客あったときしか、年に数回しかエアコンを使わずに過ごしていらっしゃるということです。それができるのは、そのような場所を所有できるからであるということに無頓着です。また、そのような場所も、次第に快適さを失っていることにも。果たして今年もエアコンを使わずに過ごされたのではないかと心配です。


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