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蒸気機関車に乗ってアナログ好きな国民性を思う【イギリス一人旅の日記】
初めてのヨーロッパ一人旅の日記です。7月3日、この日はイギリス最終日。
朝ごはんはビーンズオントースト
中庭の小屋が寝床で、寒かったり、ヒーターを入れると乾燥しすぎたりで、昨日はよく眠れなかった。
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朝、母屋にいくと犬を抱えた女性がお出迎え。この方がオーナーさんで、自宅のダイニングが朝ごはんの会場だ。
大きなテーブルには先客が一人。あたまがつるっとしたおじさま。科学を教えていた元教師だそう。今日は昔の教え子と合流して、その教え子の故郷であるアフリカにこれから一緒に行くんだそうだ。なんか楽しそう。
スコットランドから来たそうで・・
「スコットランドはとても寒くて昨日暖炉をつけたくらいだよ」という。
うなずきながら、内心「スコットランド・・北欧だっけ・・・」とわからなくなったが、テレビから明日にひかえたイギリス首相選挙のニュースが流れてきて、目の前の彼が、やれやれ、困ったよ、といったふうに顔をしかめたので、ようやく思い出した、スコットランドもイギリス国内であることを。
その翌日は総選挙で、結局、労働党が勝利して政権交代となった。私は選挙期間中に旅をしていたことになるが、街頭でのキャンペーンはほぼなく、選挙カーなんて見なくて街はとても静か。こんなにも国によって選挙の様子は異なるのか。
さて、今日の朝食はビーンズオントーストを食べた。乾いたパンにとろっとしたビーンズが乗っていて、口の中の湿度は常によい感じに保たれる。茶色に茶色を重ねた奇妙な見た目よりも、味はおいしい。
パンはパン、ビーンズはスープにして別々に食べた方がおいしいのでは?と後から頭をよぎってしまったが、ビーンズ「オン」トーストの存在意義はパンの上にビーンズをぶちまけることにある。
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少々頑張って完食。この頑張りがあとで悪さをするのであった。
噂の保存鉄道に乗る
今日のお楽しみは保存鉄道だ。
保存鉄道は、廃止された路線を復活させて走らせている鉄道。イギリスには150種類もの保存鉄道があるそうだ。世界一の保存鉄道王国である。
廃止路線には蒸気機関車を走らせて観光路線にして、運営はボランティアが支えていることが多いという。特に仕事を引退したシニアの人たちが駅員やエンジニアとして活躍していると聞いた。せっかくなら乗ってみたいと思って、コッツウォルズを走るGloucestershire Warwickshire Steam Railwayに乗るために、この街、チェルトナムに泊まっていた。
そんなわけで、朝から歩いて始発駅に向かっている。
しかし、これがなかなか見つからず苦労した。競馬場の敷地内にあるのだが、思った以上に奥の方にあり、しかも周りに誰も歩いておらず、最後は時間に間に合わない可能性がでてきて、草むらのなかをひたすらダッシュ。途中、気持ちわるくなって草の上にゲロ。さっき食べたビーンズが出てきた。
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なにはともあれ無事、列車に乗った。
駅も列車も趣があって懐かしく、よい雰囲気。駅員は噂どおりご機嫌なおじいさんで、こうなると気分が高揚して、さっきまで吐いていたこともすっかり忘れて、ひたすら楽しい。
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切符にはぱちんと切り込みが入る。列車が走り出す音もまたいい。
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各駅の駅員さんは白髪のおじいさんたち、ときにおばあさんで、保存鉄道はシニアボランティアで成り立っていると聞いていたが、本当のそのとおりのようだ。みな、制服をびっしと着こなし、いかにもプライドを持ってやっています、といった風。
終着駅の売店の店員も白髪の女性で、彼女に聞いてみたら、「予算を管理している限られた数人以外は全員ボランティアなの。駅員、エンジニアも全部ね。100人以上はいるわ。ローテーションを組んで回しているのよ」と実に誇らしげな顔で答えてくれた。
列車は各駅をのんびりとすすむ。
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牧草地や畑があるのんびりしたコッツウォルズの田舎のなかを、28マイル、45キロを走る。
順調に走っていたが、途中の駅で20分くらい停車して結局遅れて終着駅へ。するとエンジンまわりに人が集まって、わいわいと談笑をしているのが聞こえた。
「なんだか今日はエンジンの調子が悪かったんだよ、まいったよ」
「原因はなんだい・・・」
「そういえば一昨日も・・・」
そんな笑い声の交った会話が聞こえてきて、子供のころに読んだ「機関車トーマス」の世界観がオーバーラップする。
終着駅は写真を撮る人、ボランティアをねぎらう人、エンジン談義をする人たちがプラットフォームに集まり、みていて幸せな風景だった。
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このような光景を見ていると、イギリスではアナログ感な手触りを愛する人たちが多いのかなと思う。運河のドッグ、蒸気機関車もそうだ。手で操作しなくてならないような素朴なものをあえて残して大切にするのが好きなようだ。きっとこの国からシリコンバレーは生まれない。美意識の方向性が違う気がする
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大満足の乗車をおえ、いくつかの街に寄りながらロンドンに帰る予定だったが、少々疲れ、早めにロンドンに戻る。そういえば今日は生理だったし、10日間の疲れも出たのだろう。オックスフォードを経由してロンドンのパディントンに行く電車は徐々に混んできて、人の熱気が列車にたまっていく。
16時にパディントンに到着。
明日にはスペインに移動するので、残りの時間はホテルでパッキングにあてる。最後に、もう一度外に出て駅周辺を散歩しながら、クマのパディントンを見てお別れをする。
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はじめてきたイギリス。私はこの国と結構肌が合う気がした。まずは、ちょっと内省的で偏屈な感じがして好きだ。例のアナログ好きなところも。
あとは都会に自然が多くて、生えている木々の枝の張り方が好きだ。そして、売っている商品や服はさほど目新しくないけれど、街並みや建築物は確かに美しいし、列車や看板の日常的な色使いが好みだった。
そして、ロンドンは都市のなかの都市という印象がして、かっこよかった。人々の都会的な礼儀正しさ、地区ごとにがらっと印象が異なるのも、人種が当たり前に混ざっているのも、歴史的な由緒ある建物も、緑がゆたかな公園も、都市としての厚みを見せつけられている気がして喜んで平伏したい気持ちになった。また来たい、それに尽きる!