「山廃仕込み」と福司酒造
こんにちは。福司酒造です。
今日は福司酒造がはじめて造った「山廃仕込み(やまはいじこみ)」のお酒についてお話したいと思います。
①そもそも「山廃」ってなに
酛(もと)は酒母(しゅぼ)とも言われ、お酒の発酵に必要な酵母を増やす工程。もろみの前段階です。
生酛仕込み(きもとじこみ)から山卸(やまおろし)という工程を廃止した酒母仕込みが「山廃仕込み」となります。
福司では製造するお酒のほとんどに醸造用乳酸をつかう「速醸仕込み(そくじょうじこみ)」という方法を使っています。
この方法は、約2週間という短期間かつ簡便に、安全な仕込みができます。
約100年前に確立したこの方法のおかげで、それまで全国の酒蔵で恐れられていたお酒の腐造(ふぞう:酒母やもろみで雑菌が繁殖すること)は、現在ほとんどなくなりました。
それまでは、酒母やもろみが腐造することも少なくなかったのです。
今回、福司が挑戦した「山廃仕込み」は醸造用乳酸をつかわず、天然の乳酸菌のはたらきで酒母を育成する方法です。
1か月ほどかけて育成するこの方法は、技術的に難しく、最悪の場合、酒母やもろみの腐造の可能性もあります。
②福司が山廃を造った理由
詳しくは弊社製造部長がnoteに記事を書いているのでそちらをご覧ください
また酒屋さん向けに作成したフリーペーパー風情報誌(?)、名付けて「OKANBAN(おかんばん)」。こちらもよければご覧ください。
③できたお酒
令和3年度の仕込みでは2種類の「山廃仕込み」のお酒を製造しました。
「山廃仕込み 山田錦50 特別純米」と「山廃仕込み 吟風60 純米」です。
初挑戦の山廃仕込みでしたが、結果として「福司らしい」お酒に仕上がったと思います。
きれいめな「山田錦50」と山廃らしい厚みを感じられる「吟風60」。
2種類造りましたがそれぞれ違いが出て面白いです。
④福司がめざすもの
福司酒造は創業より「よいお酒 福司」をモットーに酒造りをおこなってきました。白麴をつかったお酒による「食文化への対応」も福司が考える「よいお酒」のひとつのかたちです。
よいお酒を、この釧路の地でつくり続けるためには、持続的な
「技術の研鑽と継承」が必要です。
福司酒造は100年以上の歴史があります。しかし多くの技術は、それまで杜氏個人によるもので、継承がなされていませんでした。
数年前より取り組んできた「白麴」、そして今回の「山廃」の試みは、福司にとって新しい挑戦であり技術の研鑽。そしてそれは今後の継承へと続いてゆきます。
時代の移り変わりとともに「よいお酒」の価値観も変わってゆきました。
福司酒造では「よいお酒」ってなんだろうか、ともう一度考え直して、向き合ってゆきます。
そのかたちとして2023年春、新たな銘柄を、みなさまにお届けする予定です。
今回の「山廃仕込み」の2種類は、その前段階、プロトタイプという位置づけです。
これから福司酒造ではじまる挑戦に、どうぞご期待ください。
2022年7月