こんにちは。ルイスキャロルエアプの福田です。「ゆる言語学ラジオ」で私の出演回の参考文献を、ちょっとした解説を交えながら紹介します。いよいよ全3回の最後です。
数と空間の結びつき
↑こちらがSNARC効果の元論文。
↑カナダ人英語話者とアラビア語話者と、ヘブライ語話者のSNARC効果の実験。
↑ロシア語ーヘブライ語バイリンガルのSNARC効果の実験。
数と空間の関わりに関する論文自体はものすごい数にのぼりますが、主に触れたのはこのあたりの実験です。こういった実験を含め、書籍としてまとまったものには以下のようなものもあります。著者は神経心理学者です。
時間と空間の実験
これ系の実験も数限りなくあるのですが、動画では当然ながらそのほんの一部しか触れられていません。触れたものは以下の通りです。
↑上記二つはジェスチャーの実験。
↑時間を表す語をディスプレイ上で判断する実験。
↑中国語話者の空間ー時間マッピングの研究。これ動画内では、判断を上下の手でやるようなことを言っていましたが、ボタンをキーボード上の画面側-自分側で判断するか、左右で判断するかで反応時間がか変わるみたいな実験でした。
ちなみに動画では触れませんでした(というか撮影時は完全に忘れていました)が、日本語にも時間を上下で表す表現があります(「上旬・下旬」とか、「未(ひつじ)くだる程に...」とか)。時間に関しては日本語も中国語も、読みの方向と比喩的な上下が一致するので、どっちの効果が出ているのかはわかりません。ただ、数字の判断に上下で影響が出るか確認するSNARC効果の実験をやると、上から下への読みの方向性と、小さい数字は下、大きい数字は上という、メタファー認識とバッティングして、ここではメタファーが勝つ(小さい数字が下、大きい数字は上になっているような効果が出る)という実験があります(以下の論文)。
これも動画では触れなかった補足ですが、日本語や英語は前後に過去・未来がメタファーを通してマッピングされている、ということなのに、なんで読みの方向性(左右)が関係するの?と思った方もいたかと思います。これはいくつかの解釈があると思うのですが、ひとつとしては時間の概念は進行方向である前から後ろに流れていくものだと認識されていて、さらに日常で繰り返される読み書きの習慣的経験から日本語や英語の話者は左から右に自身の進行方向を想定しやすいから、という感じの説明がなされます(e.g., Fincher-Kiefer, 2019)。ちなみに左から右に読む言語話者は、動作主を左に、被動作主を右に配置する傾向があることも、例えばStroustrup and Wallentin (2018)などにより示唆されています。(論文傾向高めの解説文)。
そして以下が、月や曜日と空間の関係に関わる研究。
時間・空間・量の関連の実験
この文献も含め、ここまで紹介した文献の著者として名前が何回か挙がっているLera Boroditskyは言語相対論の研究者として有名な方で、以下のようなTED Talkも行っています。これもとても面白い動画なので、ぜひ見てみてください。
以上です!全3回、ありがとうございました。動画を楽しんで頂けていたら幸いです。