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描けなくなった自分を許す-画材を手放した話-


長年、「また…いつか」と手放せない物があった。



それが日本画の画材たち。大学を卒業して数十年。いずれ描くだろう…と十数年。結局、使わずでしたが、やっと今月手放すことができました。そんな心境の変化です。

1.社会人1〜3年目

浮世離れしていた学生生活から180°違う社会人の世界へ。日々の生活に慣れることが必死で画材はほぼ触らず。試験対策で辛うじてデッサンをたまに描く程度。
社会人の先輩から「この仕事は病む人が多いから趣味をいっぱい持つと良いよ」とアドバイスをもらい、「仕事に慣れたらまた、日本画描くぞ!!」と思ってました。

2.社会人4〜7年目

仕事には慣れてきたものの、研修と日々の仕事に追われる。仕事の一環で簡単な創作はするものの、週末に日本画の画材を触る気力はなく…ズルズルと時が過ぎる。この頃もまだ、「いつか描くぞー」と自分を信じてました。

3.社会人8年〜十数年目 

仕事の一環で油絵やアクリル画に取り組むことが多くなった時期。今の自分では「日本画は無理だなぁ〜」と薄々気づき始めた数年間です。

具体的には、  

・週末は疲れすぎて、絵を描く気力がない。

アートは好きだが、本格的な物(日本画)を描こうと思うと、どっと気持ちがしんどくなる。ハードルがものすごく高くなっていて、結局描かない。

・他の趣味(主に登山)がどんどん楽しくなり、ベクトルがそっちへ向いてくる。特にこの2、3年。


ただ、展覧会で日本画の作品を見ると「めっちゃ素敵!やっぱり岩絵具最高、描きたい」となる。展覧会へ行った後は、制作意欲も増し、そのまま画材屋へ直行し、今度こそ!!と小さい麻紙ボードや粒膠を購入したこともありました。


4.この頃、どんどんミニマリスト化する自分

ミニマリスト化してきた頃でもあり、家の荷物を徹底的に減らして行った時期。
転勤した職場の自分が使う部屋も、まさかのゴミ屋敷状態(Gもよく出た)でガンガン、ゴミを捨てまくりな日々。

ただ、日本画の道具だけは、どうしても手放せず。迷うこともありましたが、ここまで来ると執着だなと、ここ数年気づいていたものの、手放せずにいました。


4.今年になり転機が訪れる

久々の転勤で春から新しい職場へ。

今回の職場もまたゴミ屋敷。前職場と同様、自分が使う部屋は歴代の人たちの遺物だらけ。自分の捨てスイッチONで、毎日大掃除。
 

また、自分の仕事関係の荷物の多さに気づく。前職場から現職場に荷物を移す際、かなり減らしたはずが、仕事関係の書類や道具が大オリコン1つパンパン。そして紙袋にも。
これが、最終的に家に戻ってくるとなると「量多すぎる!」とゾッとして現在、職場にで絶賛捨て活中で今年中に1/3まで減らす予定です。

心境の変化は友人の個展

夏も職場の大掃除。そんな日々、久々に大学の友人で現役の日本画家の個展へ。作品を見ていると本当にどれも面白く岩絵具の感じはやっぱり油やアクリルより一番好きだなぁと実感。



ただ、今までの様に「日本画を再び描きたい」という気持ちが沸かない自分に気づきました。

日本画が、決して嫌いになった訳ではない。ただ、描けなくなった自分をやっと許せた気がします。

そんなことが、あり数ヶ月。
迷う時点で答えは決まっている。あとは決断。結局、執着してるだけ。それも分かっている。別に無理に手放す必要もない。ただ、本当にそれで良いのか…と考えた結果、よし。手放そうと決断。


さっそく友人に譲り受けてくれないかと連絡すると快諾。ボロボロの刷毛や筆は処分。岩絵具、三千本膠、水干、絵皿など、使えるものを箱にどんどん詰めて郵送。

結局、十数年眠らせてしまった日本画の画材たち。やっと使ってもらえる人の手に渡ってなんだか気持ちがスッキリ。画材たちも幸せだと思います。

今、手元には透明水彩とスケッチブック。これからも簡単なスケッチはポツポツ描いていきます。描かなければではなく、楽しくゆるく。







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