福島の医療に貢献するため大学の学びと地域の魅力を発信
福島県立医科大学の学生による広報サークル「FMU PR-Lab」。大学の学びや福島の医療について多くの方に知ってもらおうと、動画での発信や子どもたち向けのイベント企画を行っています。設立から約2年でメンバーは約50人となり、動画をきっかけに福島県立医大を知る高校生も出始めているそうです。どんな活動を行っているのか、メンバーの学生にお話を聞きました。
発信することで知る福島の魅力
この広報サークルを大学1年生の時に立ち上げたのは、医学部3年の大橋由生さん。もともとアメリカの高校に通っており、日本で医師になろうと日本の大学に進学しようと思っていたときに、福島県立医大に帰国生などを対象にした「海外教育プログラム選抜」があることを知り、この入試制度を利用して福島県立医大に入学しました。
大橋さんは大学に入学した頃、福島について何も知りませんでした。逆にせっかく福島に来たのだから「自分が卒業する母校や福島の魅力をもっと知りたい、好きになりたい」という強い気持ちが芽生えました。さらに、大学には面白い先生がいるのに、医大を目指す高校生など大学の外の人にその面白さが伝わっていないと感じました。そこで考えたのが広報サークルの設立でした。学生が主体的に大学の学びや福島の医療を発信することで、自分たちも福島の魅力を知ることができると考えたからです。
大橋さんたちは「Youtube」にチャンネルを開設し、大学の先生にインタビューを行って、学問の面白さや先生の人となりを紹介しました。「放射線健康管理学ってなに?」、「看護学部の教授が作るお味噌汁」、「呼吸器外科の魅力」など、興味をひくタイトルの動画がずらりと並んでいます。
◆Youtubeチャンネル
さらに、大学のある福島市内だけではなく県内各地の医療現場も取材。特に奥会津地域で地域医療を行っている医師の方を取材した動画の取材は、大橋さんに取って貴重な経験になったといいます。
広大な面積があり、病院が少ない奥会津。地域の医療を守るため、患者さんの自宅を訪問し診療する「訪問診療」を行っている医師の方を取材しました。高齢の患者さんのご自宅への訪問に密着し、患者さんとのコミュニケーションや診療の流れを丁寧に伝えました。「福島は広いので色々な地域が困っている。そこをみんな仲間でカバーしたい」と語る医師の方のインタビューも収録し、福島の地域医療を支える大切さを伝えました。
子どもたちに医療の仕事を伝える
広報サークルでは、福島の子どもたちに医療の仕事について伝える活動も行っています。小学生に本物の電気メスやエコー、内視鏡などを触ってもらい、大学生がサポートしながら医療の仕事について伝えています。体験では子供向けの手術着を着るため子どもたちは「お医者さん」になった気分をあじわうことができ、1つのイベントに50人以上の小学生が参加したこともあります。
本宮市出身の国分陽菜さん(日大東北高校卒)は、この子ども向けイベントを福島県内各地に広めたいと考えています。
国分さん自身も幼少期に郡山市で開催された子ども向けのイベントに参加し、医療のお仕事体験をしたことが医師になろうと考えたきっかけの一つでした。イベントのスタッフを通じて子どもと接する楽しさを感じ、今度は自分自身の出身地でもある本宮市などでイベントを開催したいと考えています。
学生に福島の魅力を伝える
福島県出身の国分さんは、「広報サークルの活動を通して福島県立医大の学生に福島の魅力を伝えたい」と話します。福島県立医大の医学部の学生は福島県内出身者よりも県外出身者の方が多く、大橋さんのように海外から進学する学生もいます。
団体のインスタグラムでは、春夏秋冬のキャンパスの風景や県内でおすすめのお花見スポットやカフェの様子も発信をしてきました。
関東地方など福島県外から福島にやってきた学生たちに福島の良さを伝えることができれば、卒業後に福島で医師になりたいと思う人が増え、地域に貢献できると考えています。
国分さんは福島の魅力について、中通り・浜通り・会津と各地域に独自の魅力があること、福島の人の温かみ、そして東京とのアクセスのよさを語ります。このような福島の良さを県外出身の学生たちにも伝えていきたいと話します。
福島の医師不足を解決したい
広報サークルの代表、大橋さんは福島の「医師不足」についても学生の立場でできることをしていきたいと考えています。県土が広い福島県。大橋さんは都市部には医師がいる一方で山間部や町村部では医師が不足しており、医師がいる場所に偏りがあることを課題と感じています。
福島の医師不足を解決するために、今後力を入れていきたいのは国分さんと同様に「福島の魅力や特色を広く伝えること」です。特に医学部を目指す高校生に対しても「福島の魅力や特色の発信」は重要だと考えています。
大橋さんは、「医学部を持つ大学は各都道府県にあり、どの大学に行っても医師免許は取得できる。大学の特色や研究内容をしっかり理解して大学を選択するのも難しい。ではどうやって大学を選ぶかというと、それは地域の魅力だったり、福島が好きだからということではないか」と話します。
広報サークルでは今後、災害医療や地域医療など、福島県立医大の特色に関連する動画を公開していく予定です。代表の大橋さんは、「高校生のみなさんもぜひ福島県立医大に来ていただき、 一緒に福島の魅力を発信する側になりましょう」と話しました。
◆福島医大 広報サークル FMU PR-Lab インスタグラム
問い合わせ先
fmuprlab@gmail.com
◆探究キーワード「福島の医師の数」
令和4年の福島県の医療施設に従事する医師数は10万人当たり218.7人で全国第42位。また「医師の偏在」も課題となっています。東日本大震災の被災地である相双地区では震災前の水準まで医師数が回復しておらず、人口減少が進む南会津地域では、医師数が減少しています。
参考:福島県ホームページ