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高校生と考える南相馬の魅力 地元を知ることで広がる選択肢

福島県では、近年県外から移住する人が増えており、各地域で移住者を増やすための取り組みが行われています。南相馬市の「みなみそうま移住相談窓口 よりみち」でも、地域の活性化を目指し、移住促進や定住に向けた様々な企画が行われています。

「よりみち」は地域の高校生にも開放されており、高校生と一緒に地域の魅力を発信する活動も開催されています。高校生向けの企画を担当している伊藤ななさんに、なぜ高校生向けの企画を行っているのか、お話を聞きました。


「移住後の暮らしの充実」を目的に活動

「よりみち」は南相馬の活性化を目指し、市外からの移住を促進し、移住者の方が地域で長く暮らしていただくサポートをしている窓口で、JR原ノ町駅から徒歩5分ほどの場所にあります。

よりみちでの移住相談に加え、東京や仙台で南相馬の魅力を伝えるイベントを開催しています。イベントなどで南相馬のことを知り「実際に行ってみたい!」と思った方には、2泊3日で仕事や暮らしを体験できるプログラムも用意しています。さらに実際に移住を考え始めた人には、現地、オンラインの両方での移住相談を実施しており、どんな場所に住むのがいいか、どんな仕事があるかなどを丁寧にサポートしています。

さらに、南相馬に引っ越した後も地元の人たちと仲良くなれるように地域のイベントを開催し、暮らしやすい環境づくりをサポートしています。「移住」がゴールではなく、「移住後の暮らしが充実すること」を目指して活動しています。

この場所でコンシェルジュを務める伊藤さんは南相馬市出身。大学卒業後に地元に戻ってきました。伊藤さんと同じように、実際に移住を経験している人たちが自分の経験をもとに相談に乗っています。

地域を知ってもらうため、高校生の活動も支援

「よりみち」では移住者だけではなく地域の高校生にも南相馬の魅力を知ってもらい、地元に愛着を持ってもらおうと、地域の高校生向けのイベントも開催してきました。

昨年度は、南相馬の高校生と一緒に地元の魅力を発信するリール動画やサイトの制作を1年かけて行いました。そして今年度は、南相馬が今面白い地域になっていることを知ってもらおうと地域の大人や同級生を巻き込んだイベントを高校生と一緒に企画しました。

この活動のきっかけは、首都圏在住の大学生・社会人が南相馬市での起業を考える「南相馬市事業化実現プログラム」の参加メンバーから、「高校生が地元に愛着を持って、将来地元に帰りたいと思うようなきっかけづくりに取り組みたい」という事業提案があったことと、実際に高校生に話を聞きに行ったときの、地元の高校に通う放送部の高校生との出会いでした。
高校生に「今何をやりたいと思っているの?」と尋ねたところ、高校生たちはこう答えました。

「南相馬の魅力を伝えたい」

放送部の高校生は普段作品を制作するなど何かを作って発信しており、それを深めたいと思っていました。高校生の言葉に心動かされたプロジェクトメンバーは高校生のやりたいことの実現に協力するため、高校生と一緒に動画やホームページ制作を通じて南相馬の魅力を発信することを目指しました。

まず「よりみち」でワークショップを企画し、高校生と一緒に南相馬のどんな魅力を誰に伝えたいかを考えました。そして、「少年少女地元を冒険せよ‼︎」というキャッチフレーズのもと、高校生たちが実際に地元の飲食店を訪れて店主にインタビューをしました。ホームページでは、お店のおすすめメニューや誕生秘話、お店の雰囲気といったお店紹介の記事をつくり、Instagramでは高校生が自ら制作したお店紹介動画を発信しました。
参加した高校生からは「地元にこんな素敵なお店があるなんて知らなかったので、今度学校帰りに利用してみたい」、「私たち以外の高校生にもお店を知ってほしい」という声が挙がりました。

東京進学で気づいた南相馬の魅力

伊藤さん自身も大学卒業後、南相馬市にUターンしました。大学進学で地元を離れたことで、地元への見方が変わっていったと話します。

高校時代は地域に目が向いていたわけではなく、地元で働きたいという気持ちは強くありませんでした。東京の大学に進学し、地元に帰省したときに気づいたのは、駅前の通りの風景が変わっていることでした。

駅前に東京にあるような色々な人と交流できる「コワーキングスペース」ができたこと。「福島ロボットテストフィールド」のように、最先端の技術に触れられる施設ができたこと。起業家が増えていること。

こうした変化を見聞きするうちに、この変化に携わる仕事に就きたいと感じるようになり、伊藤さんは南相馬市にUターンすることを決めました。

南相馬市には大学がないため、高校卒業後に地元を離れる高校生も数多くいます。伊藤さんは南相馬にこんな生き方をしている大人がいる、こんな働き方があるということを伝えるため、高校生向けのイベントで自らの経験を伝えました。

このイベントには南相馬の魅力を発信した高校生も参加して自分たちの活動を発表しました。さらに参加した他の高校生にも「南相馬市でやってみたいこと」を付箋いっぱいに書いてもらったところ、アイデアが30個ほど集まりホワイトボードがいっぱいになったといいます。

伊藤さんは「大きな進路選択をする前に、地元のことを知り、自分は将来こういうふうになりたい、など視野を広げた上で選択をしてほしいという思いで活動しています」と語ります。

「よりみち」で高校生と大人をつなげる

「よりみち」は現在、高校生向けにも開放されており、探究学習のスペースや勉強場所として利用されています。ホワイトボードや付箋もあり、グループワークや話し合いの場としても利用できます。
伊藤さんは「探究活動の中で地域の大人に話を聞きたいという場面もあると思います。移住定住支援で築いたつながりを活かし、興味に合った方を紹介することができると思います。まずは気軽に『よりみち』に来ていただきたいと思います」と話しました。

◆探究キーワード「移住」

福島県のHPによると、令和5年度の移住世帯数・移住者数は過去最多の2,437世帯・3,419人(※)
福島県内各市町村でも移住担当の窓口があり、インターネットで様々な情報発信を行っているので地域の魅力を考えていくときにも参考になります。

「福島市 移住」や「南会津町 移住」など調べたい自治体と「移住」というキーワードで調べてみましょう。

参考)福島県ホームページ「移住相談件数、移住世帯数・移住者数について」

(※なお、この数値は、市町村窓口でのアンケート等により把握できた移住世帯数・移住者数を県が集計したものであり、実際の移住世帯数・移住者数の全数とは限りません。)



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