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風力発電の技術者を育てる「大人の学び舎」
地球温暖化問題への関心の高まりなどから、太陽光・バイオマス・風力など再生可能エネルギーを活用した発電方法に近年注目が集まっています。福島県内においても再生可能エネルギーの導入が進んでおり、中でも風力発電は、福島県内に風力発電に適した場所があることから今後さらなる導入が期待されています。こうした動きを受けて、風力発電を支える技術者の育成や、高校生など若い世代に風力発電に興味を持ってもらえるような取り組みも進められています。
今回は、風力発電専門のトレーニング施設であり、風力発電について多くの人に知ってもらう取り組みを進めている福島市の「FOMアカデミー」を取材しました。
風力発電の人材不足を解決するためのトレーニング施設
福島市の観光地・飯坂温泉から北に約10キロ。自然豊かな山あいに、風力発電専門のトレーニング施設、「FOMアカデミー」があります。廃校となった旧茂庭小学校の校舎が活用されており、校庭には実際の風車がおかれ、各教室や体育館は風力発電のメンテナンスを行う技術者のトレーニング施設として活用されています。
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現在、再生可能エネルギーを利用した発電方法は世界的に見てもニーズが高まっています。風力発電についても同様で、陸上に風車を置くだけではなく「洋上風力発電」など海上に風車を置いた発電方法も広がっています。一方で、風力発電を行うためには風車のメンテナンスが必要で、メンテナンスを行う技術者は世界的に不足しています。
福島県でも「2040年までに県内エネルギー需要の100%以上のエネルギーを再生可能エネルギーで生み出す」という目標を掲げており、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、県内の風力発電を支える人材の確保が課題となっています。そこで、地域、そして世界の風力発電を支える人材育成を目的に、2022年にFOMアカデミーが開校しました。
参考)福島県ホームページ
令和5(2023)年度の福島県内における再生可能エネルギー導入量について
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FOMアカデミーでは、世界の主要風車メーカーが実施するGWO(GLOBAL WIND ORGANISATION)のトレーニングが提供されています。
高所での作業訓練や火災が発生した時の初期消火訓練、けが人が発生した時の救護講習などの基礎トレーニングを中心に、より高度なレスキュートレーニングなども含め様々な講座が開かれています。日本国内の大企業や海外からFOMアカデミーに学びに来る受講生もおり、英語でも講習を受けることが可能です。
この場所は、かつて子どもたちが学んだ小学校。木のぬくもりが感じられるこの場所は今、風力発電で活躍する大人たちの学び舎となっています。
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世界を知る福島出身のトレーナー
FOMアカデミーでトレーナーを務めているのが浪江町出身の吉田敏光さんです。これまでアメリカの会社などで20年以上技術者として働いてきました。世界各地で風車のメンテナンスなどを行った経験を次世代に伝えています。
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海外の方と一緒に働いたことは、吉田さんが人材育成や教育に関わろうとしたきっかけになりました。
日本で働いているときは、会社が人を育て、技術を身に付けさせる文化であることを感じていましたが、本社がアメリカにある企業で働いてみると、アメリカは自分自身で技術を磨いた上で会社に入社する文化であることを痛感しました。
吉田さんは「アメリカでは、自分が身につけた技術が自分の武器になっていました。そういう中でずっと仕事をしてきて、技術やマシンも進化する中で、日本でも人材育成の取り組みを誰かがやらなくてはいけないというところを感じていました」と話します。
吉田さんは地元の福島県で風力発電の産業に関わる人材育成に力を入れているということを知り、福島で自分の事業を立ち上げ、FOMアカデミーに加わりました。
風力発電の魅力を多くの人に伝える
吉田さんたちが力を入れているのが、より多くの人に風力発電に興味を持ってもらうための取り組みです。定期的に施設の一般開放が行われており、施設内を見学したり、風力発電に関する展示を見ることができます。
また、吉田さんは「エネルギー・エージェンシーふくしま」と協力し、高校生に風力発電について知ってもらい、将来働く選択肢としてもらうため、福島県内の工業高校などで出前講座を行って来ました。
さらに、風力発電の仕事をより理解してもらうため、VR動画も新たに作りました。実際に風車の上に登った景色を体験できたり、風車を上から見下ろしたりと普段は見ることのできない景色を体験することができます。
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吉田さんは風力発電の魅力について「自然と常に向き合えるところ。風が吹かないと仕事ができない。逆に、風が吹き過ぎても仕事ができない。そして、風車の上からは誰も見ることができない景色を見ることができます」と話します。VR動画では、その「誰も見ることができない景色」を体験できるようになっています。
出前授業では初めに風力発電に関する基礎知識を伝え、その後VRを使った体験を通して、風車をより身近に感じられるようになっています。
風車は1~2万点の部品で作られており、その部品数は自動車部品と同じくらいの多さです。裾野が広く、電気や機械など高校や大学で学んだ知識を仕事に活かせることも伝えています。
活躍のフィールドは福島にも世界にもある
福島県では現在、各地で風力発電所の設置が計画されています。特に中通りと浜通りにまたがる阿武隈高地は風力発電に適する風が吹く場所であり、国内最大規模の風力発電所が発電をスタートする予定です。
FOMアカデミーでは地元の高校生に興味を持ってもらいながら、人材育成の取り組みを通して、福島県にある風車の管理・メンテナンスを福島県内の企業が担い、地域の産業を活性化させていく未来を目指しています。
風力産業で働くことの魅力について吉田さんは「風車というのは日本だけじゃなくて世界中に立っている。もし海外に興味があれば自分のスキルを活かして海外でも働くことができます。風力産業はこれからどんどん成長していく産業なので若者がチャレンジするには最高に面白い仕事です」と話しました。
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