#26 ペイフォワードカフェをはじめたきっかけ。
「100円いただけませんか。」
数年前のある日の夕方、福島駅付近で何度か見かけていたホームレスの方に声をかけられました。
「おにぎりを買いたいんです」
そこでぼくはこう伝えました。
「一緒におにぎりを買いに行きませんか?」
その方と一緒に、近くのコンビニまで歩を進めました。
おにぎりと水と、ついでに自分の分も買って、食べながら会話しました。
その中に、「自分は老齢年金をもらえるはずだった」という話がありました。
詳しく尋ねると、雇い主に厚生年金に加入していると言われていたのに、解雇時には加入していないことが分かったとのことした。
規定年数以上年金を払っていないと老齢年金は受け取れません。
そのため、受け取れず、家もないのでこうしているのだというのです。
一方で、当時、年金制度が改正され、老齢年金受給要件が25年以上から10年以上に引き下げになった直後でした。
ぼくはその情報をお伝えしました。
「ありがとう、今度市役所に行ってみる」
そう応じてもらえ、その方と別れました。
それ以降、その方を見かけることはただの一度もなくなったのです。
出会わなくなってからしばらく経ちました。
「もしかしてあの時情報提供したことで、年金をもらえ、住むところが確保できたのではないか」
そう感じるようになります。
自分のしたことは「おにぎりを一緒に食べたこと」と「情報をお伝えしたこと」の二つ。ほんのちょっとしたことです。
それによって、もしかしたら状況が好転したのかもしれない。
その可能性を感じた時、ふと、自分自身が満たされた気持ちになりました。
こうした、ほんのちょっとの「やさしさ」が、
見知らぬ誰か
生きづらさを抱える方々
に届くことが当たり前になったらいいな。
キモチを送る側も
送られる側も
幸せになったらいいな。
そんなことをふと感じました。
いただいた恩を、くれた人に返すのではなく別の誰かに送る—これをペイフォワード(恩送り)といいます。
この考え方をカタチにしようと思い立ち、気の置けない仲間と共に、2019年5月5日、ペイフォワードカフェを発足しました。
このカフェでは、飲食物は全て無料で提供されます。
以前カフェを訪れたお客様からのギフトとして提供されるためです。
自分のためにお金を支払うのではなく、まだ見ぬ次のお客さまのために、心のこもったメッセージと、お金を置いていきます。
飲食物に値段は設定されていないので、任意の金額をギフトできます。
極端に言えば、お支払いいただかなくても構いません。
多くの人々が支払わなければ、次のカフェが開催されない—それだけのことです。
スタッフとお客さまに垣根はありません。
スタッフはぼくも含め全員ボランティア。
以前お客さまとして訪れた方がスタッフとして加わってくれたこともあります。
ペイフォワードカフェは、やさしさの循環によって開かれるカフェです。
前のお客さまからの「やさしさ」とともに、真心込めたコーヒーを淹れさせていただきます。
開催は不定期です。
もしよかったら、気軽にお立ち寄りください。