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#154 やさしさを送るカフェ(民報サロン第3回)

2020.2.21 福島民報 民報サロン第3回 全文
「やさしさを送るカフェ」

「100円くれませんか」

3年前のある日の夕方、福島駅付近で何度か見かけていたホームレスの方に声をかけられました。

「おにぎりを買いたいんです」とのこと。

そこで僕は「一緒におにぎりを買いに行きませんか?」と近くのコンビニまで歩を進めました。

おにぎりと水と、ついでに自分の分も買って、食べながら会話しました。

その中に、「自分は老齢年金をもらえるはずだった」という話が。

詳しく尋ねると、雇い主に厚生年金に加入していると言われていたのに、解雇時には加入していないことが分かったとのこと。

規定年数以上年金を払っていないと老齢年金は受け取れません。
そのため、受け取れず、家もないのでこうしているのだというのです。

一方で、当時、年金制度が改正され、老齢年金受給要件が25年以上から10年以上に引き下げになった直後でした。

その情報をお伝えすると、「ありがとう、今度役所に行ってみる」と応えてもらえ、その方とその場で別れました。

それ以降、その方を見かけることはただの一度もなくなったのです。

 出会わなくなってからしばらく経ち、僕は「もしかしてあの時情報提供したことで、年金をもらえ、住むところが確保できたのではないか」と思うに至りました。

自分のしたことは「おにぎりを一緒に食べたこと」と「情報をお伝えしたこと」の2つ。

ほんのちょっとしたことです。

それによって、もしかしたら状況が好転したのかもしれない。その可能性を感じた時、ふと自分自身が満たされた気持ちになりました。

こうした、ほんのちょっとの「やさしさ」が、見知らぬ誰か、ひいては生きづらさを抱える方々に届くことが当たり前になったらいいなあ。

キモチを送る側も送られる側も幸せになったらいいなあ。

そんなことをふと感じました。

いただいた恩を、くれた人に返すのではなく別の誰かに送る—これをペイフォワード(恩送り)といいます。

この考え方をカタチにしようと思い立ち、気の置けない仲間と共にペイフォワードカフェを始めました。

このカフェでは、飲食物は全て無料で提供されます。以前にカフェを訪れたお客様からのギフトとして提供されるためです。

自分のためにお金を支払うのではなく、まだ見ぬ次のお客さまのために、心のこもったメッセージと、お金を置いていきます。飲食物に値段は設定されていないので、任意の金額をギフトできます。

極端に言えば、お支払いいただかなくても構いません。多くの人々が支払わなければ、次のカフェが開催されない—それだけのことです。

スタッフとお客さまに垣根はありません。
スタッフは僕も含め全員ボランティア。

以前お客さまとして訪れた方がスタッフとして関わってくれたこともあります。

ペイフォワードカフェは、お金の循環ではなく、やさしさの循環によって開かれるカフェなのです。

3月22日に、福島市本町にある、障がいを持つ方々がいきいきと働くまちのパン屋さん「まちなか夢工房」で第3回目のペイフォワードカフェを実施します。

もしよかったら、ふらっと立ち寄ってください。
前のお客さまからの「やさしさ」とともに、真心込めたコーヒーを淹れますよ。

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