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ふくしデザインゼミの2年間の足どり【前編・2022年度】

2024年8月から関西中心に、「ふくしデザインゼミ ローカル -TAKASHIMA 2024- 」、2024年9月から関東中心に、「ふくしデザインゼミ 2024」、2つのデザインゼミが開講します!

フライヤーやpeatixを見てくださった方のなかには、「具体的にはどんなことをするんだろう?」「講師の方々はどんな人たちなんだろう?」「大事な時間とお金を使って、参加する意義や価値、ホントにあるかな?」きっといろんな疑問を抱いておられる方もいるはずです。
ゼミ生募集期間中、noteで、できる限りみなさんの疑問にお答えし、企画の解像度をあげていきたいと思っています!

この記事は、ふくしデザインゼミの「これまで」からゼミを解剖する第一弾。初年度の様子ををご紹介していきます。


ふくしデザインゼミとは?

ふくしデザインゼミは、様々なバックグラウンドをもつ学生や若手社会人が、福祉法人を舞台に、分野や領域の垣根を越え、実践的に福祉を学ぶプログラム。東京・八王子に本部を置き東京都・静岡県に26もの拠点をもつ「社会福祉法人武蔵野会」と、一般社団法人ぼくみん(旧・SOCIAL WORKERS LAB)との協働で、2022年8月に立ち上がりました。

1年目は、福祉やデザインに興味のある学生が参加。「ふくしに関わる人図鑑をつくろう」をテーマに、福祉の現場で働く人に留まらず、「ふだんの、くらしの、しあわせ」に関わる人を広く「ふくしに関わる人」と捉え直し、取材しながら、福祉に向きあいました。

8ヶ月にわたる活動のプロセスとアウトプットは、『ふくしデザインゼミ 武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』という一冊の本にまとまっています。この記事ではダイジェストで1年目を紹介しますので、より詳しく知りたいという方は、書籍をご覧ください!

1年目のゼミ生のみなさんを中心に、最初の集合写真

取材、執筆、編集。出会いと葛藤のプロセス

9月17日。武蔵野会の本部で行われたキックオフ。まずは、編集者で講師の小松理虔さんから、取材のレクチャーを受けます。1時間という限られた時間で「その人らしさ」を引き出すための、立ち振る舞い、言葉の選び方、おもしろがり方。それは、福祉の支援において、いかに、自分自身と目の前の人を捉え、向き合うのか、という問いと通じるものではないか。初日からガツンと大きな問いを食らって、ヘロヘロになる一日を過ごしたところから、「ふくしデザインゼミ」は本格的に始動しました。

少し日を空けてスタートしたのは、「ふくしに関わる人」への取材。福祉施設へ、デザイン事務所へ、町工場へ、遠くは伊豆大島へ!ふくしに関わる人のつながりは、武蔵野会の福祉施設から地域へと広がっていきます。取材のレポートはふくしデザインゼミのnoteにも公開しています。

取材を終えたあとに行うのは、編集会議!取材した方を表す要素を6つにしぼり、象徴的なキャッチコピーを考えます。同じ時間を過ごしていても、捉えたものはメンバーによってさまざま。小松さんのサポートを受けながら、みんなの視点を活かして「その人らしさ」を凝縮した1ページの構成を考えて、その人を編集。そのうえで、執筆にとりかかりました。

編集会議の様子

学生たちは、図鑑記事を執筆するだけでなく、この過程で気づいたことや考えたことを言葉にするエッセイ執筆にも取り組みました。その人のものがたりを切り取って表現することへの葛藤や、福祉、デザイン、編集といったあたらしい視点に触れた衝撃を、リアルに書き留めた個性豊かなエッセイに、「デザインゼミ」が立ちのぼっているような気がします。

全部で取材したのは18人。取材活動を一通り終えたあとに行ったのが相関図の作成。取材を通して出会えた方々のつながりの網目を「可視化」してみると、頭でもわっとかんがえていたものが、すっきりとみんなで共有できるものに。あ、これもデザインの力?!相関図作成はデザインの可能性を深く感じるワンシーンだったように思います。

武蔵野会に関わる人相関図

そしてついに、8か月間のプロセスを経て、冊子『ふくしデザインゼミ 武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』が完成!全76ページ、図鑑・エッセイ・講師の対談など、プロジェクトのプロセスをふりかえる1冊になりました。

『武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』

「ふくしデザインゼミ展」も開催!

さらに、2023年3月には、これまでのプロセスをより多くの方と共有し、「ふくし」について考える機会として、「ふくしデザインゼミ展」を東京都八王子市にて1週間にわたって開催しました。

「ふくしデザインゼミ展」のフライヤー

「ふくしをひらく」をテーマに、鑑賞者がふくしデザインゼミを追体験できるような展示に加え、「ふくしに関わる人」をゲストに11のトーク企画を開催。のべ446名の方に足を運んでいただきました!展示会機関に向けて、広報を口実に、八王子をはじめ、共感していただいた飲食店や書店にフライヤーを配架させていただきながら、まちのなかに「ふくし」との接点を広げていったりもしました。ふくしとの出会い、出会い直しをたくさん生むことができ、「ふくしデザインゼミ」の可能性を確信する充実した1年目となりました。

展示会場全体の様子
トークコレクションの様子

一年間のプロセスは、プログラム全体として、グッドデザイン賞をいただきました!『ふくしデザインゼミ 武蔵野会に関わる人図鑑をつくろう』は、オンラインほか、京都や東京の書店で販売中です。

「ふくし」とわたしたちのこれから
 実践的な学びの場

多様な領域の学生が、冊子の作成とふくしデザインゼミ展の広報に関わり、協働しました。その過程は、武蔵野会の理念「自分を愛するように、あなたの隣人を愛せよ」で大切にされている「自己覚知」と「相互変容」の連続ともいえるものでした。

例えば、取材対象者のその人らしさを表すのに「どうしてこの言葉を選んだのだろう」と考え、自分の認知や表現に気づいていきます。人をある一面だけを切り取って語ることの暴力性に気づいたり、自分と異なる他者を表す言葉が自分のなかにはないことに悩んだりしたメンバーもいました。

あるメンバーは、そのように自分に向き合い続けたことで、言葉にならない「モヤモヤ」も含めて他者にひらき、共有するようになりました。福祉の現場で働く人たちも私たちと同じように悩みながら生きていることを知って、現場で働くことを決めたメンバーもいました。

こうした既存の枠組みを問い直していくプロセスを通して、メンバーの思考が自由になり、ふくしデザインゼミを伝える範囲を広げていったことで、福祉と新たな人との出会いがいくつも生まれました。メンバーの姿勢がよりオープンになっていくことによって、ふくしがひらかれていったのです。

まちなかにも出かけ、沢山のお店や地域の方と出会いました!

「ふくしをひらく」とは?

ふくしデザインゼミ展でいただいた感想に多かったのは、福祉との距離が変化した、というもの。

「福祉というと、何か、どこか、自分とかけ離れた、冷めた存在だと捉えがちですが、本質的に人と人の対話の在り方でしかないことに気づかされました。」

「私自身は4月から新社会人として福祉関係のお仕事に就くわけではないのですが、心の片隅に〈ふくし〉をおいてお仕事に励んでいこうと思いました。」

来場者のコメントノートより

ふくしデザインゼミでは、サービスや制度を指す狭義の福祉と、「ふだんの、くらしの、しあわせ」の頭文字をとった広義のふくしを、使い分けて表現をしています。そのやわらかさや、そこに掛け合わされた、「デザイン」「ローカル」といった言葉、そして「ふくし」を図鑑づくりの実践のなかで咀嚼し、その体験を共有したいと絞り出されたゼミ生一人ひとりの言葉たちが、福祉と来場者の懸け橋となったのだと思います。

加えて、武蔵野会の職員の方や、福祉現場で働く方からは、福祉を領域の外側から捉え直すことができたという声もありました。

「人がその人らしく生きられる時間を、少しでも、一瞬でも、生きるって楽しい!!と思える場をつくりたいという気持ちを、改めて奮い起こすことができました。ふくしをひらくために法人が出来ること…、というより、今現場で出来る事を、現場の職員達と、考え、動きたい。そう思ういい時間でした」

来場者アンケートより

ふくしデザインゼミの冊子制作から展示までのプロセスを通じて、学生が福祉やデザインといった領域を行き来し、福祉/ふくしへの回路がひらかれていく。「ふくしデザインゼミ」には「ゼミ生」の存在が不可欠。

2期目のふくしデザインゼミは、さらに領域やフィールドが拡大し、「ふくしをひらく」実践を繰り広げました。
そのプロセスは次回の記事でご紹介します。ぜひご一読ください。

              * * *

今年行われる2つのふくしデザインゼミは、ただ今ゼミ生を募集中!
みなさんのエントリー、お待ちしております!

           ▽お申込みはこちらから▽

「ふくしデザインゼミ ローカル」

開講:8月24日∼11月30日 募集〆切:8月4日

「ふくしデザインゼミ 2024」
開講:9月14日∼12月15日 募集〆切:8月29日

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