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僕と福祉とまちづくり|安島裕大|2022-23 essay 04

「ふくしデザインゼミ」は、福祉やデザインに興味のある学生たちが、実際の福祉法人を舞台に、分野や領域の垣根を越え、実践的に福祉を学ぶプログラムです。いまはまだ福祉の外側にいる学生たちが、福祉施設をめぐり、その担い手と対話を重ね、図鑑記事を執筆する。編集やデザインの考え方を活用しながら、より本質的なかたちに整えてゆく・・・。このエッセイは、そのプロセスを通して、試行錯誤を重ねた学生たちの思索の記録です。


福祉との馴れ初め

福祉に興味を持ったのはソーシャルワーカーを目指す友人との出会いがきっかけだった。当時の僕は福祉に疎くソーシャルワーカーが何なのかさっぱりだった。そこで知り合ったばかりの友人に根掘り葉掘り質問した。

友人の説明を僕なりにざっくり要約すると、ソーシャルワーカーは、まちのなかで人々が抱えるさまざまな生活上の課題に寄り添い、よりよく生きられるように伴走する仕事だ。「それって、まちづくりじゃん!」。友人の話を聞きながら直感的にそう思った。

自分の関心分野であるまちづくりとの重なりが見え、福祉をグッと身近に感じる瞬間だった。まちづくりにとって福祉の視点は重要かもしれない。そう感じ、福祉の世界にアンテナを張るようになった。

福祉デザインゼミと初めての取材

そんな折にSOCIAL WORKERS LAB(以下、SWLAB)に出会う。トークイベントへの参加を皮切りに、あれよあれよとSWLABに引き込まれていき、気がつけば福祉施設への取材に同行することになった。しかも、どうやら僕が取材と記事執筆を担当するようだ。

取材当日、編集者の小松理虔さんから取材の心得をいただいた。

「取材が目的だけど、取材を通じて相手と過ごす時間を楽しむことが大切。」

理虔さんの言葉を胸に取材にのぞんだ。そのおかげもあってか、話題は人生や福祉への思いなどへと深まっていった。取材が終わっても名残惜しく、そのまま飲み屋に行って続きを聞きたくなったほどだ。

伊藤さんへ取材する僕(右)

取材した伊藤さんはコロナを機にIT業界から福祉に転職した。パソコンではなく、人に向き合う福祉には正解がない。独りよがりにならないように日々内省を重ねながら、ベストな支援を探求し続けているそうだ。利用者さんを変えようとか、思い通りに動かそうとコントロールするのではなく。どうすれば利用者さんがその人らしくあれるかを考え、環境を整えるのが伊藤さんの支援だ。

まちづくりと福祉

環境に人を合わせるのではなく、人に寄り添い環境を整える。伊藤さんから学んだ福祉の考えは、まちづくりにも通じると思う。福祉もまちづくりも結局は人に寄り添い、生活を支えることにおいて同じなのだ。

しかし、これまでのまちづくりはどれだけ人に寄り添えていただろうか?まちの整備計画は行政やデベロッパーなど一部の人たちの間にとじられ、住まう人たちがまちのあり方に介入する余地はあまりない。誰かがつくったもの、そんな感覚がまちと人との距離を生んでいるように思う。防災や防犯など安全面での人への配慮は行われてきたかもしれない。でも、安全のためにと管理を強めることでむしろ人々の主体性を奪っているとも思われる。

取材後、まちを歩く

目指すべきは、誰かが勝手に決めるのではなく、ともにつくる。人々が納得して未来のまちのあり方を選びとる手助けをする。そんな、人に寄り添うまちづくりだと思う。ただし、寄り添うとは言え、すべてを受け入れるのは違うだろう。これは別の取材先で出た話だが、支援において、いつも利用者さんに従うのではなく、ときには利用者さんが他の可能性を選べるように支援者から提案をすることも大切だそうだ。まちづくりでも、人々の意見を何でも受け入れるのではなく、対話を重ね、時には人々の認識の変容を伴いながら、未来のまちのあり方への共通認識をつくっていくことが重要だろう。

福祉に出会い、自分にとってのまちづくりを改めて考えさせられた。福祉に触れて学んだ「人に寄り添う」視点は僕のまちづくり観を確かに豊かにしている。そして、この視点はまちづくりだけでなく、人の関わることであればどんな分野においても大切なものだろう。人に寄り添う。見失ってしまいがちだけれど大切なことを福祉は思い起こさせてくれる。そんな福祉にあなたも触れてみてはいかがだろうか?

|このエッセイを書いたのは|

安島 裕大(あじま ゆうだい)
国際基督教大学教養学部3年

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お知らせ ~ふくしデザインゼミ展を開催します!~

ふくしデザインゼミ展は、福祉と社会の関係をリデザインする実践的な社会教育プログラム「ふくしデザインゼミ」の成果を、さまざまな形で鑑賞・体験する企画展。ゼミ生が制作した『ふくしに関わる人図鑑』に関する展示を中心に、トーク、ツアー、さらには「仲間さがし」に至るまで。福祉を社会にひらく、さまざまな企画を予定しています。

本エッセイを執筆した安島くんは、3/26㈰ 10:00-11:30 に開催する「ふくしデザインゼミ 参加学生の本音トーク」に登壇予定です!

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