「福祉プラスのまちづくり コンセプトブック制作ワークショップ vol.4」を開催しました!
文:田辺萌(たなべ・もえ)
2024年1月21日(日)に草加市高砂コミュニティセンターで「福祉プラスのまちづくり コンセプトブック制作ワークショップvol.4」を開催しました。10月から始まったこのワークショップも気がつけば4回目、折り返し地点を迎えました。雨の降る中、今回は九州からの特別研究員も交えてコンセプトブックについて意見を出し合ったり、これから控えている各イベントチームに分かれて研究を進めたりしました。天候も関係なく熱く盛り上がりを見せていた当日の様子をレポートしていきます。
まずは、これまでのワークショップと同様に近くの方と5人前後のグループを組み、自己紹介を行います。当日は雨で足元の悪い中、今回も大勢の方にご参加いただきました。1週間前の1月13日に開催されたトークライブにいらした方も、久しぶりの方も、初めましての方も、最近の出来事や感じたことをお互いに共有。第4回目のワークショップも和やかな雰囲気でスタートしました。
前回までの振り返り
ワークショップは株式会社ここにあるの大森亮平(おおもり・りょうへい)さんによって進行されました。前回は冊子の「ビジュアル」について考え、心にささる、あるいは心をくすぐられる表現やデザインを探っていきました。参加者からは、惹きつけられるような写真であったり、あえて分かりにくくしたり、「手に取ってみたくなる」デザインが良いのでは?との意見が多かったように思います。ワークショップの後半は、各研究チーム(①冊子作り・広報②ふくフク商店街③ふくフクフェス)に分かれてコンテンツ内容を相談したり、今後の動きの確認したり、これまで膨らんでいた妄想がぼんやりとかたちになってきたことを確認しました。
「ふみだす」と「ふくらむ」
今回のテーマはいよいよ冊子の内容とコンテンツについて。3回目のワークショップ終了後には、冊子づくりチームで一度オンラインでの研究会が開催されたようです。その様子を大森さんから共有していただきました。
まず、冊子のあり方については大きく分けて2つ意見が挙げられました。1つ目は、読んだ人の「アクションを起こすきっかけにしたい」ということ。2つ目は草加でどんなことが起きているのかを可視化し、それぞれの活動の隙間が埋まっていくような情報を「困っている人に届けたい」ということ。はじめはこの2つの意見をまとめようと考えていたのですが、「どちらも大事、じゃあどちらも含めよう!」と、「ふみだす」と「ふくらむ」をテーマにして両面に表紙をつくるアイデアが生まれたようです。第4回目のワークショップでは、このテーマを元にコンテンツを検討していきました。
「ふみだす」ことは、目に見える行動だけとは限らない
ワークが始まる前に、参加者の方からいくつか意見を伺いました。その中にはこんな声も。「『ふみだす』という言葉が少し強いなという印象を受けました。何となく手にとった人が、『踏み出さなきゃいけないのか』というプレッシャーになるような気がしています。それよりも、興味とか関心が無かった方に手に取ってもらい、その先で何かを感じてもらえるような事が書かれていると良いのかなと思います。アクションといって思い浮かぶような実際の行動ではなくて、頭の中でもやもや考えてみたりとか、気がつくことが増えたりとか、そういうこともアクションなのだと伝わるような内容になれば良いなと思います」と。目に見える形の行動ではなく、考えや気持ちの変容も大事なアクションの1つであり、その「きっかけ」となるような冊子にしていきたいと、会場全体で共有できたのではないかと思います。
会場全体で方向性を共有できたところで、今回のワークに移ります。「ふみだす」と「ふくらむ」のテーマに沿って、思い思いに感じたことをふせんに書き込んでいきます。青ふせんには、「ふみだす」テーマに、各企画当日やプロセスの中で印象的なできごと/「ふくフク研」で個人的に新しくチャレンジできたことや気持ちの変化など。黄ふせんには、「ふくらむ」をテーマにこれまで草加で生じていた「ふくらむフクシ」な事例/「ふくフク研」に関わり始めてからフクシがふくらんだ瞬間などを記入していきました。
最初に10分間、それぞれの活動や気持ち変化などを振り返る時間が設けられ、その後小グループでシェア、最後に各グループの内容を全体でも共有します。同じイベントに参加したり同じものを見たとしても、背景の異なる参加者同士、感じたことや捉え方はさまざまなはず。ですが、ふせんに想いを綴る姿は、みなさん共通して温かで前向きさを含んでいるように感じました。
沢山のふせんが貼り出されペンが止まり始めた頃、いよいよシェアタイムとなりました。参加者のみなさんが考える「ふみだす」「ふくらむ」についてお話を聞いていきます
だれもが「ありがとう」と言えて、言ってもらえる場所にしたい
つながりが膨らんだ経験について想いを述べてくれたのは、以前からふくフク研のイベントにも協力してくれている20代の女性参加者。彼女は自身の体験をこのように語ります。
「元々は外に出る事があまり好きではなく、友達もすごく少なかったのですが、ふくフク研に来るようになってからは、色んなお仕事をしている色んな世代の方とつながることが出来ました。そのつながりが、次はこのイベント、この場所に行ってみようと思うきっかけになり、どんどん人と繋がるハードルが低くなっていきました。そうするうちに友達も増えて来て、『ありがとう』と言えたり、言ってもらえたりする関係になっていきました。草加をそんなだれもが『ありがとう』と言えて、言ってもらえる場所にしたいです。自分も『ありがとう』と言われたいなと思うこと、そういった想いで地域に飛び出していくのが、『ふみだす』に繋がっていくのかなと思います」
彼女の丁寧に言葉を紡ぐ姿と心温まるエピソードに会場内は優しく柔らかな雰囲気に包まれました。目の前の知り合いや友達のために何かしたい、という想いや感謝の気持ちは自然と笑顔の連鎖を生むのだなと、この場からも感じることができました。
何かに挑戦したいと思っていても、実際にどうして良いか分からなかったり、行動に移すまでの勇気が出ないといった方は多いと思います。もやもやを感じていることがまず小さなアクションであり、その密かな想いを受け止めてくれる場所が、ふくフク研のイベントだけでなく、まちのあらゆるところに膨らんでいけば良いなと感じました。「この人なら誰かを紹介してくれる」「ここに行けばどうにかしてくれる」スポットが点在する事も大事ですが、悩んでいる目の前の人に対して、1人1人がすでに持っている繋がりを小さくても良いからふくらませる事で、人とつながったり行動を起こすことに対するハードルを下げてくれるのではないかと思います。その結果、より多くの人が一歩を踏み出しやすくなり、もっと多様で素敵な景色が広がっていくのではないでしょうか。
また参加者の中には、今回のワークショップを通じて、一歩を踏み出そうと気持ちの変化があった方もいらっしゃいました。この方は吃音のある小学5年生をお子さんに持ち、いつか子どもと一緒に吃音カフェをやりたいと思っていたそうですが、タイミングがなくこれまでを過ごしていたと言います。しかし、このワークショップに参加したことでふくフク研を知り、「やるなら、ここしかない」と思ったとのことでした。「踏み出したい」という想いを、だれひとりとして否定せず、会場からは後押しの拍手が響いていました。
プロジェクトチームに分かれて研究活動!
第2回目のワークショップで結成された3つのプロジェクトチーム(①冊子作り・広報②ふくフク商店街③ふくフクフェス)に分かれて、進捗状況や話し合いを行いました。各イベントも2月、3月と近づいてきており、話し合いの内容も回を重ねるごとに具体的なものになっています。コンセプトブックやイベント作りは、筆者を含めて初めての方が多く手探りではありますが、遠回りしたから見つかる出会いや想い、築かれる信頼のようなものがあると思っています。
架空で実態のないふくフク研もこれまで活動に関わってくださったみなさんにより、「不慣れなことや新しいことも、ここならトライして大丈夫」という安心感を育んで、確実にふくらんでいると感じます。そんな場と想いがより多くの方に届けられたら、もっと生きやすく、「だれもが幸せな」あしたの暮らしと福祉のカタチに近づけるのではないかと思います。
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