ふくらむフクシ研究所の今年度の集大成!「ふくフクフェス2024」を開催!
文:大森亮平(おおもり・りょうへい)
2023年7月から活動をはじめた「ふくらむフクシ研究所(略称、ふくフク研)」。草加市内の障がい福祉事情をヒアリングした市域調査にはじまり、活動を記録するためのコンセプトブック制作ワークショップや福祉をもっと身近に感じられるためのイベント(トークライブ、映画祭、商店街を使った就労体験)など、さまざまな活動を行ってきました。
そんなふくフク研の5つ目の企画として、3月20日の春分の日に実施したのが「ふくフクフェス2024」。これまでふくフク研に関わってきてくれた多くの方々に協力していただき、まさに集大成とも呼べるイベントとなりました。
当日は向かいにある大学の卒業式とかぶって道路が大渋滞することが予想され、しかも天気は昼過ぎからの雨予報。屋外の大規模イベントとしてはかなり厳しい条件での開催ではありましたが、蓋を開けてみれば来場者は3,000人。関係者の方々からも「来年もやりましょう!」と絶賛された「ふくフクフェス2024」は一体どんな企画だったのか。出店、体験、ステージの各コンテンツに分けて、振り返っていきたいと思います!
ピンチを受け入れたらチャンスに変わっていた【出店ブース】
まずは公園内をぐるりと囲んだ出店コンテンツから。飲食やワークショップはもちろん、本屋さんやキッチンカーなど約60もの店舗が出店。マルシェやマーケットの多い草加市ではお馴染みのベテラン出店者の方もいれば、コンセプトブック制作ワークショップの参加メンバーや市域調査で関わった企業・団体、そして市内および近隣市町村の福祉事業所など、さまざまなレイヤーの出店者さんがごちゃまぜに軒を連ねました。
なかでも盛り上がっていたように感じたのが「こどもフリマ」ブース。「子どもが成長していらなくなった洋服やおもちゃを売っているブース」ではなくて、子どもたちが自分たちでつくったものや、売りたいものを出店しているという、大人気企画。「いらっしゃいませー!」「◯◯安くしてまーす!」などと子どもたちの元気な声が会場に飛び交い始めると、その場にいた人たちの表情がどことなく緩んだような気がしました。ところが「こどもフリマ」ブースが賑わい始めたのは、フェスの開始予定時刻より30分早い10時30分。一体何が起きていたのでしょうか。
実は子ども店長を募集した段階で開始時間を間違えており、変更するのも大変だからとフェスよりも30分早く始めることに。結果的にフェスの開始とともに大勢の来場者で会場内が賑わい、好調な駆け出しをアシストした「こどもフリマ」ブース。失敗もうまいこと活用しちゃうのが、ふくフク研の極意なのです。
必要なのは、特別な体験じゃない【体験ブース】
おしゃれを楽しめるブースにキャンピングカーの中で遊べるブース。視覚障がいのある方が進行する地図づくりワークショップなど、さまざまな体験企画が充実していた「ふくフクフェス2024」。その中でも最大規模を誇っていたのが、「インクルーシブ運動場」をはじめとする運動系コンテンツ。車いすバスケの競技用車両の試乗体験や卓球バレーにモルックなど、体の強さや体力をあまり必要としない、みんなが参加しやすいスポーツが集結しました。
人形をジャイアントスイングで投げ飛ばし、その飛距離を競うという攻めたものも…。
体験コンテンツの中でもひときわ注目を集めていたのがポニーの乗馬体験。気付けば長蛇の列ができており、出店ブースと対をなすように公園内をぐるりと順番待ちの列が取り囲んでいました。
乗馬体験には当事者の方も数多く参加。一般的な乗馬体験では断られてしまうことも多い医療的ケアの必要なお子さんや知的障害のある方も乗馬することができ、貴重な経験に大興奮だったんだとか。サポートスタッフとして参加していた全盲の方は乗馬こそしなかったものの、手ざわりでポニーを楽しむなど、どうやら体験方法にも多様性が生まれていたみたいです。
とにかく集客を優先しようとSNS映えを狙ったり、一過性のコンテンツでイベントを盛り上げたりすることが多い印象の昨今。たくさんの人に来てもらえるような話題のコンテンツを用意するのではなくて、来た人がもれなく楽しめるようにイメージをふくらませておくことで、結果的により多くの人に届けることができるのかもしれません。そんな大事なことを乗馬体験から学べたような気がしました。
ステージにあがれば障がいも天気も関係ない【出店ブース】
最後に紹介するのはステージコンテンツ。サザエさんにも登場したという三味線奏者の演奏や、手話パフォーマンスに青空ヨガなど、豪華ラインナップが会場を盛り上げました。その他にもゲリラライブやゲリラ宣伝が行われていたのも、ゆるさを許容する「ふくフクフェス2024」ならではでしょうか。
大人たちの安定したパフォーマンスに負けず劣らず、ここでも盛り上がりを見せていたのが子どもたちによるステージ。
1つ目は「みんなでダンス」の時間。「障ががあってもなくても、みんな踊りたい!」という声を元に実行委員会で企画したこちらのコンテンツ。「果たしてみんな踊ってくれるのだろうか...」と一抹の不安を胸に抱えたまま当日を迎えましたが、ステージ上に突如現れた謎のダンスリーダーを中心に、子どもも大人も音楽に身を委ねました。
2つ目は放課後等デイサービスに通う子どもたちによるバンド演奏。人気アニメのオープニング曲で子どもらしさを演出したかと思えば、10年ほど前にポッキーのCMで話題になったあの曲まで、幅広い選曲で会場を掌握します。演奏中にトラブルが発生しても「何か質問ある人いる!?」とすかさず間をつなぐ大人顔負けの柔軟さを見せましたが、投げかけられた質問は好きなアニメについて。子どもらしさと大人っぽさを行ったり来たりすることも、子どもバントの1つの魅力と呼べる気がします。
お客さんとしてステージを取り巻いていた子どもたちも音楽に合わせて拳を突き上げる見事なノリっぷりを披露し、興奮冷めやらぬままラストステージを飾りました。
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ここまで出店・体験・ステージの3つ視点から振り返ってきましたが、いずれも「ふくフクフェス2024」のごく一部。他にも「もっとお客さんが少ないと思っていた...」という正直すぎる感想をもらうことがあれば、「どこを見ても当たり前に非日常で、車椅子に乗っていても好奇な目で見られることがなかった」といった驚きの声も。最初から最後まで会場にいた筆者ですら見て回れなかったブースがあるほどなので、ここでは取り上げきれなかった物語が他にもたくさん生まれているはず。
ふくフク研にとって来場者が3,000人近くいたというのはただの事実で副産物。フクシをより身近に、日常の景色をもっと多様に。そのための心地よさとおもしろさのバランスを追求していくふくらむフクシ研究所の取り組みはまだまだはじまったばかり。来年度もじんわりと心に染み渡っていくように、研究活動を続けていきたいと思います。
「草加で始まったフクシの活動。ちょっとおもしそうかも...」と思ったそこのあなた!次は見習い研究員として参加してみませんか?
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