ガラパゴス諸島の不思議と生命のひみつ①｜福岡伸一 講演

2021年に朝日カルチャーセンターにて開催された、福岡伸一による講座（全2回）を編集して掲載します。

みなさん、こんにちは。福岡伸一です。

2021年6月に『生命海流 GALAPAGOS』を発刊いたしました。これは、私が子ども時代からずっと憧れていた、ガラパゴス諸島に探検に行った旅行記です。ガラパゴスで学んだこと、あるいは気がついたこと、生命の問題、進化の問題など、心置きなく書いた本です。

「こんなコロナの蔓延しているときに、ガラパゴスみたいな所に旅に行って……」というお叱りの声があるかもしれませんけれども、私がガラパゴスに行ったのは、ちょうどこのコロナパンデミックが世界を覆う、そのほんの直前だったんですね。そのときにガラパゴス探検に奇跡的に行くことができました。もう数日この旅程がずれていたら、南米もガラパゴス諸島もロックダウンになってしまって、私はガラパゴス諸島から出られず、いまだに封じ込められていたかもしれない、そんなぎりぎりの旅が実現したわけです。

「動的平衡」−変わらないために絶え間なく変わる

私の生命論のキーワードは「動的平衡」です。どういうことかというと、私たちの体というのは、あるいは人間を含め全ての生命の生命体というのは、固体のように思えますけれども、実はこうカチっとした固体ではなくて、むしろ流れの中にあるわけですね。