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猫と出会う2

このまちの冬はかなり冷えます。
雪がひどく降らないまでも、乾いた風が吹きすさび、夜には道が凍てつく寒さです。

ちょっと眠いUsu

びっくり目の三毛はいつもブロック塀の上を伝ってきて、エアコンの室外機の上に降り、そこから庭の地面へ飛び降ります。飛び降りたときに息が漏れてちょっと声が出ます。よいしょ、とでも言ってるみたい。そのあと、庭に面したサッシ戸の網戸を軽く叩きます。「来たよ」という合図。そうするとキャットフードを持って庭に面した戸を開けざるを得ません。
その家に暮らすようになってから、いつしか三毛のやってくる音を心待ちにしているようになっていました。ほとんど鳴くことはなく、息が漏れる小さな声と、「パシ」という軽く網戸を叩く音。その二つの連続音が聞こえると、入り組んだ作業をしている時でも無意識に立ち上がって、キャットフードを取り出している自分がいました。

その夜は夕方からかなり冷え込んできて、雪が降ってきました。早めに寝支度をしているといつものかすかな2連続の音が。三毛がやってきたのです。いつもはほとんど鳴くことがないのに、今日は小さな声で、か細く鳴いています。寒くて家に入れてほしいのでしょう。でも家に入れる決心がどうしてもつきませんでした。戸を開けてしまったら家に入れてしまうことになる・・・いつしかキャットフードをあげるようになってしまい、情がすっかり移ってしまった。自分の責任感のなさを痛感しました。飼う覚悟もなしにエサをあげたりしてはいけないんだ、と自分を責めながら布団をかぶり、じっと息をひそめて三毛が行ってしまうのを待ちました。しばらく鳴いていましたが、いつの間にかどこかに行ってしまったようでした。

家に入れられないなら、せめて少しは暖かくいられるようにと段ボール箱に枯れ草と毛布を入れて、軒下に置いてみました。すぐには使った気配はなかったのですが、何週間かして、中に入っているのを確認しました。よかった。ちょっと胸をなでおろしました。でも、いつかはこの家から引っ越すし、この猫をどうしたらいいか真剣に考えるようになっていました。人生も後半に入り、この後どのような生き方をしていくか、ちょっと迷っていた時期だったのです。猫と一緒に暮らしていくことができるのか、自信もあまりなかったのです。

家から見える山はすっかり雪に覆われて、本格的な冬がやってきました。

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