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猫と出会う3

冬のあいだ、10日ほど家を空けなければならないことがありました。
気がかりなのは三毛のことです。ほとんど毎日やってくるようになっていたので、私がいないあいだにもきっとやってくるでしょう。

Usuは狭いところに収まるのが好きみたい

近所のペットショップを回ってちょっとずつエサを出す給餌機を見つけ、いつも来た合図に叩く網戸のあたりの軒下に置いて、たっぷりキャットフードを入れ、水をボウルに入れたのも置いて家を出ました。

家を空けているあいだも、ずっと三毛のことが気がかりでした。

10日間の用事を済ませ、家に帰ってきて、給餌機を見ると空っぽになっていました。三毛が食べたのか、他の猫が食べたのか、ちょっとモヤモヤしながらも三毛がまたやってくるのを待っていました。

でも、以前は毎日かかさず来ていたのに、いくら待っても三毛はやってきませんでした。外にキャットフードを置いてみたりしたのですが、食べた気配もありません。

体の一部を失なってしまったような感じでした。

数週間ほど過ぎて、ある日ふと窓越しに庭の向こうの塀をぼんやり見ると、三毛がひょっこり顔を出しました!
目が合うと、塀をひらりと飛び越え一直線に私の方に走ってきます。思わず戸を開けて庭に出ると、頭突きのように頭を足にぐいぐい押し付けてきます。キャットフードを持ってきて皿に出すと勢いよく食べ出しました。
失ってしまったと思った体の一部が戻ってきたようです。止まってた血が全身に通い始めるような、何かがつながり、そこに回路が開いて、暖かな液体状のものが行ったり来たりするような、不思議な感覚でした。

それでも、まだ、家に入れて飼うという決心はできなかったのです。

春が近くなったある日、三毛が妊娠したらしいのに気がつきました。お腹が妙に膨らんでいるのです。妊娠しているのにも関わらず、雄猫にしつこく追いかけられていたりするのも見かけました。その頃には、三毛はうちの周りで大半の時間を過ごすようになっていました。冬の終わりの暖かな午後、夕暮れ近くなって換気のために開けていた戸を閉めようとした時に、三毛が不意に家に入ってきました。大きなお腹が大義そうです。自分からはほとんど家に入ろうとしなかった三毛ですが、雄猫に追われて助けを求めて入ってきたのかもしれません。その時、心の中で何かがカチリとはまったような感じがしました。空いていた部屋に、外で三毛が使っていたダンボールを入れ、トイレを準備しました。やっと飼う決心がついたのです。

夜、猫と家の中で過ごすのは不思議な感じでした。三毛はお気に入りのダンボールから出てきて、私の手のひらを何度も何度もなめました。

Usuはその中の1匹です

次の日の朝、三毛は4匹の子猫を産んでいました。

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