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ショートショート / 詩

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#note編集部

🎖️ ピリカグランプリ すまスパ賞|ショートショート|誰モガ・フィンガー・オン・ユア・トリガー

「私がピストルの引金を引くのは上司に頼まれたからなの。決して私自身が好き好んでではなく……」と彼女は呟き、静かに水を飲んだ。 「それが役割ですから」と僕は返したが、自分でも気の利かない発言だなと思いゲンナリした。それで慌てて付け加えた。「あなたのおかげで、静止した世界が動き出すんです。その先には喜びも悲しみもあるけれど、それはあなたのせいじゃない。まずは誇りを持たないと」  彼女と僕は仕事仲間だ。だから彼女の苦悩も分かるつもり。上からの指示をこなす日々に嫌気がさすこともある

🎖️ note編集部のマガジンにピックアップされました

少し前の話ですが、こちらのショートショート『ハロー・グッバイ・ハロー・グッバイ』がnote編集部のマガジンにピックアップされました

🎖️ note編集部 ピックアップ|ショートショート|ハロー・グッバイ・ハロー・グッバイ

 走ること自体も楽しいが、走りながら黙々と自分の世界に浸るのがより好きかもしれない。……ちょっと大人ぶってるかな。僕は中学生で陸上部に所属している。専門は長距離走だ。  朝の澄んだ空気の中で行う自主練は至福だ。世界を独り占めしたかのよう。走るのはいつもこの砂浜。2つ理由がある。  1つは、砂に足をとられて走りにくいため、むしろこれが良い負荷になって、脚力を鍛えるのにピッタリだから。アスリートもこのトレーニングは採用しているらしく、模倣するだけでなんだか僕も一流になった気分。

🎖️ #2000字のホラー note×文藝春秋 ピックアップ|ショートショート|団地奇譚

 団地の踊り場の床は死体のように冷たかった。死体に触れた経験はないけれど——  僕は3歳から15歳まで、九州の某県にある団地で暮らしていた。白い外壁に淡い赤の玄関ドア、灰色の共用階段。慈悲深く遊具の設置された広場もある。代表として百科事典に載せてもいいくらい、よくある団地だ。 「住めば都」と一口に言っても住宅の形態や場所によって享受される住み心地は大きく変わるのだろうが、先述の通り物心つく前から団地で暮らしていた僕には比較対象がないため、「こんなもんか」と思いながら過ごして