1.5秒の誤算(怖・短編小説)
《カン カン カン カン》
黒と黄色の竹竿が警告音と共に下がってくる。
(ハァ ハァ ハァ ハァ)
計画通りいけば大丈夫、、計画では上手くいく。
僕は何度も何度も心で繰り返し、恐怖心を抑えていた。
《カン カン カン カン》
ツートンカラーの竹竿はすっかり下に下がり切り、上下に揺れて往来を制止する。
《カン カン カン カン》
(ふぅ ふぅ ふぅ ふぅ ふ、、今だ、、)
僕は竹竿の下をくぐり抜け、線路に向かって歩きだす。
『あっ!危ない!』
誰かが僕の服を掴む。0.5秒
手を振り払う。0.5秒
引き離す。0.5秒
ヤバイ、、予定より1.5秒遅れてしまった。
間に合うか、、今更戻れない。
僕はそのまま線路に向かって突進した。
1.5秒の遅れ、本来なら横たわってレールに首を乗せている頃、、まだ線路脇にいた。
横目に電車は見えているが、何故か音は聴こえない。
短い時間で、、気温21度の音速と向かって来る電車の速度60kmの計算式が頭をよぎる。
1.5秒の遅れ、、やっぱり辿り着けなかった。
中途半端に線路に入っている僕に高速の1両の重量36tの電車が通り過ぎて行く。
直径80cmの鉄の車輪がレールから1mmも浮き上がること無く、レールから15cm位置の僕の大腿骨頭を押し潰して轢断していく。
僕の心に反し身体は全く死ぬ気が無くて、、轢断した傷口の筋肉を収縮させて出血を最小限にしようと努力する。
激痛にて肉体の危機を脳みそに連絡してくる。
『ぶぅぎゃーぎゃー』
轢断の衝撃で上半身は反り返り、右肩が車両底部に接触する。
『がぁっ〜』
右肩の関節が外れ複雑骨折しながら、腕が鞭の様にあらぬ方向へ動いていく。
その反動で胴体位置が変わり、次の車輪が周りの肉と仙骨を轢断して行く。
『ぐえっがはっ』
上半身は前方に回転しながら枕木でバウンドし、顔の肉を削りながらコンバーターに激突する。
血小板は止血しようと努力し、死ぬ時間を少しでも後送りしようと身体は激痛でアピールする。
《タタンタタンタタンタタンタタンタタン》
腸骨を砕き5番腰椎を押し潰し片側の腎臓が破裂する。
1両片側8車輪、5両編成の全40車輪は次々と僕の身体を轢断して進み、ごろごろ身体を回転させながら肉体を削っていく。
もう骨は轢断されるか砕かれるか、しかし痛みを伝える神経はそのままで、生命維持に重要な器官は幸運にも?致命傷を受けず次々車輪は轢断を続けていく。
『うぎゅっぐふっがぁはっごぶぎぶふっ』
右腕が轢断し、左手が轢断し、大腸は飛び散り歯が口内に突き刺さる。
『痛いよ〜!痛いよ〜!こんなに痛いんだ〜死ぬほど痛いんだ〜!』
意識が無くなるまでの僅か数秒なのかもしれないが、、
僕は最大の後悔をしながら、敷石と車両底部にドリブルされながら転がり続けていた。
だから、、飛び込みはしちゃダメだよ!