破局の予感④

彼にはまだこんな隠し球があったなんて・・・。
彼は借金の他に、養育費、ローンの支払いなど、まだまだありそうだった。結婚は生活だ。現実だ。夢物語じゃない。「そしてシンデレラは幸せになりました」のようなおとぎ話じゃない。
私は、私には・・・気持ちは変わらない。好きだという気持ちは変わらないけど。気持ちだけではどうにもならない事がある。
これは厳しすぎる、私が支えるつもりだったけど、私の今の病状だと、とても彼を支えるのは無理だった。
ただの付き合いだけなら、長続きするかもしれないが、そんな付き合うなんて、それも出来そうもない。
私の中で何かが崩れていく。
母は私らにこう言った。
「これで2人でやっていくなんて、無理だって分かったでしょ。お母さん2人が付き合うのも反対やから。そのつもりでおって。それでも付き合うなら、あんたこの家から出て行き。」
「え・・・?」
「それぐらいの覚悟ないのに、よう一緒になりたいって言えるわ。結婚するって甘くないのよ。」
私も、彼も何も言い返す言葉が見つからなかった。
大丈夫な事が何1つ見つからない。

彼を玄関から出て車まで見送った。
「今度話し合いましょ。私達のこと。」
「お前、俺と別れたいの?」
「分からない。ちょっと今は気持ちの整理をしたいから。答えはすぐに出せない。」
「俺は別れたくないから。」
ほんとなら嬉しい言葉なんだろうけど、今の私には何も響いて来なかった。
「じゃあ、気を付けて帰ってね。」
「また、連絡するから」
それには返事はしなかった。彼は車に乗り込むと、エンジンをかけて、走り出して行った。
私は彼の車を見送ると、家に戻った。
「お母さん、反対やからね。」
私の顔を見るなり、母は私にそう言った。
「不幸になるのは、あんたやで。そんなん分からんの?不幸になるって分かる所に、嫁にやる親なんかどこにおるんよ。悪いことは言わないから。あの人とは別れなさい。」
「今度話し合うつもりやから。」
「何を話し合うつもりなの?これからも続けていくつもりなの?お母さん、絶対に認めないから。それでも付き合うんなら、ここから出て行ってよ。」
私はもうそれに答える気力はなくなっていた。
母の言うことは正しい。冷静に考えても、これ以上付き合うのは無理だろう。お金が全てとは思えないけど、結婚はお金も大事だ。生活がかかってる。苦労するのは明らかだった。私の中で答えに決まっていた。
つづく

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