破局の予感③
「あなた、どうやってこの子を支えるつもりなん!?」
母は鬼の形相で、彼に答えを迫っていた。
「え・・・いや、それは、その・・・」
彼は答えに窮している。私は彼の様子にヤキモキしていた。「ちょっと、もっとしっかりしてよ。」とさえ思っていた。
「あなた離婚2回もして、借金もあるって、言うじゃない。仕事も長続きしなくて、転々としてるんでしょ。そんな人がどうやって、この子を食べさせて行くつもり?」
「お母さん、もうこれ以上はええやん。もう辞めてよ。」
「これは大事なことなんよ。なあなあにしてたらあかん。はっきりさせとかな、あんたの為にはならんねんから。」
彼はさっきから黙ったままだった。多分答えたくてもどう答えていいのか分からなくて、困ってるんだろう。どうして何も答えてくれないんだろう?そんなんのピシッと母に言ってやればいいのに。何を黙ったままでいるんだろう。
「借金は私も働いて一緒に返していくわ。それに彼が2回離婚していても、私には関係ないから。」
私は母にそう言い返した。
「あんた、そんな病気で働ける訳ないでしょ。また無理して働いたら、鬱は酷くなるって、お医者さんに言われてるんでしょ。」
「だから、それは私が頑張ればいいだけの話じゃない。」
「あんた、この人の借金返す為だけに、働くんか?生活費はどないして稼ぐの?そんなんで生活していけんの?」
「それは・・・何とかなるわよ。ねえ?」
私は彼に賛同を求めた。彼は返事をしない。グッと手を握りしめたまま、黙って下を向いたままだった。
「ねぇ、どうして何も言ってくれへんの?お母さんの言うことなんか、気にしなくていいんよ。私らさえしっかりしとけばいいんだから。」
「すいません!!」
彼は急に謝り出した。
「どないしたん?」
「俺、まだ言ってない事があったんや。」
と言い出した。
「え?何のこと?」
「おれ、養育費も2人の子供に払ってる。それにまだ家のローンとか、バイクのローンとかあって・・・。」
私はもう声が出なかった。何かに打ちのめされたような、そんな感じがしていた。つづく。