あの日プロ野球選手だった頃の親父を、僕はまだ知らない。
僕の親父は元プロ野球選手らしい。
ググるとWikipedeiaが出てくる。
過去の功績も出てくる。
でも僕は、そんな輝かしい頃の親父を知らない。
僕が生まれた歳に引退した親父の現役時代を、自分の目で見ることは叶わなかった。
小さい頃から親父が元プロ野球選手だということは噂には聞いていた。(普通に親に聞いていた)
ただ僕の目に映る親父はただのちょっと気さくなだけのお調子者のオヤジで、「ふ〜ん」くらいにしか思っていなかった。
友達の家に遊びに行った時に「お父さんはプロ野球選手だったんだね〜!」なんて言われても特に実感も湧かなかったけど、今になって「あー、それで友達の親御さんには若干チヤホヤされてたのかなぁ〜」とは少し思ったりする。
とにかく、何ら特別な事ではなかった。
ちなみによく色んな人に「野球はやらなかったの?」と訊かれるのだけれども、僕は小学生の時に友達同士でやるお遊び野球以外はやらなかった。というより、野球をやらせてくれなかったというのが正しい。
親父は僕に野球を教えてくれなかった。
「小さい頃からやると肩を壊す」という理由で、何故か僕は少年サッカーチームに入っていた。正直、僕はサッカーが好きでもなかったし毎週日曜日の練習会が苦痛でしかなった。なんで野球をやらせてくれないんだろうって。それゆえ、なおさら親父に対して野球の印象がない。
時は流れ、成人してからだろうか。
その頃にはインターネットは十分普及しており、Youtubeで誰もが簡単に色々な動画を見ることができるようになっていたい。
僕はふとYoutubeで親父の名前を打ち込んだ。
多くは残っていなかったが、そこにはマウンドで投げる親父の姿があった。
「嗚呼、親父は本当に野球選手だったんだ。」
そして僕は親父の名前で検索しまくった。
Yahooの検索で出てくる親父の過去の記録であったりエピソードを読み漁った。mixiでも親父のコミュニティがあったりしないかな?と検索した。ちなみに最近はたまにTwitterでエゴサをかけている。
最近でも、たまに親父の話をする機会が何度かあった。僕の目の前で話しているその人は興奮気味で「お前の親父はな〜凄かったんだぞ!」と何故か僕に自慢気に話してくる(笑)
親父は皆に愛されていた。僕の前ではただのオヤジの親父は、皆にとってのヒーローだった。
今の親父は、僕にとってもヒーローだ。
お金がなさすぎて死にそう(死にそう)