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単身高齢者が増加している地域社会で、今後課題になるのは何か?

吉見町議会9月定例会でわたしが一般質問として取り上げたのは、「単身高齢者増加への対応」と「再生可能エネルギー発電設備への課税について」の二件でした。
このうち「単身高齢者増加への対応」とはどういった内容か、どういった答弁があったのか、詳細に書きたいと思います。

町では65歳以上世帯員の単身高齢者、つまりひとり暮らしの高齢者世帯が増加しています。令和2年に行なわれた国勢調査に基づくと全世帯のおよそ10%ですが、令和32年には20%を超すと国は推計しています。

高齢者の身の回りの世話など生活支援は、町や社会福祉協議会が中心となって担っています。しかし、人々の暮らしや家族の形は多様化が進み、単身高齢者、なかでも身寄りのない単身高齢者が増えていることから、町へ寄せられる相談も多岐に及んでいます。施設への入居や入院に際し身元保証人が必要だったり、死亡後の手続きを誰に頼まなければならないなど、さまざまある課題を民間事業者が肩代わりするサービスが増えましたが、サービスが希望と違っていたり費用が高額であったりして、全国各地の消費生活センターへ苦情が届いたことから、国は実態調査を実施し今年6月、民間事業者向けにガイドラインを策定しました。

現状では町や社会福祉協議会、包括支援センター、区長、民生委員がそれぞれ、できる限りの支援をしてくださっているものと承知していますが、単身高齢者、そして身寄りのない単身高齢者が今後増加することで、対応は厳しさを増すと予想されます。①町にどういった相談や声が届いているのか。また②町での対応の難しさはどこにあるのか、③今後どう対応していくのかを質しました。

宮﨑町長の答弁。「少子化や核家族化、高齢化が相まって、単身高齢者が増加傾向にあります。また近年、入院や施設入所などの手続支援、日用品の買い物などの日常生活の支援、葬儀や死後の財産処分などの死後事務等について、家族や親族に代わって支援する事業者が増加しております。このような中、その対応については、単身高齢者が孤立せず、速やかに必要な支援につなげていくことが重要であると考えております」

続いて担当課である長寿福祉課長の答弁。「地域包括支援センターには、親族や近隣にお住いの方などから、判断能力が低下した単身高齢者の食料や日用品の調達をはじめ、通院や緊急入院時の対応、施設入所時の契約、死亡後の対応などについてのご相談が寄せられております」
「次に2番目のなぜ対応が難しいのかについてですが、単身高齢者等が求める支援やサービスが多岐にわたり、全てを公的に対応することが難しいこと。また、日常的な金銭管理など、行政では関与できない事案があることが要因として考えられます」
「次に3番目の町は今後どう対応するのかについてですが、単身高齢者になっても、安心して生活が継続できる地域づくりが大切であることから、地域における高齢者の社会参加を促進し、住民同士が見守り、ささえあうコミュニティの醸成に努め、元気なうちから自らの意思決定に基づき、希望する人生や、終活準備が進められるよう周知するとともに、関係機関等と連携し、支援していくことが重要であると考えております」

福井「課題を大きく三つに分けて掘り下げたい。ひとつは身の回りの生活支援、つぎに身元保証、最後に死後の事務手続きです。ひとつめの身の回りの生活支援について、高齢者の生活支援を目的としたサービスはどのようなものがあるか」
課長「高齢者のみの世帯で調理困難な方を対象に昼食を宅配する『在宅高齢者等配食サービス』、一人暮らしの高齢者等を対象とし、緊急時に消防本部に直接通報できる『緊急通報システムの設置』、緊急連絡先や、かかりつけ医療機関等の医療情報を記入するカードと保管するためのキットを配付する 『救急医療情報キット配付』、日々の買い物が困難な高齢者等を支援する『移動販売事業』、高齢者等の移動を支援する『デマンド型交通』などがある。また、災害時などに支援が必要な高齢者等の情報を集めた『災害時要援護者登録名簿』を作成し、見守り活動等に活用している。社会福祉協議会では、外出支援や買い物の代行、部屋の掃除などの支援を行う『ささえあいサービス』や、70歳以上の一人暮らし高齢者で、安否確認が必要な方に対して牛乳等を配達する『牛乳給食サービス』、日常の金銭管理などを支援する『あんしんサポートねっと』などのサービスがある」

福井「生活支援について寄せられた相談件数、その主だった内容は」
課長「買物や掃除、通院などに係る生活支援に関する相談件数は、令和5年度は64件の相談。具体的には、加齢に伴う機能の低下や、病気、けがをきっかけに虚弱な状態になり、長距離の歩行や、荷物の持ち運びが困難になった方から、買い物に行くのが困難になってきているとの相談があり、町社会福祉協議会の定期的な『ささえあいサービス』による買物代行支援や、外出の付添い支援をご利用する方が多くいる」

福井「生活支援に寄せられる相談はさまざまあるなかで、ささえあいサービスにつながるケースが多い。そのささえあいサービスはどういった仕組みで、何名の方が、どういった目的で利用されているか」
課長「ささえあいサービスは町社会福祉協議会が主体となり町と連携し、介護保険サービスなどの公的制度ではまかないきれない外出の支援、買い物代行、部屋の掃除など身の回りの軽易な作業を、町社会福祉協議会に登録した『ささえあいサポーター会員』が支援を行うもの。利用方法はまず、利用したい方が、町社会福祉協議会に利用会員として登録することによりサービスの利用が可能。次にサービスを利用する前に社会福祉協議会が発行する利用券を購入し、サービスの利用が終了した後に、30分あたり300円の利用券を『ささえあいサポーター会員』に渡すことになります。サービスを提供したサポーター会員は、利用券を社会福祉協議会に提出することにより、謝礼として、サービス提供時間1時間につき、500円の吉見町地域通貨券を受取る。なお令和5年度における『ささいあいサポーター会員(登録者)数』は163名、利用会員数は372名」
 
福井「ささえあいサービスは介護保険サービスと異なるもので、介護保険サービスなどの公的な制度では支えることが難しい方の、身の回りの生活支援に特化したものですが、あまり知られていません。介護サービスとは別に、こうしたサービスがあるということ、利用の呼びかけは住民に十分行き届いていますか」
課長「現在、生活支援を目的とした『ささえあいサービス』の周知は、町が発行している『吉見町高齢者福祉ガイドブック』や『暮らしの便利帳』に掲載し、周知を図っているが、住民への周知は十分とは言えないことから、今後はささえあいサービスの提供が必要と思われる方への直接周知や、様々な機会での周知に努めてまいりたい」

福井「是非周知に努めていただきたい。『介護の相談をして、ケアマネージャーさんが来るようになって、そのケアマネージャーさんかがこうしたサービスがあるよと教えてくれた』という声を聞きました。いろんなところでこうしたサービスの利用と、サポーターの方が増えてくださると良い。次に、身元保証について伺う。町民から届いている相談はどのようなものか」
課長「一人暮らしの高齢者が自宅で倒れ緊急入院したケースでは、その時点で身元保証人がいなかったため、病院から地域包括支援センターに親族確認の相談があり、親族確認を行った結果、支援できる親族がおらず、町長申立てにより成年後見人の選任手続きを行った」

福井「単身高齢者で身寄りがないと言う方は、入院に備えて、成年後見人を選任しておく、備えをしておくべきで、役場がそのお手伝いをするということ。身寄りのない単身高齢者が亡くなった場合の事務手続き、死後事務について尋ねる。身寄りのない単身高齢者が亡くなった場合、死亡後に死亡届を誰が役場へ提出するのかということが議論になるが、町ではどのように対応を」
課長「身寄りのない高齢者が亡くなった場合、同居者や家主、また、施設入所者の場合は施設の管理者が届出義務者となり死亡届の届出人となる。成年後見人などの届出資格者が届出人となることもある。身寄りがなく、届出義務者、届出資格者がいない場合や、行旅死亡人など身元が不明で届出義務者、届出資格者がいない場合には、職権で、町長が届出人になることとなっているが、ここ数年では、町長届出がない。死後の事務手続きは、元気なうちから死後の手続準備を進めたり、関係機関に相談することで、適切な支援を受けられことを周知することが大切。支援が必要と思われる方に早めに関与し、町が相談に乗ることができる体制を整えることが重要だ」

福井「支援が必要と思われる方に、町が早めに関与することも重要ですし、支援を求める方がご自身で、あるいは周囲の方が、早めに相談してくださることを切に願う。単身高齢者、そして身寄りのない単身高齢者の方が、周囲に頼めないからといって民間事業者に相談しようとする前に、まずは町に相談していただきたいと強く訴える。ただ、町でも対応が困難なケースがあると聞いた。どのようなケースか」
課長「町で対応できない、対応困難なケースは、医療行為の決定(医療同意)や金銭管理、契約行為。高齢者が生活する上でお困りのことは、まず地域包括支援センターにご相談を。地域包括支援センターでは対応できない事例は、関係機関につないでいる」

福井「吉見町の西地区で今年8月、単身高齢者が自宅で熱中症の症状による体調不良から、電話で相談を受けた近隣の住民が通報して搬送されたという事例があった。近隣の住民や行政区の区長、民生委員のこうした関与が、今後もきわめて重要。地域の担い手が重要という意味では、今後何が課題になると認識しているか」
課長「地域の担い手の方が年々、高齢となっていくこと。また、地域住民同士のつながり『地域コミュニティ』の希薄化、地域のために積極的に活動していただける人材の確保などが課題として考えられる」

福井「単身高齢者が増えるなかでは、地域の担い手に対し、専門的な知識や経験を求める声が一部にある。例をあげれば、認知症の方にどう接したらよいかわからない、介護や看護などの有資格者や福祉分野の経験者が地域の担い手として適任ではないかという声。しかし、地域でお住まいの方は有資格者や経験者ばかりではない。さらに、現役世代が急激に減少するため、高齢者を支える、見守る、ささえあう仕組みは、今後どういう形になっていくと考えるか」
課長「高齢者福祉を推進する上では、行政による支援、公助には限界があり、町民の皆様に積極的に関わっていただき、町全体で取り組んでいかなければならないと考えている」

福井「長寿福祉課として、ぜひこの機会に町民に知っていただきたいのはどんなことか」
課長「病気や突然の事故などにより、充分な意思決定が困難になった時の備えとして、ご自身の希望する医療やケアについての意思をまとめ、家族・友人・かかりつけ医等の関係者に伝えておくことの大切さを知っていただくこと。また、判断能力が低下した時に、本人の権利や、財産を守るための援助ができる成年後見制度について、知っていただくことが大切と考える」

福井「高齢になり、身心の機能が低下しても、誰もが生前から死後にかけて生活の質と尊厳を保つことは、憲法13条に幸福追求権、憲法25条に生存権が示される通り、すべての国民にとって最大限尊重されねばならない。だれもが安心できる町の暮らしは、町をあげて高齢者を見守る取り組みが欠かせない。町はどのように取り組んでいくのか」
課長「高齢者が求める支援やサービスが多岐にわたることから、町としては、支援等が必要と思われる方の把握に努めるとともに、必要に応じ、早期に関与することにより、適切な支援、サービスにつなげられるよう、取り組んでまいりたいと考えております」

この「単身高齢者増加への対応」についての質疑は、今回上記で終えました。わたしが今回の質疑を通して担当課の認識を問い質したいと思ったことは、上記の答弁に一通り網羅されており、理解と納得はできます。しかし、この備えで十分と考えているわけではありません。今後なにが課題になるのかという問いに対し、「行政による支援、公助には限界があり、町民の皆様に積極的に関わっていただき、町全体で取り組んでいかなければならないと考えている」と町が認識している通り、地域で支えていくことが重要になっていくことは明白です。そのためには、区長や民生委員、児童委員など地域の担い手の方の高齢化、地域住民同士のつながりの希薄化、地域のために積極的に活動していただける人材の確保などが、今後大きな課題になっていくでしょう。誰もが必ず老いを迎えます。どういう地域で、どういう社会で、どういう姿で老いを迎えたいかを、皆さんで考えていきましょう。

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